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産業保健体制×労働安全衛生法

産業医|
「うちは50人未満」は、パートを入れて数えた50人ですか

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

御社の人数は、パート・アルバイトを入れて何人ですか。

正社員の数なら、すぐ答えられると思います。では、週2日だけ来る事務のパート。繁忙期にだけ入る作業員。受け入れている派遣社員。足すと何人になるでしょうか。

産業医を選ばなければならない「常時50人以上」は、この足し算のあとの数字です。正社員だけの数ではありません。

この数字を気にし始めるのは、採用がうまくいっている会社です。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、中小企業の採用・定着を、健康経営と採用設計の両面から支援しています。作業療法士として23年間、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見てきた知見が土台です。本稿では、産業医の選任義務がかかる人数の数え方と、その線を越えた後に何が起きるかを整理します。

この記事の要点

期限の前提: 産業医は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、遅滞なく労働基準監督署へ報告することが定められています。出典は記事末尾。

産業医の選任にかかわる3つの数字

50人
選任義務がかかる事業場の規模
14日
事由の発生から選任までの期限
50万円
未選任に対する罰金の上限

出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「産業医を選任していますか?」/和歌山産業保健総合支援センター(労働者健康安全機構)「衛生管理関係の罰則」

「常時50人」は、誰を数えた50人か

数えるのは、常態として雇っている人すべてです。

労働安全衛生法での「常時使用する者」は、勤務日の頻度や勤務時間の多少にかかわらず、常態的に雇用されている者を指します。週2日のパートも、1日3時間のアルバイトも1人と数えます。

受け入れている派遣社員も、産業医の選任義務を判断する人数には含めます。

つまずきやすいのは、健康診断の話と混ざるからです。定期健康診断を受けさせる対象者は、週の労働時間が通常の労働者の4分の3以上であることなどが目安です。短時間のパートは健診の対象から外れます。

同じ「労働者」という言葉でも、数える土俵が違います。健診を受けさせている人が40人でも、事業場の人数は52人ということが起こります。

働き方産業医の選任義務がかかるかを判断する人数定期健康診断の対象になるか
正社員数える対象
週の労働時間が通常の4分の3以上のパート数える対象
週の労働時間が通常の4分の3未満のパート数える対象外
受け入れている派遣社員数える派遣元が実施する

※対象は勤務時間に加え雇用期間の見込みも要件になります。判断は所轄の労働基準監督署へ。

もう一つ、事業場ごとに数える点も見落とされます。労働安全衛生法第13条第1項は「政令で定める規模の事業場ごとに」と定めています。会社全体で80人でも、本社40人・工場40人なら、どちらの事業場にも選任義務はかかりません。逆に、1か所に人が集まっている会社ほど、線を越えるのは早くなります。

50人を越えた日から、14日しかない

期限は、人数が50人になった日から数えます。

労働安全衛生規則第13条第1項第1号により、産業医は「選任すべき事由が発生した日から14日以内」に選任することと定められています。選任したら、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ報告書を提出します。

選任しなかった場合、労働安全衛生法第120条により、50万円以下の罰金の対象になります。

そして、50人という線を越えたとき、増えるのは産業医だけではありません。

常時50人に達すると発生すること根拠
産業医の選任労働安全衛生法第13条第1項・同法施行令第5条
衛生管理者の選任労働安全衛生法施行令第4条
ストレスチェックの実施常時50人以上の労働者を使用する事業場(50人未満への拡大が公布済み・施行準備中)
定期健康診断結果の労働基準監督署への報告労働安全衛生規則第52条
休養室(男女別)の設置労働安全衛生規則第618条

どれも同じ「常時50人以上」が入口です。数え方を1か所で間違えると、5つまとめて漏れます。ストレスチェックの準備は50人未満のストレスチェック、健康診断の結果をどう扱うかは健診の事後措置で整理しています。

なお、産業医は誰でも置けるわけではありません。労働安全衛生規則第13条第1項第2号は、産業医に選任できない人を定めます。法人の代表者、事業を営む個人、事業場で事業の実施を統括管理する者です。平成29年4月1日に施行された内容です。

50人未満の会社が、今日から使えるもの

すでに50人を越えている会社は、選任そのものが先です。探し方は所轄の労働基準監督署か産業保健総合支援センターへ。ここから先は、まだ越えていない会社の話です。

50人未満でも、国は「何もしなくてよい」とは言っていません。

労働安全衛生法第13条の2は、50人未満の事業場について、医師などに労働者の健康管理等の全部または一部を行わせるよう努めなければならないと定めます。義務ではなく努力義務です。

