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経営者

中小建設業の経営者自身の健康管理
——「ワンオペ経営者」のコンディションが会社を左右する理由

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

北海道の中小建設業の経営者の多くは、現場監督・営業・見積・事務・資材調達・採用まで、自らが関与するワンオペに近い状態で会社を動かしています。「自分が倒れたら会社が止まる」という状況を認識しながらも、「自分の健康を後回しにしてしまう」という経営者は少なくありません。

経営者 健康管理を後回しにすることの真のリスクは、健康被害だけではありません。体調不良の状態で行った判断・意思決定・交渉は、質が落ちます。これは目に見えにくいコストですが、積み重なれば経営数値を確実に蝕みます。中小企業 社長 健康の問題は、個人の問題ではなく会社の最重要リスクです。

この記事では、建設業 経営者 コンディションが会社に与える影響を多角的に分析し、忙しい経営者でも今日から実践できる具体的な健康管理の方法を解説します。

この記事でわかること

経営者の不健康が会社にもたらす5つのリスク

経営者の健康問題を会社のリスクとして整理すると、5つの異なる経路でダメージが生じることが分かります。

リスク1:突然の入院・長期療養による経営の空白

中小企業の経営者が長期入院・療養を余儀なくされた場合、代わりに意思決定できる人材がいない「経営の空白」が生まれます。工事契約の締結・仕入れ先との交渉・従業員への給与支払いの判断・顧客クレームへの対応——これらが止まることで、受注機会の喪失・従業員の離散・顧客の離反という連鎖ダメージが生じます。中小企業庁のデータでは、廃業理由の一定割合に経営者の健康問題が含まれています。「自分が倒れても会社が動き続ける仕組み」がないまま健康を後回しにすることは、会社そのものの存続を危うくするリスクです。

リスク2:体調不良による判断力・意思決定の質の低下

慢性的な疲労・睡眠不足・痛みを抱えながら行う経営判断は、明らかにパフォーマンスが低下しています。神経科学の研究では、慢性的なストレス・睡眠不足・痛みが前頭前野の機能を低下させ、リスク評価・長期的思考・感情の制御といった高次の認知機能に悪影響を与えることが示されています。「最近、判断を間違えることが増えた」「短気になって職人との関係が悪くなった」——これらは経営者の体調悪化のサインであり、会社の判断品質の低下を意味します。

リスク3:従業員・顧客への心理的影響

「社長の顔色が悪い」「社長が最近元気がない」——職人・スタッフはリーダーの状態に敏感に反応します。経営者の体調不良は、組織全体に不安・モチベーション低下という心理的影響を波及させます。逆に、経営者が元気で活力のある状態でいることは、職場の「気」をよくする最も強力な手段です。トップの状態は会社全体の状態を映す鏡です。

リスク4:後継者・事業承継への影響

経営者が健康問題によって引退を余儀なくされた場合、後継者が十分に育っていなければ事業承継は困難になります。特に建設業では、経営者の人脈・ノウハウ・顧客との信頼関係が属人的に蓄積しており、急な引退はこれらの無形資産を失うことになります。健康を維持して「計画的に引退できる」状態を作ることは、事業承継の成功確率を高める重要な経営行動です。

リスク5:経営者自身の「働く意欲」の枯渇(バーンアウト)

肉体的な疾病だけでなく、慢性的なストレス・過労・孤独感によるバーンアウト(燃え尽き症候群)も、中小建設業の経営者に起きうる深刻なリスクです。バーンアウトは「突然やる気がなくなる」という形で現れますが、その前段階としての慢性的な疲弊感・達成感の喪失・感情的消耗は、じわじわと経営判断の質と職場の空気を悪化させます。バーンアウトは個人の意志の問題ではなく、長期間の過負荷に対する生理的・心理的反応であり、予防的な対処が必要です。

DATA — 経営者の健康と中小企業経営のリスク
一定割合
中小企業の廃業理由に「経営者の健康問題」が含まれる(中小企業庁)
6時間未満
経営者の平均睡眠時間(各種調査)
前頭前野の低下
慢性疲労・睡眠不足が高次認知機能(判断・抑制)に与える影響(神経科学研究)
出典:中小企業庁「中小企業白書」、神経科学研究(Arnsten, 2015年)をもとに作成

