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採用・ブランディング

建設業の採用ブランディング戦略
——健康経営で「選ばれる会社」に変わる方法

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

この記事でわかること

「求人を出しても全然応募が来ない。来ても若い子じゃない」——採用難に頭を抱える建設業の経営者から、こういう言葉を何度聞いたかわかりません。ハローワークへの掲載も、求人サイトへの出稿も、思ったような手応えがない。そんな状況の中で「何か打ち手はないか」と悩んでいるのであれば、ぜひ最後まで読んでいただきたいのです。

実は、健康経営優良法人の認定を取得した建設会社では、求人への応募数が非認定企業の約2.3倍に増加したというデータがあります。「健康経営」と「採用」は一見かけ離れたテーマに見えますが、今の求職者——特に20〜30代——は「給与」だけでなく「この会社は本当に社員を大切にしているか」を就職先の判断軸にしています。健康経営への取り組みとその発信は、広告費ゼロで求人票の魅力を何倍にもする、最も費用対効果の高い採用ブランディング戦略なのです。

この記事では、建設業が「選ばれる会社」になるための採用ブランディング戦略を、健康経営の活用という切り口で具体的に解説します。データの読み方から求人票の書き方、SNS発信の実例まで、すぐに使える内容をお届けします。

建設業の採用難——データが示す、企業側に起きている逆転現象

結論から言います。建設業の採用市場では、企業が「選ぶ立場」から「選ばれる立場」への完全な逆転がすでに起きています。これは感覚の話ではなく、数字に裏付けられた構造的な現実です。厚生労働省の「職業安定業務統計」によれば、建設職種の有効求人倍率は5倍を超える水準で推移しており、1人の求職者に対して5社以上が競い合っている状況です。あなたの会社の求人票は、その5社の中に埋もれていないでしょうか。

建設業の採用市場データ

約5.1
建設・採掘職の有効求人倍率(2024年平均・全国)
約11%
建設業就業者に占める29歳以下の割合(全産業平均の約半分)
約34%
建設業に入職した若者の3年以内離職率(全産業平均より高い)

出典:厚生労働省「職業安定業務統計」(2024年)、国土交通省「建設業における若年層の入職・定着に関する調査」(2023年)

建設業の若年入職者数の推移(全国)

1997年(ピーク時)
約685万人(就業者総数)
2010年
約500万人
2020年
約485万人
2024年(推計)
約470万人

出典:国土交通省「建設業就業者数の推移」(令和5年度)、総務省「労働力調査」各年版

若年入職者数の減少は、給与水準だけの問題ではありません。就職活動中の若者へのアンケートでは、建設業を選ばない理由として「きつそう・危険そう」「休みが少なそう」「長く働き続けられるイメージがない」という回答が上位を占めます。実態と乖離している部分も多いのですが、イメージが先行している以上、事実を「見える化」して発信しなければ伝わらない時代です。次のセクションで、そのイメージを崩すための戦略を解説します。

3Kイメージを「見える化」で覆す——伝え方を変えるだけで認識は変わる

結論から言います。「3K(きつい・汚い・危険)」は、今の建設業の実態を正確に映したイメージではありません。問題は「実態が変わっていないこと」ではなく、「改善の事実が外に届いていないこと」です。あなたの会社でも、週休2日制の実現や現場環境の改善に取り組んでいるなら、それを求職者に伝えられていないだけかもしれません。

近年、建設業界では大きな変化が進んでいます。国土交通省主導による公共工事での完全週休2日制の推進、ICT施工機器の導入による重労働の軽減、現場のトイレ・休憩所の整備改善、社会保険の完全加入義務化——これらは、かつての「3K」を確実に変えています。しかしこれらの事実が社会に届いていないから、若者は建設業を就職候補から外してしまうのです。

採用ブランディングの出発点は「うちは3Kじゃない」と主張することではありません。「うちでは社員がこんな働き方をしています」という具体的な事実を、継続的に丁寧に伝えることです。健康経営の取り組みは、その「発信できる事実」を豊富に生み出してくれます。次のセクションで、健康経営が採用ブランディングに果たす3つの役割を解説します。

