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健康診断・事後措置

建設業の健康診断「事後措置」運用ガイド
要再検査者を追跡する3つの仕組み

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

「健診はやっている、けれど結果が出たあと、何をどう動かせばいいかが社内で曖昧になっている」——北海道の中小建設業の社長から、こうしたお話をうかがうことが増えてきました。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、医療と介護の現場で「健診結果を受け取ったあとに、人がどう動くか」を見続けてきた知見をもとに、北海道の中小建設業に向けた健康経営支援を提供しています。法令で定められた事後措置を、現場が回せる仕組みに落とし込むのが私たちの役割です。

本記事では、要再検査者を追跡する3つの仕組みを、労働安全衛生法の指針と臨床現場で見てきた現実の両面から整理します。読み終えたあとに、社長が「来週からこう動こう」と判断できる材料をお渡しすることが目標です。

この記事の要点

制度の前提: 健康診断後の措置は労働安全衛生法第66条の4・5と「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成8年公示)で枠組みが定められています(出典は記事末尾)。

この記事で扱う論点

建設業の有所見率は全産業平均より高い

厚生労働省の定期健康診断結果報告(令和6年)によれば、定期健診の有所見率は全産業の総数で59.4%、製造業で58.0%、建設業で65.1%という水準でした(出典:厚生労働省 群馬労働局 公表資料)。およそ3人に2人が、何らかの所見ありで結果票を受け取っている計算になります。

有所見率の高さは、健診を受けていないわけではないことを意味しています。むしろ受けた結果、所見が出ている人が他産業より多い。問題は、その先の「事後措置」の動線が社内で曖昧になりやすいことにあります。

有所見率は血圧・脂質・肝機能などの所見を含む広い指標で、即座に治療が必要な状態を示すものではありません。ただし放置すれば中長期的に脳・心臓疾患のリスクが積み上がる項目を多く含んでいます。事後措置は、ここに早めに介入する制度上の仕組みです。

労働安全衛生法が事業者に求めている事後措置

労働安全衛生法第66条の4により、異常の所見があると診断された労働者については、健康診断が行われた日から3か月以内に医師または歯科医師の意見を聴くことが事業者に求められています(出典:厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」)。

同法第66条の5では、医師の意見を勘案して必要があると認めるときは、就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・深夜業の回数の減少などの就業上の措置を講じることが事業者に義務づけられています。健診結果票を本人に渡して終わりではない、というのが法の建てつけです。

言い換えると、「結果通知」「意見聴取」「就業上の措置」の3段階を3か月以内に動かすことが、事業者の責任範囲として明文化されています。中小建設業で曖昧になりやすいのは、このうち2段階目以降です。

23年の臨床現場で見てきた「再検査を後回しにする」構造

医療現場で23年、健診結果を持って受診に来られる方を見てきた経験から感じることがあります。再検査を後回しにする方は、忙しさを理由に挙げることが多いのですが、深層には「悪い結果が出るのが怖い」「仕事に穴を空けたくない」という気持ちが重なっている印象があります。

建設業の現場では、職人さんが現場を1日空けることのインパクトが他産業より大きい構造があります。本人の「行かない」を意思として尊重するだけでは、有所見者が次の健診まで放置されてしまう。仕組みとして再受診の時間を業務時間内に組み込めるかどうかが、追跡の成否を分けるのではないかと感じています。

仕組み1:健診管理表で「全員の状態」を1枚に集める

最初の仕組みは、社員1人ずつの健診結果を1枚の管理表に集約することです。氏名・所属現場・受診日・所見区分(異常なし/要観察/要再検査/要医療)の4列があれば足ります。エクセル1シートで十分です。

多くの中小建設業では、健診結果票が個人ファイルに紙のままバラバラに保管されており、「今この瞬間、要再検査者が社内に何人いるか」を即答できない状態が珍しくありません。1枚にまとめるだけで、社長と総務担当が同じ景色を見られるようになります。

労働安全衛生規則第51条では、健康診断個人票を5年間保存することが定められています。この保存義務を満たしつつ、別途エクセルで一覧化することで、事後措置と保存義務を同じ動線で回せます。

仕組み2:再受診カレンダーで「3か月以内」を逆算する

2つ目の仕組みは、要再検査者ごとに再受診の期日カレンダーを作ることです。健診実施日から逆算して、3か月以内のどの週に再受診を入れるかを、本人と現場責任者と社長が同じ表で確認します。

カレンダーには「いつ・どの医療機関で・誰が同行するか(または単独か)・業務時間内か業務外か」を書き込めるようにします。業務時間内に組み込むかどうかは社内ルールの判断ですが、業務外にすると後回しになりやすい現実があります。

再受診の日が確定したら、本人に紙のリマインドを渡すと完了率が上がる印象があります。スマートフォン通知だけでは現場で埋もれることがあり、紙の方が確実な場面が建設業の現場には残っています。

仕組み3:地域産業保健センターを「橋渡し」に使う

3つ目の仕組みは、産業医のいない50人未満の事業場で使える地域産業保健センターの活用です。同センターは厚生労働省所管で、小規模事業場の事業者と労働者に、医師・保健師による健康相談・面接指導・意見聴取を無料で提供しています(出典:厚生労働省「地域産業保健センター」)。

健診結果に異常所見があった労働者に対する医師の意見聴取は、ここに依頼することで法令上の要件を満たせます。社長が「うちに産業医はいないから無理」と諦めかけている場合、まず最寄りのセンターに電話することから始められます。北海道内にも各支援センターが配置されています。

