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人材戦略

女性が働き続けられる建設現場を作る
——女性活躍推進の実践ステップと経営メリット

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

建設業の女性就業者比率は約17%(国土交通省調査)と全産業平均の44%を大きく下回り、現場作業員に限るとさらに低い水準です。「建設業は男の仕事」というイメージが根強く残る中、この状況を変えることを「義務」として捉える経営者は少ないかもしれません。しかし、建設業の人材不足が深刻化し、若手男性の採用難が続く現状において、建設業 女性活躍への取り組みは「理念」ではなく「経営戦略」として意味を持ちます。

建設業 女性 採用が進まない最大の原因は、女性側の問題ではなく、職場の設計・文化・キャリアパスの設計が女性を想定していないことにあります。建設現場 女性が活躍できる環境を整えることは、採用競争力の向上・多様な視点による品質向上・職場文化の改善という連鎖的なメリットをもたらします。

この記事では、データで見る建設業の女性就業の現実から、環境整備の具体的手順、育休・産休後のキャリア継続支援まで、北海道の中小建設業が今すぐ取り組める女性活躍推進の実践策を解説します。

この記事でわかること

データで見る建設業の女性就業者の現実

まず現状を数字で確認します。建設業の女性活躍推進を「感情論」ではなく経営判断として進めるためには、データに基づいた現状把握が不可欠です。

DATA — 建設業の女性就業者と全産業比較
約17.1%
建設業の女性就業者比率(国土交通省)
44.4%
全産業の女性就業者比率
微増傾向
令和2〜5年の建設業女性就業者数(国土交通省)
出典:国土交通省「建設業における女性の活躍推進に関する取組実態調査」(令和5年度)

建設業の女性就業者比率は全産業平均の17%の水準にとどまり、現場作業員(技能者)に限るとさらに低くなります。ただし、令和2〜5年にかけて女性就業者数は微増傾向にあり、建設DX・ICT活用による作業の変化が、女性が活躍しやすい職種・作業の裾野を広げつつあります。「建設業に女性が来ない」のではなく、「来られる環境を整備していない」という認識の転換が、経営者に求められています。

DATA — 建設業の女性就業者比率の他業種比較
医療・福祉
約77%
約77%
全産業平均
44.4%
44.4%
製造業
約30%
約30%
建設業
約17%
約17%
出典:総務省「労働力調査」(2024年)、国土交通省データをもとに作成

女性が建設業を選ばない・辞める3つの理由

女性の建設業離れを引き起こす根本原因は、女性個人の意識や能力にあるのではなく、職場の設計そのものにあります。3つの主要な理由を具体的に解説します。

理由1:設備面——トイレ・更衣室・休憩スペースの不足

建設現場の女性専用設備(トイレ・更衣室)の整備は、女性が安心して働ける最低限の物理的条件です。国土交通省の調査では、現場作業を行う女性が職場に求める改善点の最上位に「女性専用トイレ・更衣室の整備」が挙げられています。仮設トイレが男女共用のまま、更衣室がない状態では、女性の採用・定着が構造的に困難です。また、妊娠中の職員が安心して業務を継続できる休憩スペース・座れる作業環境の整備も、働き続けられる環境づくりの重要な要素です。

理由2:文化面——「男の仕事」意識とコミュニケーションのハードル

「女性には無理」「現場は男の世界」という意識は、ベテラン職人の間に根強く残っています。この意識は、女性職人に対する無意識の排除・過剰な気遣い・高いハードルの設定という形で表れ、女性が職場に馴染みにくい状況を作ります。言葉遣い・コミュニケーションのスタイル・飲み会文化なども、女性が居心地の悪さを感じる原因になります。これは個々の職人の「悪意」ではなく、長年の職場文化として形成されたものですが、経営者・管理職がリーダーシップを持って変えなければ、自然には変わりません。

理由3:キャリア面——産休・育休後のキャリアパスの不透明さ

女性が建設業への就職を検討する際に最も気にする点の一つが、「出産後も働き続けられるか」「育休復帰後のキャリアはどうなるか」という点です。建設業では、施工管理・設計・営業といったホワイトカラー職においても、育休復帰後の職場復帰が保証されていない、または復帰しても活躍できるポジションがないというケースが見られます。産休・育休の取得実績と、復帰後のキャリアモデルを明示することが、女性採用と定着の両方において重要です。

女性活躍推進に必要な「環境整備」の具体的手順

女性が働き続けられる建設現場を作るための環境整備は、「できることから段階的に」進めることが現実的です。以下に、優先順位の高い順で具体的な手順を示します。

STEP 01

女性専用設備の整備(トイレ・更衣室)

