← ブログ一覧に戻る
採用・定着

若手職人が「辞めない」建設会社になる5つの条件
——北海道の中小建設業に必要な定着戦略

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

「やっと採用した23歳の若手が、半年で辞めた」——北海道の中小建設業の経営者と話すと、この言葉が繰り返し出てきます。求人媒体に何十万円とかけ、説明会を開き、丁寧に育てようとした。それでも、ある朝突然「辞めます」と告げられる。あなたの会社でも、こんな経験をしたことはないでしょうか。

実は、この問題の本質は「採用力の不足」ではありません。入ってきた若者が「ここで長く働きたい」と思えない職場になっているという、職場設計の問題です。採用の網を広げ続けても、ザルの穴を塞がなければ、水は出ていき続けます。

北海道の建設業で29歳以下が就業者のわずか8%という現実(北海道庁「建設業の概況令和6年度版」)は、若者が建設業を嫌っているからではありません。入った若者の多くが、数年以内に静かに去っていくという構造が、この数字を作り出しているのです。この記事では、「採用」の前に整えるべき「定着」の職場条件を5つ、具体的に解説します。

この記事でわかること

「採用しても辞める」——3年で半数が去る、北海道建設業の定着危機

結論から言います。若手が辞める最大の原因は「採用ミス」ではなく「職場が定着を許していない」ことです。

北海道の建設業における29歳以下の就業者比率はわずか8%(2024年)。全産業平均の約18%と比べると、10ポイントの差があります。この数字を「若者が建設業に来ない」と解釈する経営者は多いですが、それは半分しか正しくありません。厚生労働省のデータによれば、建設業の入職後3年以内の離職率は約45%に達します。つまり、入ってきた若者の約半数が3年以内に辞めているという事実があるのです。

採用コストを1名あたり50〜100万円と仮定すれば、3年以内に半分が辞めるならば採用投資のROIは極めて低くなります。あなたの会社の若手採用費用を振り返ってみてください。そのコストの半分は、すでに水の泡になっているかもしれません。

DATA — 北海道建設業の年齢構成と離職の実態
8%
北海道建設業の
29歳以下就業者比率(令和6年度)
約45%
建設業の入職後
3年以内離職率(厚生労働省)
+22.4%
健康経営認定後の
採用応募数増加率(経済産業省)
全産業の
29歳以下就業者比率
約18%
約18%
北海道建設業の
29歳以下就業者比率
8%
8%
建設業の
3年以内離職率
約45%
約45%
出典:北海道庁「建設業の概況令和6年度版」、厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」、経済産業省「健康経営度調査フィードバックシート」

採用コストの半分が3年以内に消えているとしたら、次に考えるべきことは明確です。今いる若手が辞めない職場をつくること——それが最も費用対効果の高い人材戦略です。では、なぜ若手は辞めるのか。その構造を把握しない限り、定着施策は的外れになります。

「3年で半数が辞める」——20代が建設を去る3つの本音と、止める唯一の方法

答えから言います。若手が辞める理由は「体力不足」でも「給料の低さ」でもありません。3つの深層心理から来ています。

表面的な退職理由だけを見て「うちはそんなに給料が低くない」「休日だって増やした」と思っている経営者ほど、本当の理由を見逃している可能性があります。各種調査・相談の中で見えてくる本音の退職理由を整理すると、3つの層に分類できます。

第一層:身体的な過酷さへの不安

腰痛持ちのベテラン職人を毎日見ながら働く若手は、「自分もそうなる」という現実的な恐怖を感じています。入社して数ヶ月で「このまま続けていたら体が壊れる」という不安が芽生えた若手職人が、誰にも言わずに静かに辞めていきます。

「今は大丈夫だけど、10年・20年続けると先輩たちのようになるのでは」——この将来への不安が、実は最も強力な離職トリガーです。「体を守ってくれる会社かどうか」が、若手の継続就労意思に決定的な影響を与えています。

第二層:キャリアパスの不明確さ

「ここで頑張ると、5年後・10年後にどんな職人になれるのか」というビジョンが見えない職場では、若手は自分の将来を会社に託すことができません。先輩が身体的に疲弊している姿を見れば、それはロールモデルとして機能しません。技能習得のロードマップ・資格取得支援・昇給の仕組みが明示されていない職場では、若手は「この会社に自分の未来はない」と判断します。

第三層:職場の人間関係・文化への不適応

「体育会系の上下関係」「怒鳴られても我慢するのが当然」——こうした文化は、現代の20代には受け入れがたいものです。さらに問題なのは、「腰が痛い」「疲れた」「わからない」を言えない雰囲気が、問題の早期発見を妨げることです。追い詰められた若手は突然辞める。上下関係の厳しさが技術習得に本当に必要なのか、経営者が正直に問い直すことが求められます。