センターを使う最大の利点は、本人が「会社の人」ではなく「医師」と一対一で相談できる場が作れることです。診察室で本音が出やすくなる構造は、医療現場で何度も観察されてきました。第三者である専門家と一対一になる場が、本人の口を開きやすくする場面を、医療・介護の現場で繰り返し見てきました。

3つの仕組みの優先順位

  1. 健診管理表——まず現状把握。社内の要再検査者の人数を可視化(今週着手可能)
  2. 再受診カレンダー——3か月以内の動線を逆算。業務時間内枠の確保が鍵(今月着手)
  3. 産業保健センター連携——医師の意見聴取の窓口を確保。50人未満は無料(次の四半期)

※全部を同時に動かす必要はありません。順番に1つずつ立ち上げると、社内に混乱なく定着します。

事後措置を「健康経営優良法人」の評価に接続する

健康経営優良法人の中小規模法人部門では、健康診断の事後措置をどう運用しているかが、評価項目の中で重要な位置を占めています。形式的に健診を実施しているだけでなく、結果に基づく就業上の配慮を組織として運用しているかが見られている、と私たちは理解しています。

3つの仕組みは、認定取得を目的にしなくても、明日からの労務リスク管理として価値があります。同時に、申請を視野に入れたときには、書類化の素材として自然に積み上がっていきます。

よくある質問

Q. 健康診断の事後措置は、法律上どこまでが義務ですか?

A. 労働安全衛生法第66条の4により、異常の所見があると診断された労働者については、健康診断が行われた日から3か月以内に医師または歯科医師の意見を聴くことが事業者に求められています。さらに同法第66条の5で、必要があると認めるときは就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・深夜業の回数の減少等の措置を講じることが事業者に義務づけられています(出典:厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」)。

Q. 産業医がいない50人未満の事業場でも、事後措置は必要ですか?

A. 従業員50人未満の事業場は産業医の選任義務はありませんが、健康診断後の医師の意見聴取自体は事業規模に関係なく事業者の義務です。地域産業保健センターでは、50人未満の小規模事業場向けに医師による意見聴取・面接指導を無料で受けられる制度が整っています(出典:厚生労働省「地域産業保健センター」)。

Q. 要再検査と言われた職人が、忙しさを理由に再受診に行ってくれません。どうすれば?

A. 23年の臨床経験で見てきた限り、再検査を後回しにする方は「悪い結果が出るのが怖い」「仕事に穴を空けたくない」のいずれかが多い印象があります。社長や現場責任者から個別に声を掛け、再受診の時間を業務時間内に確保することで動きやすくなる場合があります。地域産業保健センターの面接指導を活用すると、本人に「医師と一対一で相談できる場」を提示しやすくなります。

Q. 事後措置の記録は、どこまで残せばいいですか?

A. 労働安全衛生規則第51条で健康診断個人票を5年間保存することが定められています。意見聴取の記録・就業上の措置の内容も同じ書類に追記しておくと、健康経営優良法人の申請や経審の労働福祉項目の説明資料としても活用しやすくなります。書式は厚生労働省の指針に沿った様式が公開されています。

Q. うちの会社で、何から始めればいいですか?

A. まず直近の健康診断で「要再検査」「要医療」となった人数を、紙の結果票から数え出すことから始めるのが現実的です。人数と部署が見えれば、優先順位の付け方が定まります。全員を一度に動かそうとせず、リスクの高い数名から再受診のスケジュールを業務時間内に組むことが、最初の一歩になると感じています。

最後に — 中小建設業の社長へ

事後措置は、書類を整える側面が目立ちます。けれど本質は、結果票という1枚の紙の先で、職人さんの体と生活がどう動くかを社長が知るための仕組みです。3か月以内という制度上の区切りは、リスクが顕在化する前に介入できる時間枠とも読めます。

DIALOGは、作業療法士23年の臨床経験で培った「健診結果を受けた人がどう動くか」を見抜く目と、労働安全衛生法・健康経営優良法人の最新要件の理解の両方を持って、貴社に最適な事後措置の運用設計をご提案します。書類づくりで終わらず、現場で継続できる仕組みづくりまで一貫して伴走します。

まずは直近の健診結果で「要再検査」「要医療」が何人いるかを数えるところから動いてみてください。そこから先のステップは、私たちと一緒に詰めていきましょう。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、医療・介護の現場で人の生活と仕事を見てきた経験をもとに、北海道の健康経営・介護予防・ウェルネス支援に取り組んでいます。

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健診の事後措置を、社内で回る仕組みに

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DIALOGでは、北海道の中小建設業を対象に、健康診断の事後措置運用から、健康経営優良法人の申請・経審加点までを一貫して伴走しています。社内の有所見者の状況を伺ったうえで、貴社に最適な追跡の仕組みをご提案します。「健診はやっているが、その後が手薄」という入口のご相談から承ります。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年)の臨床経験と、各省庁の最新公開情報を踏まえた解説です。労働安全衛生法・関連規則・指針および健康経営優良法人の認定要件は改正される場合があるため、実際の運用にあたっては最新公表資料を必ずご確認ください。本記事は労務管理上の責任を保証するものではありません。具体的な労務・産業保健・建設業法上の解釈については、社会保険労務士・産業医・地域産業保健センター・建設業労働災害防止協会等の専門家との併用をおすすめします。