← ブログ一覧に戻る
定着×ワークライフバランス

ワークライフバランス|
テレワークも時短も無理でも、設備投資なしで打てる一手がある

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

ワークライフバランスの取り組みを調べると、テレワーク、フレックスタイム、育児短時間勤務が並びます。現場に人が立っていないと回らない会社や、交代要員のいない会社にとって、そのほとんどは移植できません。

結果として、事例を集めるほど「うちには無理だ」で話が終わります。ですが本当に欲しいのは制度の一覧ではなく、求人票に書ける事実が1つ増えることと、入った若手が続く状態のはずです。

事例に並ぶ制度と、ワークライフバランスの公的な定義は同じものではありません。定義に戻ると、設備投資も増員もなしに着手できる領域が残っています。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で人が働き続けられる条件を見てきた知見をもとに、中小企業の健康経営・人材定着支援を提供しています。blog-109(有給休暇)が休みそのものの話だとすれば、本稿は「休息の間隔」の話です。

この記事の要点

背景の前提: 勤務間インターバル制度は、2019年4月から事業主の努力義務です(出典は記事末尾)。

勤務間インターバル制度の現在地

6.9%
制度を導入している企業割合
78.7%
導入の予定はなく、検討もしていない企業割合
15%以上
国が令和10年までに目指す導入企業割合(労働者数30人以上)

出典:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査 結果の概況」、厚生労働省「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(令和6年8月2日変更)

公的な定義は「3つの社会の姿」で書かれている

内閣府の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」は、実現した社会の姿を3つ挙げています。

3つの社会の姿憲章が示す内容
就労による経済的自立が可能な社会とりわけ若者がいきいきと働き、経済的に自立可能な働き方ができる
健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会働く人々の健康が保持され、家族・友人との充実した時間などを持てる
多様な働き方・生き方が選択できる社会性や年齢などにかかわらず、様々な働き方に挑戦できる機会がある

事例で紹介される制度の多くは3つ目に集中しています。テレワークもフレックスも育児短時間勤務も、働き方の選択肢を増やす施策です。設備や人員配置に左右されるため、移植の難易度が高いのは当然です。

一方、2つ目の「働く人々の健康が保持され」は、選択肢を増やさなくても着手できます。誰がどこで働くかではなく、働いていない時間の長さを決めるという話だからです。

78.7%の会社が、検討すらしていない一手

その具体策が勤務間インターバル制度です。厚生労働省は「1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保するもの」と説明しています。

2019年4月から、労働時間等設定改善法第2条第1項により事業主の努力義務です。それでも導入している企業は6.9%、導入の予定はなく検討もしていない企業が78.7%を占めます(令和7年就労条件総合調査)。導入企業の1企業平均勤務間隔時間は10時間51分でした。

「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(令和6年8月2日変更)は、労働者数30人以上の企業について、令和10年までに導入企業割合を15%以上とする目標を定め、導入率が低い中小企業への取組を特に推進すると明記しています。

国が中小企業を名指しした領域で、9割超がまだ動いていません。競合の少ない打ち手です。

明日から測れる3つの実務

実務内容目的
最短の間隔を1週間測る終業から翌日の始業までを1週間分記録する現状が10時間51分より上か下かを知る
時間数を決めて文書に書く何時間空けるかを決め、就業規則または労使協定等に定める制度として数えられる要件を満たす
例外の扱いを先に決める守れない場合の運用をあらかじめ書いておく守れない月を理由に制度化を諦めない

ここまでの整理

ワークライフバランスは、選択肢を増やすことだけを指す言葉ではありません。働いていない時間の長さを決めることも、公的な定義に含まれています

睡眠時間は、気持ちではなく引き算で決まる

終業から始業までの間隔が短ければ、通勤と食事と入浴を引いた残りが、睡眠に充てられる時間です。

ここからは私の見立てです。急性期医療の現場で患者さんを見てきた経験から、睡眠が足りない状態が続くと、本人の意欲や性格の問題として扱われやすくなる場面を何度も観察してきました。実際には時間の引き算の結果であることが少なくありません。質はblog-103(睡眠の質)で扱いましたが、その前に確保できる時間が足りているかを見る順番があります。

もし1つだけ持ち帰るなら

今週、最も遅く終わった日の終業時刻と、翌日の始業時刻を書き出してみてください。その差を10時間51分という平均と比べるだけで、制度化を検討する価値があるかが見えてきます。

よくある質問

Q. ワークライフバランスとは何ですか?

A. 内閣府の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」は、実現した社会の姿として、経済的自立が可能な社会、健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会、多様な働き方が選択できる社会の3つを挙げています。

Q. 勤務間インターバル制度とは何ですか?

A. 勤務終了から翌日の出社までに一定時間以上の休息時間を設け、働く方の生活時間や睡眠時間を確保する制度です。2019年4月から、労働時間等設定改善法第2条第1項により事業主の努力義務です。

Q. 何時間空ければよいと決まっていますか?

A. 法律は時間数を定めていません。各社が定めます。令和7年就労条件総合調査では、導入企業の1企業平均は10時間51分でした。

Q. 中小企業でも導入できますか?

A. できます。過労死等の防止のための対策に関する大綱(令和6年8月2日変更)は、導入率が低い中小企業への取組を特に推進すると明記しています。制度として数えられる要件は、就業規則または労使協定等で定めることです。

Q. 繁忙期に守れない場合はどうしますか?

A. 例外の扱いを先に定めておく方法があります。守れない月がある前提でルールを決めるほうが、制度を作らないまま放置するより実態に近い管理ができます。

最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ

人材課題を抱える中小企業の経営者様へ。他社の事例と見比べて諦める前に、公的な定義のうちどこに着手できるかを分けて見てください。DIALOGは急性期医療23年の知見をもとに、貴社の人材定着にこの視点を落とし込むご提案をします。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

詳しいプロフィールを見る

制度を並べることではなく、人が続く会社になることを目的に伴走します

無料の個別相談から
はじめてみませんか

DIALOGは、人材の定着・技能承継に課題を抱える中小企業を対象に、健康経営優良法人の取得支援をご提案しています(建設業向けには「ぱとす」による伴走支援も行っています)。自社で着手できる範囲をどう見極めるかなど、本記事のような視点も踏まえてご相談に応じます。貴社の業種・現状に合わせてご相談ください。

無料相談を申し込む →

参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、内閣府・厚生労働省が公開する一次資料を踏まえた解説です。制度の詳細・最新の要件は各省庁の公表資料でご確認ください。