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定着×傾聴

傾聴|
「話は聞いている」と思っている上司ほど、部下から話しかけられない

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

部下は、本当にあなたに相談できているでしょうか。「うちは風通しがいい」「話はちゃんと聞いている」と思っている経営者ほど、実際には部下から話しかけられていないことがあります。上司の自己評価と、部下が感じている話しやすさの間には、大きなギャップが生じやすいためです。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で患者さんの話を評価や助言を挟まずに受け止める傾聴の技術を実践してきた知見をもとに、中小企業の健康経営・人材定着支援を提供しています。blog-107(メンター制度)では相談相手を置く仕組みを扱いました。本稿はその相手が実際に「聞けているか」という技術そのものに焦点を当てます。

この記事の要点

背景の前提: 傾聴とは、相手の話を評価や助言を挟まずにそのまま受け止めて聞く技術です(出典は記事末尾)。

職場の健康リスクを判定する4要素

4要素
仕事のストレス判定図の分析軸(うち1つが上司の支援)
50人未満
2025年5月改正でストレスチェックが義務化された事業場規模
0
傾聴の基本行動を実践するための追加費用

出典:厚生労働省「こころの耳」(仕事のストレス判定図)、厚生労働省「ストレスチェック制度」

「聞いているつもり」がずれる理由

厚生労働省が推奨する「仕事のストレス判定図」は、仕事の量的負担・仕事のコントロール・同僚の支援・上司の支援という4つの要素で職場の健康リスクを分析する手法です。この中の「上司の支援」は、日々のちょっとした会話の積み重ねで評価が決まります。

ところが、上司は自分の傾聴姿勢を「相談されればちゃんと聞いている」という主観で評価しがちです。一方、部下は「話の途中で結論を急がれた」「意見を言う前に否定された」といった具体的な体験で評価します。この評価基準の違いが、「聞いているつもり」と「聞いてもらえていない」というギャップを生みます。

傾聴を仕組みにする3つの実務

特別な研修がなくても、日々の会話の中で意識できる3つの行動があります。

実務内容目的
最後まで遮らない結論を急がず、相手が話し終えるまで待つ「聞いてもらえた」という実感を作る
要約して返す「つまり〇〇ということですね」と内容を確認する誤解のまま話が進むのを防ぐ
感情を先に受け止める意見や助言の前に、まず気持ちを言葉で受け止める否定された印象を与えない

ここまでの整理

3つの実務に共通するのは、「答える前に、まず受け止める」という順番です。助言や指示が悪いのではなく、その前に受け止める工程を挟むかどうかが、話しやすさを大きく左右します。

聞く技術は、話す技術より習得しにくい

これは私の見立てですが、急性期病院でも、話す技術より聞く技術の方が習得に時間がかかるという実感があります。良かれと思ってすぐに助言してしまう癖は、経験を積んだ人ほど強くなりがちです。blog-107(メンター制度)で扱った相談相手の仕組みも、この聞く技術が伴わなければ機能しません。

もし1つだけ持ち帰るなら

次に部下から相談を受けたとき、助言する前に「つまり〇〇ということですね」と一度要約してみてください。特別な準備は要りません。この一言が、聞いているつもりを本当に聞くことに変える最初の一歩になります。

よくある質問

Q. 傾聴とは何ですか?

A. 相手の話を、評価や助言を挟まずにそのまま受け止めて聞く技術です。話を最後まで遮らない、内容を要約して返す、感情を否定せず受け止めるといった具体的な行動で構成されます。

Q. なぜ「話を聞いているつもり」がずれるのですか?

A. 上司は自分の傾聴姿勢を主観的に評価しますが、部下は「話を遮られた」「意見を否定された」といった具体的な体験から評価します。この評価基準のずれが、認識のギャップを生みます。

Q. 上司の支援は、本当に健康リスクに関係するのですか?

A. 厚生労働省が推奨する「仕事のストレス判定図」では、仕事の量的負担・仕事のコントロール・同僚の支援・上司の支援という4つの要素で職場の健康リスクを分析します。上司の支援は、この分析軸の一つとして位置づけられています。

Q. 傾聴を身につけるのに、特別な研修が必要ですか?

A. 最初の一歩としては不要です。話を最後まで遮らない、結論を急がずに要約して確認するといった行動は、日々の会話の中で意識するだけで実践できます。

Q. 小規模な会社でも実践できますか?

A. はい。人数が少ない会社ほど、一人ひとりとの対話の質が組織全体の空気に直結します。特別な制度がなくても、日々のやり取りの中で意識を変えることから始められます。

最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ

人材課題を抱える中小企業の経営者様へ。「話は聞いている」という自己評価を一度脇に置き、最後まで遮らない・要約して返す・感情を先に受け止めるという3つから着手することが、話しやすい職場への近道です。DIALOGは急性期医療23年の傾聴の知見をもとに、貴社の職場コミュニケーションにこの視点を落とし込むご提案をします。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

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DIALOGは、人材の定着・技能承継に課題を抱える中小企業を対象に、健康経営優良法人の取得支援をご提案しています(建設業向けには「ぱとす」による伴走支援も行っています)。傾聴を活かした職場コミュニケーションの見直しなど、本記事のような視点も踏まえてご相談に応じます。貴社の業種・現状に合わせてご相談ください。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、厚生労働省が公開する一次資料を踏まえた解説です。制度の詳細・最新の要件は厚生労働省の公表資料でご確認ください。