「体が心配」で辞める若手を止めるために経営者ができること
若手が「体を壊すかもしれない」という不安を持ち始めた時点で、すでに退職を意識している可能性があります。この段階で経営者・管理職が取れる最も効果的な行動は「会社が体を守る具体的な取り組みをしている」と伝えることです。腰痛予防プログラムの実施・OTによる動作指導・健康診断の確実な実施——こうした取り組みを「あなたのためにやっている」と直接伝えることが、若手の「ここで続けたい」という気持ちを支えます。取り組みがあっても伝えなければ意味がありません。

では、これら3つの離職要因に経営者はどう対処すればよいのか。次のセクションから、辞めない職場をつくる5つの具体的条件を順番に解説します。

辞めない職場の条件①——「体を守る会社」を目に見える形で示す

結論から言います。若手職人が定着するかどうかは、入社後1ヶ月で決まることが多い。その最大の決め手が「この会社は体のことを本気で考えているか」という第一印象です。

具体的には、腰痛予防プログラムの定期実施(朝礼でのストレッチ・OTによる動作指導)、安全装備の充実(腰部サポーター・安全靴・膝当て等の会社支給)、保護具着用の徹底と管理職による率先垂範、体調不良の申告を歓迎する雰囲気づくりが効果的です。

特に、入社直後のオンボーディングにOTによる動作指導プログラムを組み込むことをお勧めします。「この会社は体のことを本気で考えている」という強いメッセージを、新入職人に最初から伝える絶好の機会になります。想像してみてください。入社2日目に「あなたの腰を守る動作を一緒に学びましょう」と言われた若手が、「ここは辞めよう」と思うでしょうか。

つまり、身体的安全の「見える化」は、採用した若手を最初の3ヶ月で失わないための最も確実な投資です。

辞めない職場の条件②——「5年後の自分」が見える職場をつくる

若手が「ここで頑張る理由」を持てるかどうかは、成長のロードマップが見えるかどうかで決まります。技能習得の段階・目安となる年数・取得を目指す資格・それに伴う給与変化——これらを1枚の「キャリアマップ」として可視化することが第一歩です。

資格取得支援制度(受験費用の会社負担・合格一時金の支給)は、単なる経済的インセンティブではありません。「会社があなたの成長に投資している」というシグナルとして機能します。建設業関連資格(施工管理技士・各種技能士・危険物取扱者等)の取得を支援する仕組みがある会社と、ない会社では、若手の定着意欲に明確な差が出ます。

さらに重要なのが、技術習得のロードマップを給与体系と連動させることです。「何年働けば給料が上がるのか」ではなく「何ができるようになれば給料が上がるのか」という成果連動型の体系——これが若手の「頑張れば報われる」という実感をつくり出します。

ポイントは、キャリアマップを「作る」だけでなく、入社面談・1on1で繰り返し「共に確認する」ことです。キャリアの見える化は、見せるだけでなく語り続けることで機能します。

辞めない職場の条件③——健康経営を「見せ方」まで設計する

健康経営優良法人認定の取得は、採用面でのシグナルとして機能するだけでなく、既存の若手職人の定着にも貢献します。経済産業省の調査では、認定取得後に採用応募数が増加したと回答した企業が22.4%にのぼっています。認定マークを求人票・会社ウェブサイト・ハローワーク掲載情報に表示することで、健康意識の高い求職者へのアピールになるからです。

しかし、認定取得の最大の価値は「外への見せ方」だけではありません。認定取得のプロセス自体(腰痛予防体操の実施・健診受診率の向上・ストレスチェックの導入)が社内文化を変える力を持っています。「ここは自分の健康を守ってくれる会社だ」という実感が生まれ、既存の若手職人の「ここで働き続けたい」という意思を強化します。

つまり、健康経営認定は採用と定着の両方に効果をもたらす、中小建設業の人材戦略における最もコストパフォーマンスの高い取り組みのひとつです。

辞めない職場の条件④——「言える」文化をゼロから設計する

「体が痛い」「わからない」「困っている」——これらを言える雰囲気があるかどうかが、若手定着の隠れた最重要条件です。これがない職場では、若手は追い詰められて突然辞めます。誰にも知らせずに、ある朝メッセージ一通で終わる。あなたの会社で「なぜ辞めるの?」と聞いても「一身上の都合」しか返ってこないのは、言えない文化が育っているサインかもしれません。

「言える」文化をつくる最初の一手は、1on1ミーティングの月1回の定期実施です。業務報告の場ではなく、「体調はどうか」「最近しんどいことはあるか」「将来について不安なことはあるか」を中心に設計します。最初は話せない若手も、3〜6ヶ月継続することで徐々に本音を話すようになります。

