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ウェルネス

「運動する時間がない」ビジネスパーソンへ
——働くためのコンディショニングとは?

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

「運動しなきゃいけないのはわかってる。でも、朝は6時から現場で夜は23時まで書類仕事。本当に時間がないんですよ」——北海道の建設会社を経営している方と話すと、判で押したようにこの言葉が出てきます。週末は疲れ果ててソファで過ごす。健康診断で血圧と中性脂肪を指摘されても、どこから手をつければいいかわからない。こんな経験はないでしょうか。

しかし、ここに大きな誤解があります。「忙しくて運動できない」という問いの立て方そのものが、問題の本質を見えなくしています。コンディショニングは「ジムに行くこと」とは、まったく別の話だからです。そして、コンディショニングができていない経営者が抱えるリスクは、単なる健康問題ではなく、毎日の意思決定の質に直結する経営リスクです。

この記事では、作業療法士の視点から「コンディショニング」と「仕事のパフォーマンス」の関係を医学的に整理します。まとまった時間ゼロで今日から始められる6つの実践法、そして「続かない」を環境設計で解決する方法まで、体系的に解説します。読み終わったときに「今日からできること」が3つは見つかるはずです。

この記事でわかること

「忙しくて運動できない」は誤解——コンディショニングはジムとは無関係

答えを先に言います。コンディショニングは「特別な時間」を必要としません。それは日常の行動の中に組み込まれるものであり、ジム通いや専用の時間とは別の話です。

まず、前提として整理しておくべき重要な区別があります。「運動」と「コンディショニング」は似ているようで、目的がまったく異なります。多くの人が「コンディショニングをしたい」と思いながら「運動する時間がない」と詰まるのは、この二つを混同しているからです。

「ジムに行く時間がない」は運動の話です。コンディショニングは、もっと日常に近い場所にあります。建設業の経営者が朝礼前に行う3分間のストレッチ、会議と会議の間に立ち上がる習慣、昼食後の5分間の歩行——これらはすべてコンディショニングです。仕事のパフォーマンスを支えるために身体と脳の状態を整えること。これがコンディショニングの本質です。

コンディショニングとは、「仕事のために体と脳を整える」こと。
特別な時間や場所は、必ずしも必要ありません。

ではなぜ、経営者・管理職こそコンディショニングが必要なのか。次のセクションでデータと医学的なメカニズムを示します。

「デスクワークは体に優しい」は幻想——管理職の身体がひそかに壊れる理由

経営者として想像してみてください。現場の職人と違い、自分は体をあまり使っていない——そう感じているとしたら、それは半分誤解です。

実際には、長時間の座位作業は身体に対して非常に高い慢性的負荷を与えています。さらに問題なのは、その負荷が「見えない」形で蓄積するという点です。現場作業者は疲れたらすぐ体が反応します。デスクワーカーは疲弊しながらも「動けている」ため、気づくのが遅くなります。

長時間デスクに向かうことで起きる主な身体的問題を整理します。まず筋肉の血流低下があります。同じ姿勢を1時間維持するだけで、筋肉への血流は著しく低下します。これが肩・首・腰の慢性的な凝りや痛みの直接的な原因です。次に、脊椎への圧力増大があります。立った状態と比較して、座った状態では椎間板にかかる圧力が約40%増加するとされています。長年の座り仕事が腰椎の変性を促進させる要因の一つです。そして呼吸の浅さとそれによる脳への酸素供給の減少も見逃せません。

同じ姿勢を1時間続けると、筋肉への血流が最大50%低下するという研究があります。これが「午後になると集中力が落ちる」「夕方には首・肩・腰がつらい」の正体です。疲れているのは「頭を使いすぎたから」だけではなく、身体の循環が滞っているからでもあります。特に管理職・経営者は意思決定の質が直接業績に影響するため、脳へのパフォーマンス維持は「身体の問題」ではなく「経営の問題」です。

