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最低賃金×定着

最低賃金 2026|
10月の給与明細を、一番よく見ているのは3年目の社員です

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

御社で3年目の社員は、10月の給与明細を見て何を思うでしょうか。

今年も最低賃金が上がります。全国の加重平均で1,177円。56円の引上げです。

ただし、上がるのは下限だけです。下限が上がって、その上が動かなければ、差は縮みます。その差を最初に見つけるのは、社長ではありません。

代表の三宮は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場に立ってきました。見続けてきたのは「人が働き続けられる条件」です。株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、その知見をもとに中小企業の採用・定着を支援しています。健康経営と採用設計の両面から手を打つのが私たちのやり方です。本稿では今年の最低賃金改定を、賃金実務ではなく「誰が辞めるか」の話として整理します。

この記事の要点

制度の前提: 最高額は東京1,280円、最低額は宮崎1,085円。発効日は異議の申出の状況等により変わる可能性があります(出典は記事末尾)。

10月1日から12月2日の間に、御社の下限が上がります

まず日付です。全国一斉ではありません。

厚生労働省は令和8年9月3日に、全47都道府県で改定額が答申されたと発表しました。引上げ額は54円から65円。発効は10月1日から12月2日の間に、都道府県ごとに順次です。

地域別最低賃金とは、その都道府県で働く人に適用される、1時間あたりの賃金の下限です。言い換えると、これを下回る賃金では働かせられない線のことです。正社員かパートかは問いません。

都道府県改定後改定前引上げ額発効日(予定)
北海道1,131円1,075円56円令和8年10月1日
沖縄(最も遅い)1,086円1,023円63円令和8年12月2日
全国加重平均1,177円1,121円56円—

出典:厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」(令和8年9月3日/別紙「令和8年度 地域別最低賃金 答申状況」)

月給制の社員も対象です。月額を1か月の所定労働時間数で割り、時間額に直して比べます。通勤手当や家族手当、時間外割増賃金は、比較から除きます。

つまり、手当を厚くしても下限のチェックでは効きません。

差が縮むのは、新人と中堅のあいだです

下限が上がると、下限に近い人の賃金は自動的に押し上げられます。動かないのは、その上にいる人です。

仮に御社が北海道で、1年目の時間額を1,080円、3年目を1,180円としていたとします。10月1日以降、1年目は1,131円まで上げる必要があります。3年目が据え置きなら、100円あった差は49円に縮みます。

この計算を、3年目の社員は自分でやります。新人の募集条件は、求人サイトで誰でも見られます。

ここで出やすい結論が「うちは賃金では勝てない」です。ただ、厚労省の調査は違う絵を見せます。

転職入職者が前職を辞めた理由(令和6年・男女別/「その他」を除く上位)

14.1%
男性1位「定年・契約期間の満了」
10.1%
男性2位「給料等収入が少なかった」
12.8%
女性1位「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」

出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」。男女それぞれの集計から「その他の個人的理由」「その他の理由」を除いた順位

賃金は理由のひとつです。ただ、男性で給料の上に来ていたのは「定年・契約期間の満了」でした。女性では労働条件が最も多く、次いで人間関係です。賃金だけが人を辞めさせているわけではありません。

これは私の見立てですが、賃金差が縮んだこと自体より、それについて誰からも一言もなかったことのほうが、中堅には重く残ります。

急性期病院のリハビリ室で、働き盛りの方を数多く担当してきました。「会社は何も言ってくれなかった」という言葉を、何度か聞いています。会社が考えていなかったのではなく、考えたことが本人に届いていませんでした。

ここまでの整理

10月以降、上がるのは賃金の下限だけです。差が縮んだ事実は、説明がなくても本人に伝わります。伝わらないのは、会社がそれをどうするつもりかという部分だけです。

給与明細が届く前に、4つだけ決める

やることは4つです。賃金表をいま作り替える必要はありません。

手順やること時期担当
1自社の事業場がある都道府県の発効日を確認する今週社長
2発効日以降の1時間あたりの賃金を、全員分1枚に並べる今週経理・総務
3差が縮む人・逆転する人を、人数ではなく名前で特定する今週社長
4その社員に、給与明細が届く前に説明を1回入れる発効日まで社長

要は手順3です。

「若手が3人います」では動けません。名前で出すと、その人と何を話すかまで一度に決まります。

手順4で話す内容は3つです。上がったのは法律上の下限であること。賃金の決め方をいつ見直すか。今後どの役割を任せたいか。

金額を約束する必要はありません。時期を言うだけで、宙ぶらりんではなくなります。

なお、賃金表の改定、手当の新設、賃金規程の変更は、就業規則の変更にあたります。ここは社会保険労務士にご相談ください。私たちが扱うのは、その手前の「誰に、いつ、何を話すか」です。

下限が横並びになるほど、賃金以外の欄が効きます

最低賃金が上がると、同じ地域の求人の下限はほぼ同じ額に寄ります。

すると、求人票で差がつく場所が移ります。休日数、労働時間、健康に関する欄です。具体は求人票の書き直せる5箇所に整理しました。建設業向けですが、欄の考え方は業種を問いません。