その受け皿が地域産業保健センターです。労働者健康安全機構が全国に設ける窓口で、50人未満の事業場を対象に原則無料でサービスを提供しています。

費用をかけずに医師や保健師の目を入れられます。この窓口を知らないまま使っていない会社が、まだあるように感じています。

急性期の病院にいた23年間、働き盛りの人が突然運ばれる場面を数多く担当しました。付き添って来られた会社の方が「先週まで普通に現場に出ていました」と話される。何度も聞いた言葉です。

これは私の見立てですが、産業医の選任を罰金を避けるための手続きだと捉えている限り、置いても機能しないように感じています。健診の結果を誰が読み、誰が本人に声をかけ、誰が仕事の中身を調整するのか。この流れが決まっていない会社では、医師を1人置いても、増えるのは紙だけです。

逆に言えば、50人未満で産業医を置いていない会社でも、この流れさえ作れば、健康は経営が使える情報になります。選任義務を「まだ関係ない話」ではなく「体制を作る期間」として扱えるかが分かれ目です。10〜49人の事業場で推進者を選んだあと何から動かすかは、安全衛生推進者の選任後で整理した進め方が参考になります。

もし1つだけ持ち帰るなら

今日、総務の方に1つ聞いてみてください。「うちの人数、パートと派遣を入れて何人?」。その数字を誰も即答できないなら、そこが最初の一歩です。

よくある質問

Q. 産業医を選任しなければならないのは、何人からですか?

A. 常時50人以上の労働者を使用する事業場です。労働安全衛生法第13条第1項と労働安全衛生法施行令第5条に定められています。会社全体ではなく、本社・支店・工場・営業所といった事業場ごとに数えます。

Q. パートやアルバイトも、この50人に入れるのですか?

A. 入れます。労働安全衛生法での「常時使用する者」は、勤務日の頻度や勤務時間の多少にかかわらず、常態的に雇用されている者を指します。受け入れている派遣社員も、産業医の選任義務を判断する人数に含めます。

Q. 定期健康診断を受けさせている人数と、同じ数字ではないのですか?

A. 同じとは限りません。定期健康診断の対象になるのは、週の労働時間が通常の労働者の4分の3以上であることなどが目安です。短時間のパートは健診の対象から外れますが、事業場の人数としては数えます。健診の対象者が40人でも、事業場は52人ということが起こります。

Q. 50人を超えたら、いつまでに何をすればよいですか?

A. 産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任します。選任したら、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ報告書を提出します。選任しない場合は、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金の対象になります。

Q. 50人未満の会社は、何もしなくてよいのですか?

A. 労働安全衛生法第13条の2は、50人未満の事業場についても、医師などに労働者の健康管理等の全部または一部を行わせるよう努めることを求めています。全国の地域産業保健センターが、労働者数50人未満の事業場を対象に、健康相談や個別訪問指導を原則として無料で提供しています。

最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ

人数の線は、ある日静かに越えます。繁忙期にパートを3人入れた日。誰も「今日で50人です」とは教えてくれません。

だからこそ、数えるのは今日でいいはずです。

50人の線を越えるのは、採用がうまくいっている会社です。人が採れた会社にだけ、この宿題は来ます。

次は、入った人が残るかです。健診で引っかかった人が誰にも相談できず、半年後に休職して辞める。この経路を止める役が産業医であり、50人未満なら地域産業保健センターです。

体制は、義務を果たす紙ではありません。採った人を残す仕掛けです。

DIALOGは作業療法士23年の知見をもとに、貴社の産業保健体制づくりをご提案します。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

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DIALOGは、人が採れない・辞めてしまう課題を抱える中小企業の採用・定着を支援しています。手段としてご提案しているのが、健康経営優良法人の取得支援です(建設業向けには「ぱとす」による伴走支援も行っています)。健康診断の結果を次の一手にどうつなげるか、体調が落ちた方の作業をどう調整するかなど、本記事のような視点も踏まえてご相談に応じます。貴社の業種・現状に合わせてご相談ください。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、厚生労働省および独立行政法人労働者健康安全機構が公開する一次資料を踏まえた解説です。労働安全衛生法および関係政省令は改正されることがあり、選任義務の判断は事業場の実態によって異なります。実際の対応にあたっては、厚生労働省および所轄の労働基準監督署の最新の公表資料を必ずご確認ください。本記事は特定の予防効果や治療効果を保証するものではありません。個別の人数のカウントや選任手続きの可否については、所轄の労働基準監督署または社会保険労務士等の専門家にご確認ください。体調の判断は医師にご相談ください。