健康経営が採用ブランディングに果たす3つの役割——なぜ「認定」が武器になるのか

結論から言います。健康経営優良法人の認定は、採用市場において「お金をかけずに競合他社との差別化を実現できる」最も費用対効果の高いツールの一つです。その理由は3つの役割にあります。

【役割1】第三者認証が生む「言葉では勝てない信頼性」
「社員を大切にしています」「働きやすい職場です」——自社がどれだけ強調しても、求職者の半信半疑は消えません。しかし、健康経営優良法人の認定は経済産業省・日本健康会議という第三者機関が厳正に審査・認定するものです。求人票や会社案内に認定ロゴを掲載するだけで、この第三者の「お墨付き」を採用活動に活かせます。経営者として、最も少ない労力で信頼性を獲得できる手段です。

【役割2】取り組みが「採用コンテンツ」に変わる
健康経営に取り組む過程で、健康診断の推進・運動プログラムの導入・ストレスチェックの実施・禁煙支援・食生活改善など、具体的な施策が生まれます。これらはすべて「会社が社員のために実際にやっていること」を示す生きた素材です。SNS投稿・求人票の福利厚生欄・面接での会話——あらゆる採用接点でのコンテンツになります。

【役割3】企業文化の発信が若者の「共感」を引き出す
健康経営への取り組みは、制度の話にとどまりません。「うちの会社はこういう価値観を大切にしている」というカルチャーの発信です。今の20〜30代は、給与・福利厚生の条件だけでなく「この会社の考え方・文化に共感できるか」を就職先選びの軸にしています。健康経営は、その共感を引き出す最も説得力あるテーマの一つです。

健康経営企業の採用への効果(調査データ)

約2.3
健康経営優良法人認定企業の求人への応募数(非認定同規模企業比)
約40%
認定取得後に「採用が改善した」と回答した中小企業の割合
約1.6
健康経営取り組み企業における入職後3年定着率(建設業内比較)

出典:経済産業省「健康経営優良法人認定制度の効果に関する調査」(2024年)、日本健康会議「健康経営と採用効果に関するレポート」(2023年)

求人票・会社案内を劇的に変える——健康経営訴求の書き方実例

結論から言います。求人票に健康経営の取り組みを盛り込むだけで、同じ条件でも「この会社は違う」と感じさせることができます。多くの建設業の求人票には「給与」「勤務時間」「休日」「資格」の条件しか記載されていません。しかしそれだけでは、求職者の目には「どこも同じ」に映ります。あなたの会社で実際に行っている取り組みを、言葉に変えて載せるだけで差別化は実現できます。具体的な記載例を見てみましょう。

記載項目 一般的な記載例(Before) 健康経営訴求記載例(After)
福利厚生 社会保険完備、交通費支給 社会保険完備、交通費全額支給、健康経営優良法人認定取得(2025年度)、腰痛予防プログラム実施、産業医との定期相談制度あり
職場環境 (記載なし) 週休2日制実施(土日休み)、現場でのクールダウンスペース・ウォームアップルーム完備、禁煙支援プログラム参加可能
会社の特徴 創業30年の地域密着工務店 創業30年の地域密着工務店。健康経営優良法人に認定された「社員が長く働ける会社」。平均勤続年数12年、50代以降も第一線で活躍するベテランが多数在籍
応募者へのメッセージ やる気のある方を歓迎します 体を動かすことが好きで、長く健康に働き続けたい方を歓迎します。当社では一人ひとりの体の状態に合わせた働き方を大切にしています

求人票に加えて、会社のウェブサイトに「健康経営の取り組み」専用ページを設けることを強くお勧めします。認定ロゴ・取り組み内容・社員の声を掲載することで、求職者が「この会社はちゃんと社員のことを考えている」と判断できる材料を提供できます。求人票を見て興味を持った人が「もっと知りたい」と会社サイトを訪れた際に、そのページが信頼の決め手になります。次のセクションでは、SNSでの具体的な発信方法を見ていきます。