DATA — ビジネスパーソンの身体的不調 有訴率(令和4年)
60%
首・肩のこり
(男女平均)
57%
腰痛
(男女平均)
36%
疲労感・だるさ
(男女平均)
出典:厚生労働省「国民生活基礎調査(令和4年)」 ※有訴者率(人口千人あたりの有訴者数)から算出

厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、有職者の約60%が首・肩のこり、約57%が腰痛を自覚しています。これらは「仕方ない疲れ」ではなく、コンディショニングによって大部分を改善できる状態です。逆に放置すれば、慢性化・重症化し、プレゼンティーズム(出勤しているが生産性が低下している状態)の主要因になります。つまり、コンディショニングは「静止による消耗」を防ぎ、仕事の質と量を維持するための戦略です。

では、身体の不調は具体的にどのようなメカニズムで「経営判断の質」を下げるのでしょうか。次のセクションで医学的な根拠を整理します。

腰痛が「経営判断を鈍らせる」——コルチゾールと前頭前野の関係

「多少体が辛くても判断力は変わらない」と思う経営者も多いですが、医学的にはこの認識は正確ではありません。

慢性的な疼痛(腰痛・肩こりなど)が続く状態では、ストレスホルモンであるコルチゾールが継続的に分泌されます。コルチゾールは短期的には注意集中を高める効果がありますが、長期的・慢性的な高値状態では、前頭前野の機能(計画立案・判断力・感情制御)を低下させることが神経科学の研究によって示されています。

つまり、腰が痛い・肩がこる・慢性疲労がある状態での「意思決定」は、脳の最良のパフォーマンスを発揮できていない可能性があります。

また、身体活動が不足すると、脳への血流が減少し、神経伝達物質(セロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリン)のバランスが崩れます。これが「なんとなく気力が湧かない」「判断に時間がかかる」「創造的なアイデアが出ない」という状態として現れます。逆に、短時間の身体活動(5〜10分のウォーキングや姿勢リセット)は、脳の血流を増加させ、認知パフォーマンスを即座に向上させることが複数の研究で確認されています。

ポイントはこの1点です。コンディショニングは「健康のための余暇」ではなく、「経営判断の質を維持するための業務」です。身体を整えることは、脳を整えることに直結しています。

では、忙しい経営者が今日から実践できる具体的な方法は何か。次のセクションで6つの手法を示します。

今日から6分間でできる——建設業経営者のためのマイクロコンディショニング実践法

OTの視点から提案するのは、まとまった時間が不要な「マイクロコンディショニング」という考え方です。特別な場所もジムも不要。日常の行動の中に小さな介入を積み重ねることで、身体と脳の状態を維持・改善します。

上記6つのうち、今日から始められるものが必ず1つ以上あるはずです。どれか1つを選んで、今日中に環境を整えてみてください。

ただ、「わかってはいるが続かない」という壁が必ずやってきます。この壁の乗り越え方を次のセクションで解説します。

「続かない」の正体は意志力ではなく設計の失敗——アフォーダンス設計で行動を変える

「わかっているのに続かない」——これは意志力の問題である以前に、「設計の問題」です。

作業療法の世界では、行動変容を促すときに「行動のしやすさ(アフォーダンス)」を設計することを重視します。続かない習慣の多くは、「始めるまでのハードルが高すぎる」という設計の失敗によるものです。

人の行動は、「意志」よりも「環境」に大きく影響されます。朝起きてすぐにスマホを確認する習慣があるのは、スマホがベッドサイドにあるからです。昼食後にコーヒーを飲む習慣があるのは、コーヒーメーカーが手の届く場所にあるからです。これと同じ設計の原理を、コンディショニングに適用します。

人は「やる気があれば行動する」のではなく、
「行動しやすい環境があれば、やる気は後からついてくる」。

具体的な環境設計の例を挙げます。ストレッチをしたいなら、ヨガマットを部屋の見える場所に置く(クローゼットの奥にしまわない)。90分ルールを実践したいなら、PCにタイマーアプリを常時表示させる。水分補給を忘れるなら、デスクにウォーターボトルをセットしてカレンダーに補給時間を入れる。夜のストレッチをしたいなら、寝具の横にストレッチポールを置く。これらはすべて「行動するまでの摩擦を減らす」環境設計です。