現場に仮設の女性専用トイレを設置することは、法的には義務ではありませんが、女性採用の実現可能性を左右する最重要の環境整備です。国土交通省は「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」において、女性専用トイレ・更衣室の整備を推進しており、補助制度の活用も可能です。建設現場の女性専用仮設トイレのレンタルは月額数万円程度から可能であり、費用面での障壁は以前より低くなっています。更衣室についても、プレハブのパーティション区切りで対応できる現場もあります。整備した設備は写真で記録し、健康経営優良法人の申請書類としても活用しましょう。

STEP 02

ユニフォーム・作業着の見直し

男性向けのサイズ・デザインを前提に設計された作業着は、女性の体型に合わず動きにくい、見た目の問題から着用したくないという不満につながります。女性向けサイズ展開・シルエット・機能性(ウエスト・股下・ヒップのフィット)を考慮した作業着の選定は、採用時のアピール要素にもなります。近年、建設業向けの女性対応作業着の選択肢は大幅に増えており、JIS規格に準拠した高視認性ベストや防寒ウェアも女性向けラインが充実しています。会社が費用を負担して女性用作業着を支給する姿勢は、「女性が来ることを想定している」という強いメッセージになります。

STEP 03

OTが見る作業設計の見直し(体格・力量に応じた作業分担)

作業療法の視点から、作業を「体格・筋力・技術習熟度」に応じて分担することは、女性だけでなく高齢者・障害のある方の就労を可能にする「インクルーシブな作業設計」です。女性が参入しやすい作業としては、内装仕上げ・測量補助・CAD操作・現場管理・安全管理・品質チェックなどがあります。重量物の搬送・足場組立などの重筋作業については、電動搬送機器・重機の活用により、体格によらず参加できる環境を整えることが可能です。「女性には無理な作業」ではなく「今の設計では女性が参加しにくい作業」として捉え直すことが、設計変更の出発点です。

女性職人・管理職が増えることで変わる職場

女性の参入は「多様性のための多様性」ではなく、職場の質そのものを変える可能性を持っています。実際にどのような変化が起きるのかを整理します。

安全意識の向上

複数の研究と現場事例が示すのは、女性が増えた職場では「丁寧な作業」「リスク回避行動」「異常の報告」が増加するという傾向です。これは女性の方が「優れている」という話ではなく、女性の参入によって職場の文化・コミュニケーションが変化することで、全体的な安全行動が改善されるという複合的な効果です。「言えない文化」が変わり、「ちょっと確認していいですか?」という声が出やすい雰囲気になることで、ヒヤリハットの早期発見・報告が増えます。

コミュニケーションの改善

女性職人・管理職の存在は、現場のコミュニケーションスタイルに変化をもたらします。「黙って見て覚えろ」「失敗したら怒鳴られる」という体育会系の教え方が通用しなくなることで、より丁寧な指導・確認の習慣が生まれます。この変化は若い男性職人にとっても、心理的に安全な職場環境を作るというメリットをもたらします。女性が働きやすい職場は、若い男性職人にとっても働きやすい職場です。

「見た目の整った現場」が受注力になる

女性が働いている建設現場は、整理整頓・清潔さ・安全への配慮が行き届いていることが多いとされています。発注者・顧客が現場を視察した際の「整った現場」という印象は、会社の信頼性・品質管理能力の評価につながります。「女性が活躍している建設会社」というブランドイメージは、社会的評価の向上と受注機会の拡大という形で経営に貢献します。

女性活躍推進が建設業の採用競争力を変える

人材不足が深刻な北海道の建設業において、採用競争力の差は将来の受注能力・技術継承の差に直結します。女性活躍推進は、その競争力を高める最も有効な手段の一つです。

健康経営優良法人との連動

女性活躍推進の取り組みは、健康経営優良法人認定の評価項目と重複する部分が多くあります。女性専用設備の整備・産休育休取得実績・女性管理職の登用といった取り組みは、健康経営度調査の「多様な人材の活躍」という評価軸で評価されます。女性活躍推進を健康経営優良法人認定の取り組みの一部として位置づけることで、二つの目標を同時に達成する効率的な経営アクションになります。

求人への掲載効果・学校との連携

求人票に「女性活躍推進中」「女性管理職在籍」「産休育休取得実績あり」という情報を明記することは、女性求職者の応募意欲を高めます。また、地元の工業高校・建築系専門学校に「女性歓迎・女性職人採用実績あり」というメッセージを届けることで、これまでリーチできていなかった女性人材へのアクセスが生まれます。高校・専門学校との関係構築は、中長期的な採用パイプラインの構築という観点からも重要な投資です。