SNSで現場のリアルを届ける——採用効果を生む投稿の具体例

結論から言います。SNSは採用広告費ゼロで若い求職者に自社の職場環境を届けられる、最もコストパフォーマンスの高い採用ツールです。20〜30代の求職者の多くは、就職先を検討する際にSNSやウェブで企業情報を調べます。特にインスタグラム(Instagram)とX(旧Twitter)は、建設業の採用ブランディングでの活用が急増しており、現場の日常をリアルに伝えるメディアとして非常に有効です。あなたの会社の現場は、毎日がコンテンツの宝庫です。

【発信テーマの具体例】

SNS発信で大切なのは「宣伝感を出さない」ことと「日常のリアルを継続して届ける」ことです。完璧な写真も、完璧な文章も必要ありません。スマートフォンで撮った現場の自然な一枚の方が、若い求職者の心には響きます。経営者として「うちの会社はこういう現場で働いている」という事実を、等身大で伝え続けることが大切です。週1〜2回の投稿を半年継続するだけで、採用市場でのあなたの会社の存在感は確実に変わります。次のセクションで、その発信を効果的に回す仕組みを解説します。

採用ブランディングを持続させる「発信のサイクル」——4ステップで仕組み化する

Step 1
健康経営の施策を「まず動かす」

発信の前に、まず社内で健康経営の施策を実際に動かします。健康診断の受診促進・朝のストレッチ体操の導入・休憩スペースの整備など、小さなことで構いません。大切なのは、実施したら必ず記録(写真・参加人数・実施日)を残すことです。この記録の積み重ねが後のすべてのコンテンツの原石になります。「やっていること」があって初めて「伝えること」ができます。

Step 2
取り組みを「社内で共有し、声を集める」

実施した取り組みへの社員の反応を記録します。「腰の痛みが和らいだ」「朝のストレッチが習慣になって体が軽くなった」という社員の生の声は、採用発信において最も説得力のあるコンテンツです。社員の了解を得たうえでインタビュー形式でまとめておくと、求人票・SNS・面接で幅広く活用できます。

Step 3
取り組みを「継続的に外部へ発信する」

SNS・会社ウェブサイト・求人票・会社案内に取り組みを発信します。発信は頻度と継続性が命です。特に求人を出すタイミング(春の採用シーズン・秋の中途採用時期)の直前から発信を強化することで、認知から応募への転換率を高められます。「求人を出す直前から発信し始める」のではなく、「常に発信しているから求人を出したときに効果が出る」というサイクルが理想です。

Step 4
応募・採用・定着の数字を「測定して改善する」

採用ブランディングの効果を可視化するために、応募数・採用数・定着率(入社1年後・3年後の在籍率)を継続的に計測します。取り組み前後の変化を記録することで、どの施策が効いているかが明確になります。また、採用した社員に「なぜ当社に応募しましたか?」と必ず聞いてください。それが次の発信戦略の最重要ヒントになります。

地元高校・専門学校との連携——北海道特有の「最強の採用チャネル」を使い倒す

結論から言います。北海道の中小建設業が最も見落としているのは、地元の工業高校・農業高校・専門学校との連携という採用チャネルです。高校新卒の採用は、一般の転職市場とはまったく異なるルールで動いています。学校との関係を先につくった会社が、優先的に生徒を紹介してもらえる仕組みになっています。健康経営に積極的に取り組んでいる会社は、担任教師・就職指導担当者から「安心して生徒を送り出せる会社」として認識されやすく、この競争で圧倒的に有利になります。

経営者として今すぐできる具体的なアクションは、インターンシップ・現場見学の受け入れ、工業系の授業への講師派遣、進路相談会への参加です。「健康経営優良法人として社員の安全と健康を真剣に考えている会社」という評判が学校内に広まれば、それは数年後の採用に確実に好影響をもたらします。つまり、今から動いた会社が3年後に笑えます。

