「無遅刻無欠勤の社員は、頼りになる」。多くの職場で、これは疑いようのない常識です。休まず出社してくれることは、たしかにありがたいことです。
ですが、出社しているかどうかと、力を出せているかどうかは、別の話です。体調を崩しながら出勤し、いつもの半分の集中力で働いている——その状態は、勤怠表には一切出てきません。そして国の資料は、この"見えない不調"こそが、健康に関わる最大のコストだと指摘しています。
本当に見るべきは、欠勤率だけではないのかもしれません。出社しているのに削られている力、つまりプレゼンティーズムです。
株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見てきた知見をもとに、中小企業の健康経営・人材定着支援を提供しています。blog-95(ロコモティブシンドローム)やblog-112(従業員エンゲージメント)で扱った「見えにくい不調」の話を、本稿は生産性という切り口で掘り下げます。
この記事の要点
- プレゼンティーズムとは、出勤しているが健康問題で業務の能率が落ちている状態(厚生労働省こころの耳)。病欠(アブセンティーズム)と違い、勤怠表に出ない
- 厚生労働省のコラボヘルスガイドラインは、プレゼンティーズムが医療費を上回る、最大の健康関連コスト要因だと整理している
- 見えないため後回しになりやすい。現場で力を削るもの(痛み・睡眠不足・疲労など)を減らす一手は、設備投資なしで打てる
背景の前提: プレゼンティーズムはWHOが提唱した概念で、原因にはメンタルヘルス不調のほか、偏頭痛・アレルギー・生活習慣病などがあります(出典は記事末尾)。
プレゼンティーズムとは — 勤怠表に出ない、生産性の低下
まず、言葉を整理します。健康と仕事の関係を測る指標に、よく似た2つの言葉があります。並べると、違いがはっきりします。
| 指標 | どんな状態か | 勤怠表には |
|---|---|---|
| アブセンティーズム | 病気で欠勤・休業している | 出る(休みとして見える) |
| プレゼンティーズム | 出勤しているが、健康問題で能率が落ちている | 出ない(見えない) |
プレゼンティーズムは、出勤(present)しているのに、何らかの健康問題で業務の能率が落ちている状態を指します。厚生労働省の用語解説でも、こう説明されています。原因は、メンタルヘルス不調のほか、偏頭痛やアレルギー、生活習慣病など、幅広いものが知られています。
なぜ「一番大きなコスト」なのか
ここが本題です。厚生労働省のコラボヘルスガイドラインは、企業の健康関連コストを分解すると、最大の要因はプレゼンティーズムであり、医療費を上回ると整理しています。欠勤や医療費よりも、出社しながら能率が落ちている状態のほうが、会社全体では大きな損失になっている、ということです。
やっかいなのは、その見えにくさです。欠勤日数も、医療費も、数字で目に見えます。ところがプレゼンティーズムは、勤怠表にも請求書にも出てきません。見えないから、対策の順番が後回しになります。ここに、多くの会社の盲点があります。
ここまでの整理
健康に関わるコストで最大の要因は、欠勤でも医療費でもなくプレゼンティーズム(厚生労働省の整理)。しかも勤怠表に出ないため、いちばん見えにくく、いちばん後回しにされやすいコストです。
現場で"力を削るもの"を減らす、設備投資ゼロの一手
プレゼンティーズムの正体は、業務を遂行する力が、体や心の不調で少しずつ削られている状態です。作業療法士として急性期の現場で見てきた限りでも、同じ作業をしていても、痛みや不眠があると遂行の質は落ちます。人の「できる」は、身体と心の状態にぶら下がっています。
だとすれば、打ち手は「力を削るもの」を現場から減らすことです。どれも新しい設備は要りません。
| 現場で力を削るもの | 設備投資ゼロでできる一手 |
|---|---|
| 腰痛・肩こり・関節の痛み | 作業姿勢や重い工具の持ち方を見直し、小休止を挟む |
| 睡眠不足・疲労の蓄積 | 連続作業を区切る。無理をしない空気を上司からつくる |
| 目の疲れ・頭痛 | 画面や照明を調整し、こまめに目を休める |
| 気分の落ち込み・不安 | 早めに相談できる相手・窓口を用意し、声をかける |
これらは、健康を土台として守る取り組みそのものです。心身が消耗していると、能率だけでなく、定着や安全も崩れていきます。健康経営は、この土台を実務として整える入り口になります。
もし1つだけ持ち帰るなら
今週、欠勤していない社員の中に、「最近、動きが重そうな人」がいないか思い浮かべてください。その人の力が削られている理由に、プレゼンティーズム対策の入り口があります。
よくある質問
Q. プレゼンティーズムとは何ですか?
A. WHOが提唱した概念で、出勤はしているものの、健康問題によって業務の能率が落ちている状態を指します(厚生労働省こころの耳)。病気で欠勤するアブセンティーズムと違い、勤怠表に出てこないのが特徴です。
Q. なぜプレゼンティーズムが経営上の問題になるのですか?
A. 厚生労働省のコラボヘルスガイドラインは、プレゼンティーズムが医療費を上回る、最大の健康関連コスト要因だと整理しています。しかも勤怠表に出ないため、対策が後回しになりやすい隠れたコストです。
Q. プレゼンティーズムの原因は何ですか?
A. メンタルヘルス不調のほか、偏頭痛、アレルギー、生活習慣病などが原因になることが知られています(厚生労働省こころの耳)。現場では、腰痛や肩こり、睡眠不足、目の疲れなども業務の能率を下げます。
Q. 設備投資なしでプレゼンティーズムを減らせますか?
A. 減らせます。作業の負荷を小さくする姿勢や工具の見直し、小休止、相談しやすい空気づくり、睡眠や痛みへの早めの対応など、日々の工夫で現場から取り組めます。
Q. 健康経営とプレゼンティーズムはどう関係しますか?
A. 深く関係します。健康を投資と捉え、生産性を守る発想が健康経営です。プレゼンティーズム対策は、その中心にある取り組みの一つです。
最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ
人材課題を抱える中小企業の経営者様へ。欠勤率という見える数字だけでなく、出社しているのに力が削られている状態にも、目を向けてみてください。DIALOGは急性期医療23年の知見をもとに、貴社の生産性と定着づくりにこの視点を落とし込むご提案をします。