逆に、「やめたい行動」への摩擦を増やすことも有効です。スマホを寝室に持ち込まないためにリビングに充電ステーションを作る、エレベーターを使わないために職場のエレベーターホールを避けるルートを設定する——これらも立派な環境設計です。OTが行動変容支援で最初に行うのは「意識の変革」ではなく「環境の変革」です。環境が変われば、行動は自然についてきます。

つまり、コンディショニングを継続するための鍵は「やる気を出すこと」ではなく「やらざるを得ない環境を作ること」の1点です。

ジムではなく「仕事のための身体設計」——NeuroLive studioのアプローチ

DIALOGが運営するNeuroLive studioは、「体を動かすための場所」ではなく、「働くための身体と脳を整える場所」として設計されています。一般的なジムやフィットネスクラブと決定的に異なる点は、作業療法士が関わることで、「あなたの仕事・生活リズム・身体の状態」を統合的に評価した上で、個別のコンディショニングプランを設計する点です。

一般的なジムでは「週3回のトレーニングメニュー」を提供します。しかしNeuroLive studioが最初に確認するのは、あなたがどんな仕事をしていて(デスクワーク中心か、現場作業が多いか)、どの時間帯にエネルギーが落ちるか、どこに慢性的な不調があるか、そして何を目的としているか(睡眠の質改善なのか、腰痛の軽減なのか、判断力の維持なのか)です。この3点が明確になれば、すべきことが劇的に絞られます。

建設業の経営者・管理職が抱えるコンディショニングの課題は、一般的なビジネスパーソンとは異なる側面を持ちます。現場確認で体を動かす場面がある一方、デスクと移動の繰り返しで腰・膝への負担が大きい。精神的なストレスが高く、睡眠の質が低下しやすい。季節性(北海道の冬場)の活動量低下が顕著。こうした建設業固有のコンディショニング課題を理解した上で、継続できるプランを一緒に作ることが、NeuroLive studioの強みです。

よくある質問

Q. 運動が全くできていない状態から始めても大丈夫ですか?

A. まったく問題ありません。NeuroLive studioは「運動習慣がない」「体が硬い」「長年運動をしていない」という方を前提にプランを設計します。最初のステップは「今の身体の状態を把握すること」であり、いきなり激しい運動をするわけではありません。現状から無理なく始められるプランを作ることがOTの専門性です。

Q. 体験セッションではどんなことをするのですか?

A. 体験セッションでは、まず現在の身体の状態(可動域・筋力・姿勢・慢性的な不調の場所)を評価します。次に、仕事内容・生活リズム・コンディショニングの目標をヒアリングします。この2つを組み合わせて、「あなたに必要なコンディショニングの方向性」をその場でフィードバックします。体験後に継続を強制することはありません。

Q. 建設業の現場作業者にも対応していますか?

A. 対応しています。デスクワーク中心の経営者・管理職だけでなく、現場での重作業が多い職人・施工管理者のコンディショニングにも対応します。腰痛予防・肩の疲労軽減・高齢職人の体力維持など、現場作業特有の身体的課題に応じたプランを設計します。

Q. 通う頻度はどのくらい必要ですか?

A. 月1〜2回のセッションから始めることをお勧めしています。セッション外での「日常の中でのマイクロコンディショニング」の実践が最も重要であり、スタジオへの通いは「設計の確認と軌道修正」の場として活用します。忙しい経営者でも続けやすい頻度で設計します。

まとめ——コンディショニングは「設計の問題」であり「経営の問題」

コンディショニングと仕事の問題は「運動する時間があるかどうか」ではなく、「日常の中にどう身体と脳の状態管理を組み込むか」の設計の問題です。デスクワーク中心の管理職・経営者こそ、身体的ケアを怠ることによる経営判断への悪影響は大きい。マイクロコンディショニングと環境設計の組み合わせで、特別な時間を作らなくても身体パフォーマンスは維持できます。

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