勤務間インターバルは、残業を減らす制度ではありません。翌朝を守る制度です。
終業から次の始業までに、一定の休息時間を空ける。仕組みはそれだけです。残業の上限は働いた「量」を見ます。インターバルは、働いていない「間」を見ます。
導入している企業は6.9%。制度を知らなかった企業が15.7%あります。
代表の三宮は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場に立ってきました。見続けてきたのは「人が働き続けられる条件」です。株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、その知見をもとに中小企業の採用・定着を支援しています。健康経営と採用設計の両面から手を打つのが、私たちのやり方です。
この記事の要点
- 導入は2019年4月から事業主の努力義務。導入企業は6.9%。30〜99人の会社では、導入予定がない企業の23.9%が「制度を知らなかった」と答えている
- 目安の11時間は、睡眠6時間に通勤と食事を足した時間。11時間を切る日が月6日以上ある人は、睡眠6時間未満が多いという国内研究がある
- 先月の最短の間隔を数える、11時間と9時間の二段階で線を決める、就業規則に書いて面接で伝える。この3つが2年目の離職経路を塞ぎ、健康経営優良法人の項目⑭にも対応する
導入は7%。30〜99人で導入予定のない会社の24%は「知らなかった」
「知らなかった」はどこに多いか(常用労働者30人以上の企業・令和7年調査)
出典:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査 結果の概況」第12表・第13表(15.7%は全企業に対する割合、23.9%は30〜99人のうち導入予定がない企業に対する割合)
勤務間インターバル制度とは、終業時刻から次の始業時刻までの間に一定の休息時間を設け、就業規則や労使協定で定める仕組みです。労働時間等設定改善法により、2019年4月から事業主の努力義務になっています。
導入している企業は、前年の5.7%から6.9%に増えました。30〜99人では6.1%、1,000人以上でも20.1%です。国の目標は2028年までに15%以上。全体像と1週間の測り方は、ワークライフバランスの記事で整理しました。
今回見たいのは「知らなかった」の分布です。導入予定がない企業の理由の1位は「超過勤務の機会が少なく、必要性を感じない」で57.3%でした。一方、30〜99人の企業では、導入予定がない企業の23.9%が「制度を知らなかった」と答えています。1,000人以上では4.6%でした。
知らない会社は、小さい会社に偏っています。社員が面接で他社と比べたとき、差がつくのはこの規模です。
11時間の中身は、睡眠6時間と通勤と食事です
11時間は、睡眠だけの時間ではありません。帰宅、食事、入浴、支度、通勤を足して、眠る時間が6時間残る計算です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、成人の睡眠時間を6時間以上を目安に確保するよう推奨しています。
労働時間が1日9時間以上の男性は、7〜9時間の人と比べて睡眠6時間未満になるリスクが2.76倍です。ガイドは、睡眠を確保する手段に勤務間インターバルを挙げています。
企業規模別・勤務間インターバル制度を導入している企業の割合(令和7年)
出典:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査 結果の概況」第12表(常用労働者30人以上の民営企業。棒の長さは1,000人以上を基準にした比率)
労働安全衛生総合研究所の研究(情報技術業の労働者が対象)では、間隔が11時間以下になるとストレス反応が有意に増えました。11時間を切る日が月6日以上ある状態が続いた人は、睡眠6時間未満が多い。片道1時間以上の通勤者は、起床時の疲労感も増えました。
2021年9月には、脳・心臓疾患の労災認定基準に「勤務間インターバルが短い勤務」が評価対象として加わりました。
これは私の見立てですが、人が「続けられない」と言う前に、朝起きられない日が増えるのだと考えています。私が23年の臨床現場で見てきた限り、仕事を離れる転換点は、本人の決断より先に身体の側に現れるように感じています。
作業療法では、1日を仕事・家事・睡眠といった「作業」の配分として見ます。急性期の病棟で回復を左右していたのは、訓練と訓練の間の休み方だったように感じています。
ここまでで覚えてほしい1行。残業の上限は「量」、インターバルは「間」。11時間は睡眠6時間を残すための数字です。
来週から動かす3つの手順
勤務間インターバルを定着と採用の材料に変える3つの手順