育休・産休後のキャリア継続を支援する職場設計

女性を採用することと同等以上に重要なのが、採用した女性が長期的に働き続けられる職場を設計することです。入口だけ広げても、出口(退職)を減らさなければ意味がありません。

短時間勤務・テレワーク対応業務の切り出し

育休復帰後の短時間勤務に対応するためには、業務の中に「時間・場所の柔軟性がある業務」を意図的に作ることが必要です。現場への直接出勤が必要な施工管理業務の一部を、書類作成・発注管理・行政対応といった事務処理系の業務と分離し、後者をテレワーク可能な形で切り出すことが一つの方法です。完全なテレワークが困難な建設業においても、週1〜2日の在宅勤務と現場出勤の組み合わせという形で、育休復帰後のキャリア継続を支援できます。

復帰支援プログラムの設計

産休・育休からの復帰は、本人にとっても職場にとっても「再スタート」です。復帰前の面談・復帰後の段階的な業務量の増加・メンター制度(先輩女性職員がサポート)といった復帰支援の仕組みを整えることで、スムーズな職場復帰と長期定着が実現します。「復帰してもすぐに戦力にならないと困る」という経営者の本音を理解した上で、最初の1〜2カ月は軽業務から始めて徐々に通常業務に戻すという段階的復帰の設計が、双方にとって現実的な答えです。

女性活躍推進が採用・定着・受注に与えた効果(事例)
北海道内のある中小建設業者では、女性専用トイレ・更衣室の整備と女性向け作業着の支給を実施し、求人票に「女性活躍推進中」と記載したところ、翌年の求人に初めて女性からの応募が届きました。その女性職人の採用後、現場の整理整頓が改善され、男性職人の言動も丁寧になるという副次的な効果が現れたと経営者は話しています。女性活躍推進への投資は、採用だけでなく既存の職場文化の改善という形でも返ってきます。

「女性が働けない職場」は、
「若い人が働けない職場」でもあります。
女性活躍推進は、職場の設計を現代に合わせる取り組みです。

よくある質問

Q. 女性用トイレ整備への補助金はありますか?

A. 国土交通省が推進する「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」の枠組みで、女性専用設備整備に関する支援制度があります。また、厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金」や都道府県の女性活躍推進に関する補助金制度が活用できる場合があります。北海道においても、女性の職業生活における活躍の推進に関連する補助・支援制度を確認することをお勧めします。現場仮設トイレのレンタルについては、リース費用として経費処理が可能です。具体的な補助金情報は、地域の商工会議所・建設業協会・労働局に問い合わせることで最新情報を得られます。

Q. 女性職人の採用はどのチャネルが有効ですか?

A. 最も効果的なのは、地元の工業高校・建築系専門学校への直接アプローチです。学校の就職担当教員に「女性歓迎・女性採用実績あり」という情報を届け、インターンシップ・現場見学を受け入れることで、実際に女性学生が職場を体感できる機会を作ります。また、ハローワーク求人票への「女性活躍推進企業」の表示、女性活躍推進に特化した求人サイトへの掲載も有効です。SNS(Instagram・X)での現場の様子・女性職員のインタビュー動画の発信は、費用をかけずに広いリーチを得られる採用手法として注目されています。

Q. 男性職人からの抵抗にどう対処すればよいですか?

A. 男性職人からの抵抗は、「女性に仕事ができるのか」という懸念と「自分たちの働き方が変わるのでは」という不安の両方から生まれることが多いです。最も効果的な対処は、「変化の理由を経営者が丁寧に説明すること」です。「人材不足の解消」「会社の将来のための採用競争力強化」という経営的な文脈で伝えることで、感情的な反発を減らすことができます。また、女性職人が実際に現場に入り、一緒に仕事をする経験が積み重なることで、多くの男性職人の意識は自然に変わっていきます。管理職・ベテラン職人にまず受け入れてもらうための個別面談が、変化を円滑に進める上で有効です。

Q. 女性管理職候補の育成はどう進めますか?

A. 女性管理職候補の育成は、「いつか」ではなく「今の業務の中で意図的に機会を作る」ことから始まります。若手女性社員に対して、会議での発言機会・小規模プロジェクトのリーダー経験・後輩の指導経験を意図的に付与することが育成の第一歩です。また、外部の女性リーダー育成研修への参加支援・先輩女性管理職との交流機会の提供も有効です。小規模な建設会社では女性管理職のモデルが身近にいない場合が多いため、業界団体や女性活躍支援団体を通じた他社の女性管理職との交流も参考になります。

まとめ——女性活躍推進は経営戦略として取り組む

建設業 女性活躍推進は、「義務」や「社会貢献」としてではなく、人材不足解消・採用競争力向上・職場文化改善という経営的メリットを持つ「投資」として位置づけることが重要です。

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