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育成×定着

資格取得支援制度|
若手の満足度が賃金の次に低いのは「教育訓練」でした

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

入社2年目の社員が「この資格を受けたい」と言ってきたら、受験料は誰が出しますか。

迷いの正体は、1つの分岐が決まっていないことです。会社が取らせるのか、本人が取りたいのか。ここが決まれば、費用も助成も誓約書の扱いも決まります。

代表の三宮は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場に立ってきました。見続けてきたのは「人が働き続けられる条件」です。株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、その知見をもとに中小企業の採用・定着を支援しています。健康経営と育成設計の両面から手を打つのが私たちのやり方です。本稿では資格取得支援を、費用の話ではなく「取ったあとに残るか」の話として整理します。

この記事の要点

制度の前提: 労働基準法第16条は、違約金を定めることと、損害賠償額をあらかじめ決めることを禁じています(出典は記事末尾)。

賃金の次に不満が多いのは、教育訓練でした

厚生労働省の令和5年若年者雇用実態調査は、若年正社員に職業生活の満足度を9項目でたずねています。満足から不満を引いた値が満足度D.I.で、言い換えると、小さいほど不満が近い指標です。

若年正社員の満足度D.I.(9項目のうち抜粋)

項目D.I.
賃金-5.9
教育訓練・能力開発のあり方18.5
人事評価・処遇のあり方27.3
職場の人間関係57.3

出典:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」表21

注目したいのは2番目です。

教育訓練は18.5。人間関係とは約39ポイント離れています。賃金と違い、ここは社外の相場に縛られません。

この項目は「どちらでもない」が38.8%で、9項目中最も高い。不満というより、判断材料がない状態です。

育成を受けた記憶がないから、良いとも悪いとも言えない。私はそう読んでいます。

同じ調査で、育成方法に「自己啓発への支援」を挙げた事業所は33.1%。3社に1社です。資格取得支援は、その中身として最も形にしやすいものです。

最初の分岐は「会社が取らせる」か「本人が取りたい」か

その資格を、会社が業務命令で取らせるのか。本人が希望して取るのか。この区分が先です。

同じ資格でも、どちらに置くかで扱いは変わります。その資格がなければ就けない仕事なら、それは業務そのものです。

Aの場合:会社が取らせるなら、費用は会社が持つ

業務命令で取らせる資格の費用は、会社が負担するのが原則です。仕事に必要なものを仕事として取らせるからです。

ここで使えるのが国の助成です。建設事業主には、人材開発支援助成金の建設労働者技能実習コースがあります。

人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)

出典:厚生労働省 宮城労働局。金額・要件は年度ごとに見直されます。

建設業以外は別のコースが窓口です。所轄の労働局でご確認ください。受講日は地域の工事の繁閑で変わり、道内なら降雪期が候補になります。

一番こぼれるのは、最後の1行です。

計画届は事前提出です。受講後に気づいた分は対象外です。受験の申し込みより前に総務が確認する。その順番だけ決めれば足ります。

そしてAでは、「辞めたら返してもらう」は成り立ちにくくなります。会社が仕事のために取らせた、という業務性が強く出るからです。

Bの場合:本人の希望なら、貸付として設計する余地があります

本人が自発的に受けたい資格は、扱いが変わります。会社が立て替え、一定期間働いたら返済を免除する設計が検討できます。

労働基準法第16条は、労働契約の不履行について違約金を定めることと、損害賠償額をあらかじめ決めることを禁じています。労働局は、実際に生じた損害の賠償請求まで禁じたものではない、とも説明しています。

では返還はどこで線が引かれるのか。中央労働委員会の調整事例集が手がかりです。

解説は、裁判例が次の5点を総合勘案してきたと整理しています。

  1. 労働契約と別の貸付の合意があるか
  2. 受講が本人の任意・自発によるものか
  3. その受講に業務としての性格がどの程度あるか
  4. 返還の免除基準が合理的か
  5. 返済額と方法が合理的か

②と③が、AとBの分岐そのものです。解説は、貸付の目的の業務性の認定が決め手になる傾向がある、とも述べています。

返還を求める形にするなら、本人の自発と貸付の事実が、書類にも実態にも残っている必要があります。

規程の文言は社会保険労務士の領域です。ただ、手前の区分を決めないまま借りても運用は揺れます。

ここまでの整理

AでもBでも、効き目を決めるのは「取ったあとの置き場所」

ここまでは費用の話でした。定着に効くかは別です。取ったあと、社内でその人の役割が変わるかどうかです。

私が23年の臨床経験で培った視点では、人が何かをできるようになるには「使う場面」が要ります。急性期医療の現場で、退院前に歩行の練習を重ねても、家で歩く場面がなければ能力は定着しませんでした。