なぜ建設業の経営者は自分の健康を後回しにしてしまうのか

「健康が大事だとわかっている、でも後回しにしてしまう」——この構造を理解することが、変化への第一歩です。

「自分が動かないと現場が回らない」という思い込み

中小建設業の経営者の多くが陥る最大の罠は、「自分がいなければ何も動かない」という思い込みです。実際にそれが正しい面もありますが、この思い込みが「自分のために時間を使うことへの罪悪感」を生み出します。健康診断の予約・定期的な運動・十分な睡眠——これらを「自分のため」として後回しにする一方で、「会社のため」の行動には際限なく時間を使います。しかし、「自分のコンディションを整えること」こそが会社のための最重要行動であるという発想の転換が必要です。

「職人の前で弱いところを見せたくない」

建設業の経営者・ベテラン管理職には、「弱みを見せない」というプレッシャーが文化として存在します。「社長が体調不良なんて言えない」という意識が、体調不良を隠したまま無理を続けるという行動を生みます。しかし、体調不良を抱えながら無理をして現れる「我慢強さ」は、組織に「我慢が美徳」という文化を広げるというマイナスの副作用もあります。

時間的制約と優先順位の問題

「健康診断を受ける時間がない」「運動する時間がない」——これは「時間がない」のではなく、「優先順位を上げていない」状態です。経営者の時間は有限であり、その使い方は経営判断です。自分の健康管理を「重要かつ緊急でない」カテゴリに分類し続けると、いつまでも着手できません。健康管理を経営者の「公式な業務」として時間をブロックするという意識改革が必要です。

経営者が最低限実施すべき5つの健康管理

「完璧な健康管理」を目指すのではなく、最低限押さえるべき5つの行動を確実に実施することが、経営者の健康維持の現実的なアプローチです。

01

年1回の健診(人間ドック)の予約を先に入れる

健診を受けられない最大の理由は「スケジュールが決まらないこと」です。解決策は、今すぐ来年の健診日を予約することです。忙しい時期を避けて、3〜6カ月先の日程を先に予約し、その日をブロックします。「健診に行けなかった」のではなく「健診の日程を先に押さえなかった」という経営判断の問題として捉え直してください。人間ドックは1〜2日で全身を網羅的にチェックでき、早期発見・早期治療による治療費・療養期間の削減という大きなリターンがあります。

02

睡眠の確保(6時間を絶対に下回らない)

経営者に必要な高次認知機能(判断・リスク評価・創造性・感情制御)は、すべて睡眠によって維持されます。「睡眠を削れば仕事時間が増える」という発想は、睡眠不足による判断力低下・ミスの増加・回復時間の延長というコストを無視しています。6時間を絶対的な下限として設定し、就寝時刻を経営者自身のスケジュールとして優先的に守ることが基本です。深夜まで仕事をする習慣がある場合は、夜の後半の仕事効率が実は低い可能性が高く、早朝型への切り替えが有効な場合があります。

03

週1回の身体活動(内容より継続性)

「毎日走らなければ意味がない」という完璧主義が、運動習慣の定着を妨げます。週1回・30分の身体活動(ウォーキング・軽いジョギング・ストレッチ・ラジオ体操)を、継続することを目標にしてください。内容・強度・時間は二の次で、「週1回必ず動く」というパターンを作ることが最初の目標です。現場への移動の途中で10分歩く、昼休みに社員と一緒にストレッチをする、週末に子供と公園に行く——生活の中に自然に組み込める形で設計することが継続のコツです。

04

定期的なストレス発散の設計

経営者は孤独なポジションです。職人には言えない悩み・不安・判断の迷いを抱えながら、常に「強いリーダー」として振る舞わなければならないプレッシャーは、慢性的なストレスの源泉です。このストレスを発散する場・方法を意図的に設計することが、バーンアウト予防の最も重要な行動です。同業の経営者仲間との定期的な交流・経営者向けコーチングや相談の場・趣味・家族との時間——「自分のためだけの時間」を月に数回確保することを、経営者の「業務」として位置づけてください。