| 手順 | やること | 注意点 |
|---|---|---|
| ① 数える | 先月の勤怠から、社員ごとに「終業から翌始業までの最短の間隔」を出す。11時間を切った日数も数える | 現場集合の会社は、集合時刻と移動を含めて数える。片道1時間以上の通勤者は別に印をつける |
| ② 線を決める | 「11時間は望ましい水準、9時間は最低限確保する水準」のように二段階で定める。守れない日は、翌日の始業を繰り下げるか、重なった時間を労働したものとみなすかを選ぶ | 全社一律が基本。災害など避けられない事由の除外規定を添える。工期や繁忙期は「守れなかった日を数える」で始める |
| ③ 書いて伝える | 就業規則に規定し、社員に周知する。求人票と面接で「終業から翌始業まで最低9時間、目標11時間」と伝える。入社後の面談で11時間を切った日数を聞く | 規定の整備・研修・勤怠管理の機器は、働き方改革推進支援助成金の対象。令和8年度の交付申請期限は11月30日。要件と金額は都道府県労働局で確認 |
出典:厚生労働省「勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル(建設業版)」、同「働き方・休み方改善ポータルサイト」就業規則規定例、同「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」をもとにDIALOG作成
手順①は、平均ではなく最短を見ます。前回は1週間でしたが、ここでは先月1か月分を社員ごとに見ます。
ここからは仮定です。入社2年目の社員が、朝6時集合の現場に1時間かけて通うとします。前夜の片付けと日報で終業が21時なら、間隔は9時間。通勤を引くと、眠れる時間は6時間を切ります。
月に6日続くと、起床時の疲れが残り、朝礼に遅れる日が出ます。本人は「自分の体力の問題」、会社は「若いのに遅い」と受け取ります。
厚生労働省の若年者雇用実態調査があります。初めて勤めた会社を辞めた理由の1位は「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」28.5%でした。勤続1〜10年未満では、この理由が最多です。退職面談で残るのは「時間が合わなかった」の一言になりがちではないでしょうか。
手順③は、この経路を入口で断ちます。就業規則に書いた会社は、面接で「終業から翌始業まで最低9時間空けます」と言えます。入社1年目の面談で11時間を切った日数を聞けば、本人が抱え込む前に会社の側で数字が見えます。
健康経営優良法人2027の中小規模法人部門では、評価項目⑭が「長時間労働の予防と事後対応」に改められました。今年はどちらか一方で適合しますが、来年度からは両方が必要になる予定です。インターバルは「予防」の側です。
長時間労働の事後対応は長時間労働、休日の条件は年間休日、睡眠の中身は睡眠の質の記事で扱いました。
翌朝は、会社が決められます
残業の量は、工期と天候と顧客が決めます。翌朝までの間隔は、会社が決められます。
もし1つだけ持ち帰るなら
先月の勤怠を1人分だけ開いて、終業から翌始業までの最短の間隔を計算してみてください。11時間を切った日が何日あるかが答えです。
よくある質問
朝6時に集合する現場があります。11時間は現実的ですか?
厚生労働省の建設業版マニュアルは、二段階の設定例を示しています。「11時間は望ましい水準、9時間は最低限確保する水準」という形です。朝6時集合なら、前日の終業を19時までにするか、間に合わない日は翌日の始業を繰り下げる規定にします。守れなかった日を数える仕組みを先に作るのが現実的です。
うちは残業がほとんどありません。導入する意味はありますか?
導入予定のない企業の57.3%が同じ理由を挙げています。残業が少ない会社でも、繁忙期や災害対応で間隔が詰まる日はあります。その日に何時間空けるかを先に決めるのが制度の役目です。守れている会社ほど、就業規則に書けば面接で示せます。
導入に使える助成金はありますか?
働き方改革推進支援助成金に勤務間インターバル導入コースがあり、中小企業が対象です。就業規則の整備、研修、勤怠管理の機器やソフトの導入などが対象です。令和8年度の交付申請期限は11月30日ですが、予算の上限で早く締まることがあります。要件と金額は都道府県労働局でご確認ください。
最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ
勤務間インターバルの中身は、「翌朝までに何時間空けるか」の一行です。先月の最短を数え、11時間と9時間の線を決め、就業規則に書いて面接で伝える。この順番が、若手が2年目で辞める経路を塞ぎ、健康経営優良法人の項目にも応えます。貴社の勤怠の実態に合わせた線の引き方を、一緒に設計してみませんか。