急性期のリハビリ室で、私が最初に確かめることの一つは、椅子から立ち上がれるかどうかでした。
数日の安静でも、動く力は思いのほか早く落ちます。働き盛りの方も例外ではありません。体は使った分だけ保たれる。そう感じてきました。
では、御社の30代・40代の社員は、体を使えているでしょうか。
厚生労働省の令和6年国民健康・栄養調査では、運動習慣のある男性は30代で23.4%、40代で23.4%でした。女性の40代は17.2%です。男性なら約4人に3人、女性の40代なら約5人に4人に、運動習慣がありません。運動習慣とは、1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上続けていることです。
代表の三宮は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場に立ってきました。見続けてきたのは「人が働き続けられる条件」です。株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、その知見をもとに中小企業の採用・定着を支援しています。健康経営と採用設計の両面から手を打つのが、私たちのやり方です。
この記事の要点
- 運動習慣のある人は、男性30代・40代が23.4%、女性40代が17.2%。ここが最も少ない年代
- 健康経営優良法人2027の評価項目⑬(運動機会の増進)では、会社が選べる取り組みが16通りある。申請期限は2026年10月16日(金)17時
- 測る、動く時間をつくる、求人票と面接で伝える。この3つが、中途採用の面接と入社後の定着の材料になる
運動習慣のある人は、30代・40代が最も少なくなります
運動習慣のある人の割合(20歳以上・令和6年)
出典:厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査結果の概要」第5章 図11
男女とも、30〜40代で低くなっています。70歳以上の男性は52.6%、女性は42.6%ですから、働き盛りの方が最も低いことになります。
年代別・運動習慣のある男性の割合(令和6年)
出典:厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査結果の概要」第5章 図11(棒の長さは70歳以上の52.6%を100とした比率。70歳以上は省略)
国は「健康日本21(第三次)」で、運動習慣者の割合を40%(年齢調整値)にする目標を掲げています。現状は31.3%です。1日の歩数も、20〜64歳の平均は男性8,564歩、女性7,287歩でした。
30〜40代は、仕事も家庭も手が離せない年代です。これは私の見立てで、調査が理由まで示したものではありません。ただ、運動が嫌いだから続かないのではなく、続ける仕組みがないから続かない。そう考える方が、会社にできることが見えてきます。
評価項目⑬「運動機会の増進」で、会社の関わり方が問われます
健康経営優良法人2027の中小規模法人部門は、評価項目⑪〜⑰のうち4項目以上への適合が求められます。⑬が運動機会の増進で、申請書ではQ26にあたります。
選択肢は16あります。従業員が参加する取り組みと、職場の環境を整える取り組みに分かれます。条件は、従業員の健康課題に基づくこと、継続して行うこと、会社が主体的に関わることです。ポスターの掲示など、情報提供だけでは対象になりません。
Q26の主な選択肢と、小さな会社での始め方
| 選択肢 | 内容 | 始め方の例(DIALOG整理) |
|---|---|---|
| 1 運動機能チェック | 体力測定、転倒等リスク評価、ロコモチェック等を定期的に提供 | 年1回、立ち上がりや片脚立ちを測る |
| 11 職場での集団運動 | ラジオ体操、ストレッチ、ヨガ等の時間 | 朝礼や休憩に組み込む |
| 4 運動奨励イベント | ウォーキング大会等 | 月に1回、歩数を共有する |
| 6 ツールの提供 | 歩数計、アプリ、動画配信 | 無料アプリで歩数を見える化する |
| 7 個別の運動指導 | 状況に合わせた運動メニューの作成等 | 健診で指摘を受けた人に、運動メニューを1枚渡す |
| 2 スポーツクラブ | 提携・利用補助 | 近隣のクラブと提携する |
