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職場復帰支援・メンタルヘルス

建設業の職場復帰支援
メンタル不調で休んだ職人を、社長はどう戻すか

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

「心の不調でしばらく休んでいた職人が、そろそろ戻りたいと言ってきた。現場に戻していいものか、判断がつかない」——中小建設業の社長から、こうした迷いをうかがう機会があります。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で「人が仕事や生活へ戻っていく過程」を見続けてきた知見をもとに、北海道の中小建設業に向けた健康経営支援を提供しています。職場復帰は、まさに作業療法という仕事の中心にあるテーマです。

本記事では、休職した職人を安全に戻すための手順を、厚生労働省の手引きと臨床現場で見てきた現実の両面から整理します。読み終えたあとに、社長が「来週からこう動こう」と判断できる材料をお渡しすることが目標です。

この記事の要点

制度の前提: 厚生労働省は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」で復帰支援の5ステップを示しています(出典は記事末尾)。

この記事で扱うこと

なぜ「戻し方」が経営判断なのか

休職した職人を戻せるかどうかは、人手不足に悩む中小建設業にとって、人材を1人失うか守るかの分かれ目です。採用がますます難しくなる中、すでにいる経験者を戻せる会社は強いと感じています。

私が23年の急性期医療の現場で観察してきた限り、離職する人の多くは続けたくないわけではありません。職場に迷惑をかける恐れと、再発への恐れが、続けたい気持ちより前に立つだけです。

そして決定的だと感じるのは、会社の受け入れ態勢が柔軟であれば、働くことを選ぶ人が増えるという点です。「辞めた人は意欲がなかった」という見方には、経営者が動かせる余地が隠れています。受け入れ方は、社長が直接設計できる経営変数なのです。

厚生労働省が示す職場復帰支援の5ステップ

復帰の手順には、すでに信頼できる型があります。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」が、5つのステップを示しています(出典:厚生労働省)。専門用語が並びますが、中身は「順番に確認していく流れ」です。

職場復帰支援の5ステップ

  1. 休業開始と休業中のケア——診断書を受け取り、休んでいる間も会社が孤立させない
  2. 主治医による復帰可能の判断——本人の復帰意思と、主治医の診断書を確認する
  3. 復帰の可否判断と復帰プランの作成——会社が業務内容を踏まえ、戻し方を設計する
  4. 最終的な復帰の決定——就業上の配慮を本人と話し合い、正式に決める
  5. 復帰後のフォローアップ——再発や再休職を防ぐため、戻ったあとも見守る

※具体的な運用は事業場の規模・状況で変わります。最新の手引きは厚生労働省のページで必ずご確認ください。

言い換えると、復帰は「戻ってきた日がゴール」ではありません。戻る前の準備と、戻ったあとの見守りまでが一続きの流れです。最後のフォローアップを省くと、せっかく戻った人が再び休むことがあります。

建設業が躓きやすい3つのポイント

復帰のお話を社長の方とすると、決まって出てくる3つの悩みがあります。

1つ目は、主治医の「復帰可能」をそのまま受け取ってしまうこと。主治医の判断は、日常生活が送れる水準を指すことがあります。建設現場の高所作業や重機操作に耐える水準とは、別のものさしです。会社側で具体的な業務内容を伝えたうえで、復帰の可否を判断するのが安全だと感じています。

2つ目は、産業医がいないこと。従業員50人未満の事業場は産業医の選任義務がなく、判断を会社だけで抱え込みがちです。地域産業保健センターの無料サービスを使えば、医師の面接や健康相談を受けられます(出典:厚生労働省)。1人で背負わない仕組みが、社長を守ります。

3つ目は、いきなりフルタイムの現場に戻してしまうこと。これは急性期医療の現場でも何度も見てきた構造です。本人は「迷惑をかけまい」と無理を重ね、再発に至ることがあります。短時間勤務や軽作業から少しずつ負荷を戻す設計が、結果として早い定着につながるのではないでしょうか。メンタル不調のサインを早期に見つける視点とあわせて整えると、休む前と戻ったあとの両方を支えられます。

私が急性期OTとして見てきた経験から言うと、職場復帰に失敗するケースの多くは、本人の回復力の問題ではなく、「戻ってくる側」と「迎える側」の間にある認識のずれが原因でした。本人は迷惑をかけまいと無理をし、周囲は「元気そうに見えるから大丈夫」と判断する——このすれ違いが、復帰後2〜3か月の再休職を招きます。

