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一人親方・個人事業者の安全衛生

建設業の一人親方の安全衛生
頼りにする職人を、社長はどう守るか

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

「いつも来てもらっている一人親方が、最近きつそうだ。もし倒れたら、あの現場は誰が回すのか」——中小建設業の社長から、こうした不安をうかがう機会があります。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で「無理を重ねた人が倒れてから運ばれてくる過程」を見続けてきた知見をもとに、北海道の中小建設業に向けた健康経営支援を提供しています。一人親方の健康をどう守るかは、現場の安全と人材の両方に直結するテーマです。

本記事では、頼りにする一人親方の安全と健康を守る考え方を、2026年に広がった制度と臨床現場の現実の両面から整理します。読み終えたあとに、社長が「来週からこう動こう」と判断できる材料をお渡しすることが目標です。

この記事の要点

制度の前提: 個人事業者等の安全衛生対策は、労働安全衛生法の改正で段階的に強化されています(令和7年法律第33号ほか)。建設業の一人親方は労災保険に特別加入できます(出典は記事末尾)。

この記事で扱うこと

なぜ「一人親方を守る」ことが経営判断なのか

頼りにする一人親方が長く働けるかどうかは、人手不足の中小建設業にとって、現場が回るか止まるかの分かれ目です。代わりの職人がすぐ見つからない時代に、いつもの一人親方を守れる会社は強いと感じています。

私が23年の急性期医療の現場で見てきた限り、自営で働く方ほど、不調を後回しにしがちです。休めば収入が止まる立場では、痛みや疲れを抱えたまま現場に立ち続けてしまいます。

そして見過ごせないのは、一人親方は会社の定期健康診断の対象に入らないという点です。雇われた職人なら健診で拾える異常も、一人親方では誰の目にも触れないまま進みます。気づいたときには、大きな事故や長期の離脱になっていることがあります。

2026年、元請に広がった個人事業者等への安全衛生の考え方

近年は、法律の側でも一人親方を守る流れが進んでいます。労働安全衛生法の改正により、同じ場所で働く個人事業者等についても、危険や健康障害を防ぐ措置の対象として整理が進められています(出典:厚生労働省)。

言い換えると、「うちが雇っているわけではないから関係ない」では済まなくなりつつあります。元請として現場を預かる以上、そこで働く一人親方の安全にも、一定の配慮が求められる時代です。

個人事業者等の保護をめぐる主な流れ

  1. 2023年4月——危険有害な作業に関する情報の周知などが整理(省令改正)
  2. 2025年4月——退避や立入禁止などの措置が、一人親方等も対象に
  3. 2026年4月——個人事業者等を保護の対象として位置づける改正法が段階的に施行(令和7年法律第33号)

※施行時期や対象となる作業は段階的で、適用範囲は作業内容により異なります。最新の内容は厚生労働省のページで必ずご確認ください。

細かな条文をすべて覚える必要はありません。大切なのは、「現場で一緒に働く人は、雇用関係の有無にかかわらず守る対象だ」という考え方を、社長が持っておくことだと感じています。

建設業が躓きやすい3つのポイント

一人親方の安全について社長の方とお話しすると、決まって出てくる3つの悩みがあります。

1つ目は、一人親方の健康状態が見えないこと。会社の健診には入らないため、本人が黙っていれば不調はわかりません。年に一度でも「最近、体の調子はどうですか」と声をかける場をつくるだけで、見える範囲が変わってきます。

2つ目は、労災の備えが本人任せになっていること。一人親方は労働者ではないため、通常は労災保険の対象外です。ただし建設業の一人親方は、団体を通じて労災保険に特別加入できます(出典:厚生労働省)。現場に入る一人親方が特別加入しているかを確認しておくと、万一のときに本人も会社も守られます。労災保険料を下げる安全衛生活動の考え方とあわせて整えると、現場全体の備えが厚くなります。

3つ目は、一人親方ほど不調を言い出しにくいこと。これは急性期医療の現場でも何度も見てきた構造です。「断ったら次から声がかからないかもしれない」という不安が、本人の口を重くします。社長の側から「無理なときは言ってほしい」と先に伝えることが、事故を防ぐ一歩になるのではないでしょうか。

私が急性期OTとして見てきた経験から言うと、現場で大きな事故につながるのは、その日の朝の「いつもと違う小さな不調」を本人も周囲も見逃したときでした。一人親方は申し送りの輪に入りにくく、その小さなサインがいっそう拾われにくい立場にあります。転倒・墜落につながる危険動作を見直す視点と重ねると、守りどころが具体的に見えてきます。

「守る力」は現場の信頼に宿る

一人親方を守る取り組みは、保険や書類の話に見えて、本質は現場の信頼の話だと感じています。「この会社の現場は、外から来た自分のことも気にかけてくれる」という安心は、職人の間に静かに伝わります。