| 16 同好会・サークル | 運動目的の活動への支援 | 会議室を貸し出す |
出典:健康経営優良法人認定事務局「健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)申請のポイント」Q26をもとにDIALOG作成(選択肢は主なものを抜粋)
申請期限は2026年10月16日(金)17時です。記載できるのは、2025年4月1日から申請日までに実施した内容に限られます。
ここまでで覚えてほしい1行。運動習慣が最も少ない30〜40代に、会社が運動の機会を用意する。それが評価項目⑬になる。
身体機能の低下はロコモティブシンドローム、座り姿勢の影響は座りっぱなし、前回の保健指導は特定保健指導の記事で扱いました。
運動の機会は、入社前と入社後の2か所で見せます
ここで、採用と定着に話をつなげます。
たとえば、42歳で中途入社した社員がいたと仮定します。入社して数か月、朝の立ち上がりや階段で、膝と腰に違和感が出てきました。年齢のせいだと考え、上司には話しません。会社には、体の状態を確かめる機会も、体を動かす時間もありません。半年後の面談で「体力的にきつい」とだけ伝え、退職届を出します。これは説明のための仮定で、実在の事例ではありません。
Q26の取り組みは、入社前後の3か所に、この経路の出口をつくります。
運動機会を、採用・定着の材料にする3つの手順
| 手順 | やること | つながる場面 |
|---|---|---|
| ① 測る | 入社時と年1回、運動機能をチェックする(選択肢1) | 入社1か月面談で、結果を話題にする |
| ② 動く | 就業時間内に、集団で体を動かす時間を置く(選択肢11) | 入社初日から、全員と同じ時間に参加する |
| ③ 伝える | 取り組みを、求人票と面接で具体的に話す | 応募前の判断と、内定承諾前の確認 |
出典:DIALOGによる整理(選択肢の番号は申請書Q26)
23年現場にいた人間として言わせてもらうと、体力の低下は「落ちた日」が分かりません。不便が出てから気づく方が少なくありませんでした。だから、会社が先に同じ物差しで測っておく意味があります。
手順①の結果は、順位づけに使いません。本人が自分の状態を知り、入社1か月面談で「どこか気になる動作はありますか」と聞くきっかけにします。
手順③は、求職者に向けた約束でもあります。求職者は、健康の扱いを求人票と面接から読み取るのではないか。これは私の見立てです。「朝礼後に全員でストレッチを行っています」と書ける会社は、書けない会社と違って見えるはずです。
もし1つだけ持ち帰るなら
朝礼のあとに3分、全員で体を動かす時間を入れてみていただけたら。その3分が、継続する運動機会の始まりです。
よくある質問
ラジオ体操だけでも、評価項目⑬の取り組みに数えられますか?
職場での集団運動の時間(選択肢11)にあたり、取り組みの1つとして数えられます。条件は、従業員の健康課題に基づくこと、継続して行っていること、会社が主体的に関わっていることです。日時と参加人数を記録に残しておくと、申請書に書くときに役立ちます。最終的な判断は、認定事務局の基準に従います。
運動が苦手な社員や、持病のある社員はどうすればよいですか?
参加は任意とし、強さを本人が選べる形にします。通院中の社員は、主治医の指示を優先してください。運動機能のチェックも、結果で優劣をつけるためではなく、本人が自分の状態を知るために行うと伝えます。
申請の期限まであと数日です。今から始めても間に合いますか?
申請期限は2026年10月16日(金)17時です。記載できるのは、2025年4月1日から申請日までに実施した内容に限られ、申請日以降の予定は書けません。すでに行っている朝礼体操や歩数のイベントがあれば、日時と参加人数を確認してください。新たに始める場合は、来年度の申請に向けて今から記録を残します。
最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ
運動習慣の中身は、本人の生活習慣です。会社の仕事は、測る機会をつくり、動く時間を置き、求人票と面接で伝えること。この順番が、中途入社の最初の数か月を支え、健康経営優良法人の評価項目⑬にも応えます。貴社の勤務の組み方に合わせた運動機会の設計を、一緒に考えてみませんか。