「戻す力」は会社の文化に宿る

復帰支援は、診断書と書類の話に見えて、本質は会社の文化の話だと感じています。「一度休んだ人を、また仲間として迎える会社か」という姿勢が、現場の空気に出ます。

その空気は、休んだ本人だけでなく、まだ休んでいない職人にも伝わります。「この会社は、もし自分が倒れても見捨てない」という安心は、目に見えない定着力になります。脳卒中やがんで休んだ職人を迎える両立支援と地続きの、同じ経営姿勢です。

明日からできる一歩は、就業規則に休職と復職のルールが書かれているかの確認です。ルールが曖昧なまま個別対応を重ねると、社内に不公平感が生まれます。1枚の規程を見るところから動き出せます。

よくある質問

Q. 休職した職人を復帰させる手順に、決まった型はありますか?

A. 厚生労働省が「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」で、5つのステップを示しています。休業開始時のケア、主治医の復帰可否判断、復帰プランの作成、最終的な復帰の決定、復帰後のフォローアップという流れです。中小企業でも、この5段階を土台に自社の手順を組み立てられます。

Q. 主治医が「復帰可能」と書いた診断書があれば、すぐ現場に戻していいですか?

A. 主治医の判断は、日常生活が送れる水準を指していることがあります。建設現場の高所作業や重機操作に耐えられる水準とは、別のものさしです。会社側で業務内容を伝えたうえで、産業医や地域産業保健センターの助言を得て、復帰の可否を最終判断するのが安全です。

Q. 産業医がいない小さな会社は、何を頼ればいいですか?

A. 従業員50人未満の事業場は産業医の選任義務がなく、地域産業保健センターの無料サービスを使えます。医師による面接や健康相談を受けられるため、復帰の可否を会社だけで抱え込まずに済みます。

Q. 復帰直後に、いきなりフルタイムの現場に戻すのは危ないですか?

A. 再発を防ぐには、短時間勤務や軽作業から始める段階的な復帰が安全だと感じています。最初から元の業務量に戻すと、本人が「迷惑をかけまい」と無理を重ね、再休職につながることがあります。負荷を少しずつ戻す設計が、結果として早い定着につながります。

Q. うちの会社で、何から始めればいいですか?

A. まず厚生労働省の手引きを1部用意し、自社の就業規則に休職と復職のルールが書かれているかを確認することから始めるのがよいと感じています。ルールが曖昧なまま個別対応を重ねると、社内で不公平感が生まれます。1枚の規程の確認が、最初の一歩になります。

最後に — 中小建設業の社長へ

職場復帰の支援は、手間のかかる書類仕事の側面が目立ちます。けれど本質は、「育ててきた人を、もう一度仲間として迎え直す」経営判断です。戻す力を持つ会社は、採用難の時代に人材を守れます。

DIALOGは、作業療法士23年の臨床経験で培った「人が仕事へ戻る過程を見抜く目」を持っています。職場復帰支援の制度の理解とあわせ、復帰の仕組みづくりを伴走します。貴社の現場に合った段階的な復帰プランの設計を、一貫してご提案します。

まずは、就業規則の休職・復職のルールを1枚、確認するところから動いてみてください。そこから先のステップは、私たちと一緒に詰めていきましょう。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で人の生活と仕事を見てきた経験をもとに、北海道の健康経営・介護予防・ウェルネス支援に取り組んでいます。

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DIALOGでは、北海道の中小建設業を対象に、職場復帰支援の手順づくりから、段階的な復帰プランの設計・復帰後のフォローアップまでを一貫して伴走しています。現場の状況を伺ったうえで、貴社に最適な復帰支援の進め方をご提案します。「あの職人を戻せるだろうか」という入口のご相談から承ります。

作業療法士として23年間、回復と職場復帰の現場に立ち会ってきた経験をもとに、復帰プランの設計からフォローアップ体制の整備まで、OT視点で一貫してご支援できる点がDIALOGの特徴です。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年)の臨床経験と、厚生労働省の最新公開情報を踏まえた解説です。職場復帰支援の手引きの内容、地域産業保健センターのサービス、関連制度は見直される場合があるため、実際の運用にあたっては厚生労働省の最新公表資料を必ずご確認ください。本記事は復帰の成否や再発防止を保証するものではありません。個別の医学的判断・労務上の解釈については、主治医・産業医・社会保険労務士等の専門家との併用をおすすめします。