その信頼は、めぐりめぐって会社に戻ってきます。腕のいい一人親方ほど、安心して働ける現場を選びます。守る姿勢は、採用難の時代に「選ばれる現場」になる地味な力です。下請との連携を健康面から整える視点とも地続きの、同じ経営姿勢です。

とはいえ、声かけと労災確認の先にある「現場全体で人を守る仕組み」を、社長ひとりで設計するのは簡単ではありません。DIALOGでは、現場の状況を伺いながら、健康配慮の進め方を一緒に整える支援をしています。

明日からできる一歩は、いつも来てもらう一人親方が労災保険に特別加入しているかを、一度確認することです。未加入なら、団体加入の情報を渡すだけでも、本人を守る具体的な動きになります。

よくある質問

Q. 一人親方に、会社の健康診断を受けさせる義務はありますか?

A. 一人親方は労働者ではないため、会社の定期健康診断の対象には含まれません。ただし義務がないことと、健康状態を気にかけないことは別です。同じ現場で働く以上、声かけや健康相談窓口の案内など、会社にできる配慮はあります。

Q. 一人親方が現場でケガをしたら、誰が補償するのですか?

A. 一人親方は労働者ではないため、原則として会社の労災保険ではカバーされません。ただし建設業の一人親方は、団体を通じて労災保険に特別加入することができ、加入していれば本人の補償につながります。現場に入る前に加入状況を確認しておくと安心です。

Q. 2026年の法改正で、元請は何を意識すればよいのですか?

A. 労働安全衛生法の改正により、同じ場所で働く個人事業者等についても、危険や健康障害を防ぐ措置の対象として整理が進んでいます。施行は段階的で、対象となる作業も限られます。自社の現場に何が当てはまるかは、厚生労働省の最新資料でご確認ください。

Q. 産業医も専門スタッフもいない小さな会社は、何を頼ればいいですか?

A. 従業員50人未満の事業場は、地域産業保健センターの無料サービスを使えます。健康相談や医師の面接を受けられるため、一人親方の健康をめぐる迷いも、会社だけで抱え込まずに相談できます。

Q. うちの会社で、何から始めればいいですか?

A. まず、いつも来てもらう一人親方が労災保険に特別加入しているかを確認することから始めるのがよいと感じています。そのうえで「体調がきついときは無理せず言ってほしい」と一言伝える。この2つだけでも、守る姿勢は十分に伝わります。その先のステップが気になったときは、個別相談で一緒に確認できます。

最後に — 中小建設業の社長へ

一人親方を守る取り組みは、手間が増えるだけに見えるかもしれません。けれど本質は、「現場を支えてくれる人を、長く一緒に働ける相手として大切にする」経営判断です。守る力を持つ会社は、採用難の時代に現場の戦力を手放さずに済みます。

DIALOGは、作業療法士23年の臨床経験で培った「無理を重ねる人の小さなサインを見抜く目」を持っています。一人親方を含めた現場全体の健康管理の考え方と、安全衛生の制度の理解の両面から、仕組みづくりを伴走します。貴社の現場に合った健康配慮の進め方を、一貫してご提案します。

まずは、いつもの一人親方の労災加入を1つ、確認するところから動いてみてください。そこから先のステップは、私たちと一緒に詰めていきましょう。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で人の生活と仕事を見てきた経験をもとに、北海道の健康経営・介護予防・ウェルネス支援に取り組んでいます。

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頼りにする一人親方が倒れずに長く働ける現場は、採用が難しい時代でも工期が止まりません。DIALOGでは、北海道の中小建設業を対象に、一人親方を含む現場全体の健康配慮の設計から、安全衛生の体制づくり・健康相談の窓口整備までを一貫して伴走しています。現場の状況を伺ったうえで、貴社に最適な進め方をご提案します。「うちの一人親方の備えは足りているか」という入口のご相談から承ります。

作業療法士として23年間、人が無理を重ねて倒れる手前の小さなサインを見てきた経験をもとに、現場で働く一人ひとりへの健康配慮を、OT視点で一貫してご支援できる点がDIALOGの特徴です。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年)の臨床経験と、各機関の最新公開情報を踏まえた解説です。個人事業者等の安全衛生対策に関する法令の内容・施行時期・適用範囲、労災保険の特別加入の要件は見直される場合があるため、実際の対応にあたっては厚生労働省等の最新公表資料を必ずご確認ください。本記事は事故防止や補償を保証するものではありません。個別の労務・安全衛生・労災保険の解釈については、社会保険労務士・産業医・建設業労働災害防止協会等の専門家との併用をおすすめします。