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採用×定着

副業
やっている正社員は40人に1人、やりたい人は13人に1人

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

正社員100人のうち、いま副業をしている人は2人か3人です。

もう一つ仕事を増やしたい人は、8人います。差の5人は、やりたいけれど、やっていない人です。

代表の三宮は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場に立ってきました。見続けてきたのは「人が働き続けられる条件」です。株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、その知見をもとに中小企業の採用・定着を支援しています。健康経営と採用設計の両面から手を打つのが、私たちのやり方です。

本稿では、副業を認める前に確かめたい「通算」の話を整理します。

この記事の要点

前提となる数字: 副業がある人は全国で305万人、5年前より60万人増えました(出典は記事末尾)。

「やっていない」と「やりたくない」は、違います

総務省統計局の「令和4年就業構造基本調査」を見ます。5年に1度の調査で、これが最新です。

非農林業で働く人のうち副業がある人は305万人、割合は4.8%です。

同じ調査には、もう一つの数字があります。「追加就業希望者」です。言い換えると、もう一つ仕事を増やしたい人。全国で493万人、割合7.8%でした。

差が一番大きいのは、正社員です

副業がある人と、もう一つ仕事を増やしたい人の割合(令和4年)

正規・副業あり
2.5%
2.5%
正規・増やしたい
7.7%
7.7%
非正規・副業あり
7.2%
7.2%
非正規・増やしたい
8.4%
8.4%

出典:総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」図5-2・図5-4

非正規では、やっている人と増やしたい人がほぼ重なります。

正規では2.5%と7.7%。3倍の開きです。5年間の伸び幅が最大だったのも、正規の「増やしたい」でした。

正社員の「やりたいけれど、やっていない」には、会社に言い出せていない状態が含まれます。賃金を大きくは上げられない会社にとって、無視できない差です。

北海道は副業がある人が10.5万人、比率4.2%で全国平均を下回ります。これは働く人の側の数字ですが、求人票に条件を書いて出せば、比較の場で目立つ側に回れます。

禁止していても、労働時間は通算されます

副業を禁止しているかどうかと、法律上の通算が起きるかどうかは、別の話です。

労働基準法第38条第1項は、労働時間は事業場を異にする場合も通算すると定めます。厚生労働省のガイドラインは、ここに事業主が異なる場合も含むとしています。

通算の結果、自社の労働が1日8時間または1週40時間を超えるなら、36協定と割増賃金が必要です。さらに時間外と休日労働の合計を、単月100時間未満・複数月平均80時間以内に収める必要があります。

ただし通算は、本人の申告等で把握した時間をもとに行います。

副業・兼業で「通算するもの」と「通算しないもの」

項目通算根拠
労働時間(36協定・割増賃金)する労働基準法38条1項
雇用によらない副業の時間(フリーランス・起業・顧問等)しない労基法が適用されないため
労災認定の負荷・給付基礎日額する改正労災保険法
労災保険のメリット制改正による合算分は影響しない
(自社で起きた業務災害の分は従来どおり)
同上
健診・ストレスチェックの対象者選定しない
(会社の指示で始めた副業は通算が適当)
副業・兼業ガイドライン

出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」ほか。改正労災保険法は2020年9月1日施行

2020年9月1日施行の改正で、1社だけでは労災と認められない場合に、複数の事業場の負荷を総合評価するようになりました。複数業務要因災害といい、対象は脳・心臓疾患などです。

給付の額も変わり、すべての就業先の賃金を合算した額が基礎になります。

ただし、この改正でメリット制の扱いが変わるわけではありません。自社で起きた業務災害は、従来どおり自社の賃金に相当する分が影響します。

合算分が保険料に跳ねることはありません。跳ねるのは、別のところです。倒れた社員は、現場から消えます。

ひとつだけ、通算しないものがあります

ガイドラインにはこうあります。健康確保措置の実施対象者の選定に当たって、副業・兼業先における労働時間の通算をすることとはされていない。

健康確保措置とは、言い換えると、健康診断、面接指導、ストレスチェックと事後措置のことです。

対象は、自社の常時使用する労働者です。短時間労働者は、1年以上使用される見込みと、通常の労働者の4分の3以上の労働時間が要件になります。

会社が指示して始めた副業は別です。ガイドラインは、この場合は通算した時間をもとに措置を行うのが適当だとしています。裏を返すと、本人が自分で始めた副業では、この配慮が働きません。

急性期の病棟にいた23年で、本人より先に家族が異変に気づいていた、という話を何度も聞きました。本人は不調を別々の出来事として感じ、家族はそれを累積として見ているからです。