05

腰・肩・膝の慢性不調を放置しない

建設業の経営者の多くは、現場での肉体労働の経験を持っており、腰・肩・膝の慢性的な不調を「当たり前」として放置しています。しかし、慢性的な痛みは睡眠の質を低下させ、集中力を奪い、感情の安定性を損ないます。「この程度の痛みは我慢できる」という状態でも、それが恒常的に続いていれば判断力・気力に確実に影響します。整形外科・整体・リハビリ(作業療法・理学療法)での評価と適切な対処を、「弱さ」ではなく「経営資源の保全」として捉え直してください。

OTが経営者に提案する「10分コンディショニング」

忙しい経営者でも実践できる、朝3分・昼2分・夜5分の合計10分コンディショニングプログラムです。特別な器具も広いスペースも不要で、今日からそのまま使えます。

経営者のマイクロコンディショニングプログラム(1日10分)

朝の3分(起床後・出発前)
①深呼吸×5回:鼻から4秒吸い、口から6秒吐く。自律神経を整え、覚醒度を高める
②肩甲骨ほぐし×10回:両肩を後ろに回す動作。座り仕事・現場作業で固まった肩周りをほぐす
③股関節ストレッチ×左右30秒:片足を前に踏み出してゆっくり伸ばす。腰への負担軽減に効果的

昼の2分(昼食後・休憩中)
①目を閉じて1分間の「静止」:スマホを置き、目を閉じて静かにいる。過剰な情報処理からの短時間回復
②首・肩の軽い動かし(30秒):首を前後左右にゆっくり動かす。肩を上げ下げして脱力する
③水分補給の確認:忙しいと水を飲み忘れる。1杯(200ml)の水をここで飲む

夜の5分(就寝前)
①今日の「3つのよかったこと」を頭の中で振り返る(ポジティブ感情の蓄積)
②ふくらはぎ・足首のストレッチ(2分):立ち仕事・現場移動で酷使した下肢の疲労回復
③腰の柔軟(2分):仰向けで膝を胸に引き寄せる・左右に倒す。腰椎への圧を緩める

このプログラムの最大の特徴は「10分以内に収まる」ことです。完璧にやろうとするのではなく、毎日続けることが目標です。特に「朝の3分」は、出発前に玄関でできる内容にしています。継続することで、慢性的な肩こり・腰痛の改善・睡眠の質の向上・日中の集中力の維持という効果が積み重なります。

経営者の健康が会社の「空気」を変える

経営者の健康状態は、単に個人のパフォーマンスだけでなく、組織全体の文化・空気に影響します。

トップが健康を大切にすることが文化になる

「社長が健診に行った」「社長が昼休みにストレッチをしている」「社長が睡眠を確保するために早上がりを認めた」——これらのトップの行動は、職人・スタッフに「健康を大切にしていい」というメッセージとして伝わります。経営者が「健康経営を実践している」ことは、どんな社内施策よりも強い文化形成力を持ちます。「社長が言うだけで自分はやっていない」という状態では、健康経営の取り組みは組織に浸透しません。

「社長が健康経営を実践している」ことの採用効果

求人票に「代表自身が健康経営を実践しています」という一文を加えることは、特に若い求職者・女性求職者への訴求力を高めます。「この会社のトップは従業員の健康に本気で取り組んでいる」という印象は、数ある求人の中から選ばれる理由になります。経営者 健康管理の実践は、内部への文化醸成と外部への採用ブランディングの両方に機能する、最もコストパフォーマンスの高い健康経営の施策です。

「自分が倒れたとき」のリスクマネジメント

健康管理と並行して、「自分が倒れたときにも会社が動き続ける仕組み」を作ることが、中小建設業の経営者の最重要リスクマネジメントです。

業務の標準化・属人性の排除

経営者しか知らない業務・経営者しかできる判断・経営者の頭の中にしかない顧客情報——これらを組織として共有・標準化することが、経営の属人性リスクを下げる最初のステップです。具体的には、よく使う契約書の雛形・取引先の連絡先・工事の段取り手順・鍵の保管場所まで、「自分が2週間入院しても誰かが業務を継続できるか」という視点で棚卸しし、文書化します。