資格も同じです。合格証を渡して終わりなら、増えたのは本人の市場価値だけです。

だから、受験を認める段階で決めておきます。合格したら、誰の代わりに何を任せるのか。手当をつけるのか、工程を変えるのか。

決めずに費用だけ出すと、こうなります。2年目の社員が受験を申し出て、合格し、それでも任される仕事は変わらない。半年たって「ここにいても資格が増えるだけだ」と判断する。3年目に辞める。費用は会社が出したあとです。

逆に、置き場所が先に決まっていれば、費用の一部を本人が負担しても人は残ります。

求人票の側でも効きます。「支援あり」とだけの欄は、中身がわかりません。対象資格と、会社が出す範囲と、取ったあとに何が変わるかまで書ければ、採用の材料に変わります(求人票の各欄は別記事に)。

もし1つだけ持ち帰るなら

対象資格の一覧より先に、区分を決めてください。その1行が決まれば、費用も助成も誓約書も順番に決まります。

合格後に何を任せるかを、受験を認める日に言葉にしておく。教育訓練への満足度が賃金の次に低いのは、裏返せば、誰も手をつけていない場所が残っているということです。

よくある質問

Q. 費用を会社が出した社員が辞めた場合、返してもらえますか?

A. 「◯年以内に辞めたら全額返す」と金額を先に決める形は、労働基準法第16条が禁じる損害賠償額の予定にあたる可能性があります。中央労働委員会の調整事例集では、裁判例が貸付の有無・任意性・業務性・免除基準・返済方式を総合して判断していると整理されています。個別の可否は弁護士か社会保険労務士へご確認ください。

Q. 資格取得の費用に国の助成はありますか?

A. 建設事業主向けに、人材開発支援助成金の建設労働者技能実習コースがあります。労働局の公表内容では、20人以下で経費助成は対象費用の4分の3、1人10万円が上限。賃金助成は1日9,500円(建設キャリアアップシステム登録者は10,450円)、最大20日分です。計画届は開始日の原則3か月前から1週間前までの事前提出です(登録教習機関等が実施する実習は提出不要)。提出が要る実習で受講後に気づいた回は対象外になります。

Q. 資格を取らせると、転職しやすくなって辞めませんか?

A. 資格そのものより、取ったあとに役割が変わらないことのほうが離職につながりやすいと考えています。令和5年若年者雇用実態調査では、教育訓練・能力開発のあり方の満足度は賃金に次いで低く、「どちらでもない」が38.8%と最も高い。何を任せるかを先に決めることが、引き止めの実質になります。

Q. 就業規則に書くとき、何から決めればよいですか?

A. 対象資格の一覧より先に、会社が取らせるのか本人の希望かという区分を決めることをおすすめします。この区分で費用負担も、助成金の使い方も、返還の話ができるかも変わります。規程の文言は社会保険労務士にご確認ください。

最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ

資格取得支援は、いくら出すかで語られがちです。ですが効くのは、区分が決まっていることと、取ったあとの席が先にあることです。

この2つに原資は要りません。必要なのは、受験を認めるその日に決めておくことだけです。

DIALOGは作業療法士23年の臨床知見をもとに、貴社の採用・定着を支援します。健康経営優良法人の取得支援まで、一貫して伴走します。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

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資格を取った人の席を、受験を認める日に決めておく

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DIALOGは、人が採れない・辞めてしまう課題を抱える中小企業の採用・定着を支援しています。手段としてご提案しているのが、健康経営優良法人の取得支援です(建設業向けには「ぱとす」による伴走支援も行っています)。無料相談では、御社の求人票と、いま辞めてほしくない社員の顔ぶれを一緒に見ます。育成にかけたお金が、どこで社内に残り、どこで外に流れているか。本記事のような視点も踏まえて、ご相談に応じます。作業療法士23年の臨床知見をもとに、貴社の業種・現状に合わせて一貫して伴走します。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、公的機関の公開資料を踏まえた解説です。本文中の助成金の助成率・日額・上限額・計画届の提出時期は、厚生労働省の労働局が公表している令和8年度の内容に基づくもので、要件および金額は年度ごとに見直されます。実際の申請にあたっては、必ず所轄の都道府県労働局またはハローワークの最新の公表資料をご確認ください。本文中の労働基準法第16条および裁判例の整理は、厚生労働省の労働局および中央労働委員会が公開している資料の記載に基づく一般的な説明であり、個別の事案に対する法的判断ではありません。資格取得支援規程・就業規則の作成および変更、費用返還の合意の有効性、個別の労務判断については、社会保険労務士または弁護士にご確認ください。建設キャリアアップシステムの登録および技能者情報の取扱いについては、運営主体の公表資料をご参照ください。本記事は助成金の支給、採用の成果、認定取得を保証するものではありません。