会社の観察手段は、勤怠と面談と健康診断の3つ。そのうち1つが、制度上この人には届きません。

辞める転換点は、本人が「もう辞めよう」と考えるより前に来ます。動けなくなって、出勤できなくなるからです。

これは私の見立てですが、動ける段階で立ち止まる機会があるかが、その順番を変えます。案内が届かない人がいるなら、そこは会社が動かせる変数です。

ここまでで覚えてほしい1行。働きすぎの判定では足すのに、健康診断の対象を決めるときは足さない。その差が、誰の目にも触れない社員を作ります。

社長が今月できる3つのこと

やることは3つです。規定を替える、届出票を作る、条件を外に書く。

1つ目。モデル就業規則(令和7年12月版)第70条は、勤務時間外に他社の業務に従事できると定めています。

そのうえで、届出に基づき4つの場合に禁止・制限できるとしています。労務提供上の支障、企業秘密の漏洩、信用の毀損、競業です。

解説にはもう1行あります。相談や自己申告を理由に不利益な取扱いはできない、という一行です。

条文の書き方と懲戒の可否は、社会保険労務士または弁護士の領域です。都道府県社会保険労務士会にご相談ください。

2つ目。届出票に書かせるのは、社名や仕事の中身より先に、時間です。相手先の実労働時間を毎回把握しなくても法律を守れる「管理モデル」もあります。

3つ目が、採用に直接効きます。ガイドラインは、副業を許容しているかと、条件付きならその条件を、自社サイト等で公表するのが望ましいとしています。

この3つが、どこで定着に効くか

自社の所定が4分の3未満の社員が、副業先と合わせて週45時間働いているとします。健康診断の案内は、制度上その人には届きません。

睡眠が削られ、朝の集中が落ちます。半年後、遅刻が増えます。本人は理由を言いません。1年後には、辞める側に傾きます。

届出票が1枚あれば、この人の週45時間が手元に残ります。残っていれば、義務の外でも健康診断を案内できます。

採用の側もです。求人票に副業の可否を書けない会社は、応募の段階で比較されます。書いてあれば、面接で運用を説明でき、入社後3か月の面談では実働時間を先に聞けます。

賃金は最低賃金の改定で、休日は年間休日の書き方で比較されます。副業の可否は、そのどちらとも違う軸です。

もし1つだけ持ち帰るなら

就業規則の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という一行を、今週探してみてください。

その一行がある限り、社員は届け出ません。会社が時間を知らないまま、通算だけが進みます。

よくある質問

副業を就業規則で禁止できますか?

厚生労働省のガイドラインは、裁判例を踏まえれば原則として認める方向が適当だとしています。モデル就業規則第70条も、届出に基づき4つの場合に限って禁止・制限できる形です。個別の有効性は社労士または弁護士にご確認ください。

副業をしているパート社員に、自社で健康診断を受けさせる義務はありますか?

ガイドラインは、健康確保措置の対象者の選定にあたって副業・兼業先の労働時間を通算することとはされていない、と明記しています。対象は自社の常時使用する労働者で、短時間労働者は1年以上使用される見込みと、通常の労働者の4分の3以上の労働時間が要件です。ただし会社の指示で始めた副業は、通算した時間に基づく実施が適当とされます。

副業をしている社員が倒れたら、自社の労災保険料は上がりますか?

2020年9月1日施行の改正労災保険法により、1社だけでは労災認定できない場合に、複数の事業場の負荷を総合的に評価して判断するようになりました。ただし、この改正で合算された分が自社のメリット制に影響することはありません。自社で起きた業務災害は、従来どおり自社の賃金に相当する分が影響します。

最後に — 禁止の一行を、届出票の一枚に変える

正社員で副業をしている人は2.5%、増やしたい人は7.7%。差は3倍です。

その差の中にいる人は、今日も御社の現場にいます。

禁止の一行は、副業を止める力を持っていません。止めているのは、報告だけです。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は中小企業の採用・定着、健康経営、介護予防の支援に取り組んでいます。

詳しいプロフィールを見る

禁止の一行を、応募者に見せられる一行に変える

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賃金を大きくは動かせない、それでも人を採りたい・辞めさせたくない会社へ。無料相談でお持ち帰りいただくのは1つです。届出票で集めた情報を、求人票のどの行と入社後3か月の面談のどの質問に返すか。その対応表を、その場で一緒に作ります。DIALOGは、人が採れない・辞めてしまう課題を抱える中小企業の採用・定着を支援しています。手段としてご提案しているのが、健康経営優良法人の取得支援です(建設業向けには「ぱとす」による伴走支援も行っています)。作業療法士23年の臨床知見をもとに、貴社の業種・現状に合わせて一貫して伴走します。なお、就業規則の条文作成・変更手続き・懲戒の可否は社会保険労務士および弁護士の領域です。その部分は、お近くの都道府県社会保険労務士会にご相談ください。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、公的機関の公開資料を踏まえた解説です。就業構造基本調査は5年ごとに実施される標本調査であり、副業者比率・追加就業希望者比率はいずれも非農林業従事者に占める割合です。業種を問わない全国および都道府県の集計であるため、個別企業の傾向を示すものではありません。「追加就業希望者」は現在の仕事を続けながら他の仕事も追加したいと考えている者を指す調査上の区分であり、副業の実行を約束するものではありません。労働時間の通算、健康確保措置の対象者、労災認定の取扱いは、雇用契約の有無・労働時間制度・業務の実態により結論が変わります。就業規則の条文作成および変更手続き、副業・兼業の禁止や制限の可否、懲戒処分の適否、割増賃金の計算については、社会保険労務士または弁護士にご確認ください。健康情報の取得と取扱いは、労働安全衛生法および個人情報の保護に関する法律の定めに従ってください。臨床経験に基づく記述は、急性期医療の現場における患者の観察に限定した所感であり、特定の個人・企業を指すものではありません。本記事は、特定の疾病の予防・改善効果、採用の成果、離職率の改善、法令適合を保証するものではありません。