後継者・代役の育成

「No.2」となる人材を意図的に育てることが、事業継続性の核心です。中小建設業では、従業員規模の関係からNo.2が育ちにくいことがありますが、「主任職人」「現場リーダー」「事務担当」の各役割に、経営者の「代役機能」の一部を移譲することが現実的な対応です。毎週の定例ミーティング・情報共有のルーティン・権限の委譲の積み重ねが、後継者育成の土台を作ります。

事業継続計画(BCP)への組み込み

自然災害・感染症・事故と並んで、「経営者の突然の不在」を事業継続計画(BCP)の想定シナリオとして明示的に組み込むことを推奨します。「経営者が3カ月入院した場合、誰が何を判断するか」「資金繰りはどうするか」「顧客への対応は誰が行うか」という具体的な手順を事前に決めておくことで、最悪の事態でも会社が動き続けられます。

経営者が自分の健康を大切にすることは、
自分のためではなく、会社と従業員を守ることです。
健康管理は最上位の経営判断です。

よくある質問

Q. 経営者向けの健康診断(人間ドック)はいつ受けるべきですか?

A. 一般的には年1回が目安です。建設業の繁忙期(北海道では10〜12月)を避け、比較的余裕のある時期(2〜3月・5〜6月など)に予約を入れることをお勧めします。重要なのは「今すぐ来年の日程を予約すること」です。「気が向いたら行こう」では先延ばしになります。40歳以上の経営者は特に、心臓・脳血管・消化器系の検査を含む人間ドックを年1回受けることが、突然の長期療養リスクの早期発見という観点から有効です。費用は会社の経費(福利厚生費)として処理できます。

Q. 経営者がコンディショニングを学べる場はありますか?

A. 経営者向けのコンディショニング・健康管理のセミナーは、商工会議所・中小企業同友会・業界団体が定期的に開催しています。また、作業療法士・理学療法士・産業医といった専門職による個別相談・指導も受けられます。DIALOGでは建設業の経営者を対象に、現場の実態に合わせたコンディショニング指導と健康経営支援を提供しています。「運動の仕方がわからない」「何から始めればよいかわからない」という段階から、一緒に考えます。まず無料相談でご相談ください。

Q. メンタル的に追い詰められたとき、最初に何をすべきですか?

A. 最初にすべきは「一人で抱え込まないこと」です。信頼できる人(家族・友人・同業の経営者仲間・専門家)に「最近しんどい」と伝えるだけでも、大きな違いがあります。次に、「今夜だけは早く寝る」という具体的な小さな行動を取ることです。完全に回復する必要はなく、今夜の睡眠だけを目標にします。それでも状態が改善しない場合は、かかりつけ医・産業医・メンタルクリニックへの相談を躊躇わないでください。中小企業経営者向けの無料相談窓口(商工会議所・中小企業基盤整備機構)も活用できます。早期の相談が、最も早い回復への近道です。

Q. 経営者の健康管理にかかる費用は損金算入できますか?

A. 人間ドック・定期健康診断の費用は、一定の要件を満たせば法人の福利厚生費として損金算入が可能です。ただし、役員のみが対象の場合は給与として扱われるケースもあるため、税理士への確認が推奨されます。スポーツジムの費用・マッサージ・健康器具なども、業務との関連性・従業員への適用範囲によって取り扱いが変わります。「経営者の健康管理=会社の経費」として整理する際は、税務上の根拠を確認した上で処理することをお勧めします。

まとめ——経営者の健康管理は最上位の経営判断

中小建設業の経営者が自分の健康を後回しにすることのリスクは、個人の問題ではなく会社の経営リスクです。経営者 健康管理を優先することは、利己的な行動ではなく、従業員・顧客・会社の将来を守る経営判断です。

経営者ご自身のコンディションについて、まず話してみませんか?

DIALOGは建設業の経営者向けに、健康経営の設計と経営者自身のコンディショニング支援を提供しています。「何から始めればいいかわからない」という段階から、作業療法士が一緒に考えます。まず30分の無料相談をご活用ください。

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