そして何より強力なのが、経営者・管理職自身が「体調不良を隠さない」「休みを取ることを推奨する」という行動を率先して見せることです。リーダーの行動が職場文化を作る。これは経営者にとって最もコストゼロで実行できる定着対策です。

辞めない職場の条件⑤——「休める職場」は採用より強い武器になる

2024年問題への対応として週休2日制への移行が求められていますが、これは若手定着の観点からも決定的な条件です。週休2日制・年間休日120日程度の確保は、求職者が会社を選ぶ際の重要な比較軸になっています。北海道の建設業では、冬季の工事量が減少する分、繁忙期と閑散期の落差が大きいという特徴があります。「繁忙期は集中・閑散期はしっかり休む」という季節連動型の働き方設計が、職人の疲労蓄積を防ぎ、長期就労を支えます。

育児・介護との両立支援も、30代の職人の定着には欠かせません。「急な子どもの発熱で早退できる」「育児休業が取りやすい」という環境は、若手だけでなく中堅職人の定着にも寄与します。「家族の状況を考慮してくれる会社」という評判は、口コミを通じて採用にも好影響を与えます。

ポイントはこうです。「休める職場」をつくることは、今いる職人を守るだけでなく、求人票に書く前から次の求職者を引きつける最強の採用ツールになります。

採用に悩む前に、
今いる若手が「なぜここにいるのか」を
問いかけてみてください。
答えが見えたとき、定着戦略が始まります。

よくある質問

Q. 北海道の建設業で週休2日制は実現できますか?工期が心配です。

A. 実現している企業は着実に増えています。国土交通省・北海道庁が推進する「週休2日工事」の普及により、発注者側も週休2日を前提とした工期設定を進めています。実現のためには工程管理の見直し・生産性向上・ICT活用が不可欠ですが、先行して導入した企業の多くが「思ったより影響が小さかった」と報告しています。週休2日制の実現が採用競争力に与えるプラス効果は、対応コストを上回ることが多く、中長期的な経営判断として取り組む価値があります。

Q. 健康経営優良法人認定は採用に本当に効きますか?中小企業でも効果がありますか?

A. 効果はあります。特に、「どこで働くか」を真剣に調べる求職者層(インターネットで企業情報を詳しく確認する層)に対しては、認定マークの存在が明確な差別化ポイントになります。中小企業でも同様で、むしろ「この規模でこんな取り組みをしているのか」という驚きが好意的な印象につながるケースがあります。経済産業省の調査では22.4%の企業が応募数増加を報告しており、採用難の建設業においてこの数字は無視できません。

Q. 定着率を測る指標はありますか?どう改善を確認すればよいですか?

A. 定着率の基本指標は「入職後1年・3年・5年の在籍率」です。計算式は「(在籍者数÷入職者数)×100」。これを毎年記録することで、定着率の変化をトラッキングできます。また、定着率の先行指標として「1on1ミーティングでの満足度スコア」「体調不良の早期申告件数の変化」「欠勤率・遅刻率」を継続観察することで、問題が悪化する前に介入できます。定着施策の効果測定として、施策実施前後で半年ごとに数値を比較することをお勧めします。

Q. ベテラン職人との世代間ギャップはどう埋めますか?若手への当たりが強いベテランへの対処が難しいです。

A. ベテランと若手の世代間ギャップは、建設業の定着問題の根深い要因の一つです。対処の基本は「ベテランを悪者にしない」ことです。ベテランが厳しく接するのは、多くの場合「その方法しか知らない」「昔はそれが正しかった」という背景があります。経営者が両者の橋渡しとして機能し、「若手にとって学びやすい伝え方」をベテランに伝える研修・個別面談が有効です。また、ベテランの技術・経験を尊重する場面(技能の実演・若手への指導役の役職化)を設けることで、ベテランが若手の成長に投資的に関わる動機を生み出せます。

まとめ——定着戦略は「採用」の前に整備すべき経営基盤

建設業 若手 定着の問題は、採用の努力だけでは解決しません。定着する職場をつくるための5つの条件——身体的安全の見える化・キャリアの見える化・健康経営の見せ方・コミュニケーション文化・柔軟な働き方——を整備することが、採用コストを削減しながら人材を確保する最も効率的な経営戦略です。

DIALOGでは、定着率向上を目指す北海道の中小建設企業に対して、OTの視点から職場環境・健康施策・コミュニケーション設計を一体的に支援します。まず無料相談で現状の課題を整理しましょう。

若手が辞めない職場づくり、一緒に設計しませんか?

「採用しても定着しない」「若手の離職原因がわからない」——そんな悩みを抱える経営者の方、まず30分の無料相談で自社の状況を整理するところから始めましょう。

無料相談を申し込む →