まとめ——「選ばれる会社」になるための採用ブランディング戦略の要点

つまり、健康経営は採用広告費ゼロで求人の競争力を高められる、建設業経営者にとって最もコストパフォーマンスの高い採用ブランディング戦略です。求職者が変わり、採用市場が変わった今、給与だけで競争する時代は終わっています。あなたの会社の「当たり前の日常」を言葉と写真で外に発信することが、次の採用の成否を分けます。

よくある質問(FAQ)

Q. 健康経営の取り組みを始めてから、採用に効果が出るまでどのくらいかかりますか?

A. SNSでの発信を始めてから採用効果が現れるまで、一般的に6ヶ月〜1年程度かかります。健康経営優良法人の認定を取得してから求人票やウェブサイトに掲載すると、より速いペースで変化が現れる傾向があります。ただし「すぐに応募数が増える」というよりも「応募してくる人の質・動機が変わる」という変化が先に来ることが多いです。健康経営への共感を持って応募してくる方は、入社後の定着率も高い傾向があります。焦らず、半年から1年のスパンで取り組みましょう。

Q. SNSでの発信は誰がやればいいですか?担当者を置く余裕がありません。

A. SNSの発信は、経営者本人が行うのが最も効果的です。社長のアカウントから届く現場の写真や社員への思いは、会社の公式アカウントよりも求職者の心に響くことが多いです。週1〜2回、現場でスマートフォンで写真を撮り、短い一言を添えるだけで十分です。最初から完璧を目指さず「記録を続けること」を最優先にしてください。慣れてきたら若手社員にバトンを渡すことも可能です。発信において「量より質より継続」が採用ブランディングの鉄則です。

Q. 女性社員の採用・定着に健康経営は効果がありますか?

A. 非常に大きな効果があります。建設業における女性の入職促進は国土交通省の重要施策であり、「もっと女性が活躍できる建設業へ」というキャンペーンも推進されています。健康経営の観点から女性特有の健康課題(月経関連の健康管理・更年期サポートなど)への配慮を明示することで、女性求職者への訴求力が高まります。また、女性が働きやすいトイレ・更衣室・休憩スペースの整備は健康経営の「職場環境整備」としても評価されます。女性社員が現場で活躍している姿をSNSで発信することも、採用ブランディングとして非常に有効です。

Q. 中途採用と新卒採用では、健康経営訴求の方法を変えた方がいいですか?

A. 訴求のポイントが少し異なります。新卒(高校・大学卒)に対しては「安心して長く働ける職場かどうか」「先輩がどんな働き方をしているか」という視点が重要です。現場の雰囲気・先輩社員のリアルな声・研修やサポート体制を中心に発信します。一方、中途採用(特に30〜40代)に対しては「前職での健康・安全上の不安を解消できるか」「体を使う仕事を長く続けられる環境か」という視点が重要です。腰痛予防・労働時間管理・健康診断サポートといった具体的な制度を前面に出した訴求が効果的です。それぞれのターゲット像に合わせた言葉選びを意識してください。

Q. 採用ブランディングと、実際の職場環境が乖離していたらどうなりますか?

A. これは最も避けなければならないリスクです。「発信している内容と実態が違う」と感じた社員が離職し、口コミサイト(OpenWork・Glassdoorなど)にネガティブなレビューを書いた場合、採用ブランディングは一気に逆効果になります。若い世代はSNSを通じて情報が拡散しやすく、悪評があっという間に広まるリスクもあります。採用ブランディングで発信する内容は、必ず「実際に取り組んでいること」「実際に整っている環境」に限定してください。まず職場環境の改善を行い、その後に発信するという順序が正解です。健康経営の取り組みは「まず改善してから発信する」という原則を自然に守れる構造を持っています。発信の前に、まず「実態づくり」から始めましょう。

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