定着の側でも同じです。賃金で引き止められないなら、残るのは「この会社は自分の体を見ているか」という部分です。

健康経営優良法人2027の申請受付は、2026年8月17日に始まりました。締切は10月16日の17時です。

効くのは認定マークではありません。準備の過程で、健診を受けていない人と、要再検査のまま止まっている人の名前が出ます。

そこが動いていないと、こうなります。健診で引っかかった40代の社員が、誰からも声をかけられないまま1年を過ごす。翌年さらに悪くなり、通院が始まる。現場を外れ、本人が「迷惑をかけている」と感じ、入社10年目で辞めていく。健診の未受診と認定の実質的な期限もご参照ください。

23年の臨床経験で培った視点では、「もう続けられない」と離職する方の多くは、続けたくないわけではありません。職場に迷惑をかけることへの恐れが、続けたい気持ちより前に立つだけです。そして会社の受け入れ態勢が柔軟であれば、続けることを選ぶ人は増えます。

賃金の下限は、法律が決めます。受け入れ態勢は、社長が決められます。

もし1つだけ持ち帰るなら

今週、紙を1枚用意してください。発効日以降の時間額を全員分並べ、差が縮む人に丸をつける。丸がついた人と、給与明細が届く前に5分話す。今年の10月は、それで変わります。

よくある質問

Q. 令和8年度の最低賃金は、いつから上がりますか?

A. 令和8年10月1日から12月2日までの間に、都道府県ごとに順次発効します。全国一斉ではありません。自社の事業場がある都道府県の発効日を、都道府県労働局の公表資料でご確認ください。

Q. 最低賃金は、月給制の社員にも関係しますか?

A. 関係します。月額を1か月の所定労働時間数で割って時間額に換算し、比較します。精皆勤手当、通勤手当、家族手当、時間外割増賃金などは比較の対象から除かれます。

Q. 新人の時給が上がって、中堅社員との差が縮みます。何をすればいいですか?

A. まず、発効日以降の1時間あたりの賃金を全員分並べ、差が縮む人を名前で特定してください。そのうえで、給与明細が届く前に説明を1回入れます。賃金表の改定や手当の新設は就業規則の変更にあたるため、社会保険労務士にご相談ください。

Q. 賃上げの原資がありません。人は採れないままでしょうか?

A. 下限が上がると、同じ地域の求人の下限はほぼ横並びになります。厚生労働省の雇用動向調査でも、前職を辞めた理由で「給料等収入が少なかった」を挙げた男性は10.1%で、最も多い理由ではありません。休日、労働時間、健康診断の受け方など、賃金以外で示せる材料はあります。

Q. 最低賃金を下回っていた場合、どうなりますか?

A. 最低賃金法により50万円以下の罰金が定められています。最低賃金額に達しない賃金を定めた労働契約はその部分が無効となり、差額の支払いが必要です。個別の判断は所轄の労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。

最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ

最低賃金は毎年「いくら上がるか」で語られます。ですが社内で起きるのは、別のことです。

下限が上がり、その上が動かず、差が縮む。そして誰も説明しない。

説明に原資は要りません。紙1枚と、5分だけです。

紙を作り、名前に丸をつけ、給与明細より先に話す。DIALOGは作業療法士23年の臨床知見をもとに、貴社の採用・定着を支援します。健康経営優良法人の取得支援まで、一貫して伴走します。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

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差が縮む社員を名前で特定し、給与明細より先に話す

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DIALOGは、人が採れない・辞めてしまう課題を抱える中小企業の採用・定着を支援しています。手段としてご提案しているのが、健康経営優良法人の取得支援です(建設業向けには「ぱとす」による伴走支援も行っています)。無料相談では、御社の求人票と、いま辞めてほしくない社員の顔ぶれを一緒に見ます。賃金以外のどこで選ばれているか、どこで取りこぼしているか。本記事のような視点も踏まえて、ご相談に応じます。作業療法士23年の臨床知見をもとに、貴社の業種・現状に合わせて一貫して伴走します。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、公的機関の公開資料を踏まえた解説です。本文中の令和8年度の地域別最低賃金額および発効日は、令和8年9月3日時点で厚生労働省が公表した答申状況に基づくもので、答申公示後の異議の申出の状況等により変更となる可能性があります。適用にあたっては、必ず自社の事業場がある都道府県労働局の最新の公表資料をご確認ください。特定の産業に適用される特定最低賃金が別に定められている場合があり、地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が適用される労働者には高いほうの額が適用されます。本文中の時間額の例は、記事のための仮の設定です。賃金表の改定、手当の新設、賃金規程および就業規則の変更、個別の労務判断については、社会保険労務士または弁護士にご確認ください。最低賃金の適用範囲や差額の取扱いに関する行政上の照会は、所轄の労働基準監督署または都道府県労働局におたずねください。健康経営優良法人の認定要件および申請スケジュールは年度ごとに見直されるため、最新情報は認定事務局の公表資料をご参照ください。本記事は採用の成果や認定取得を保証するものではありません。