「下請けから元請けに上がりたい」「公共工事の入札に手を挙げたい」——北海道の中小建設業の社長と話していて、ここ最近もっとも多く聞く言葉です。そしてその流れで必ず話題になるのが、「健康経営優良法人を取れば、入札で加点になるらしい」というニュースではないでしょうか。
株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、医療と介護の現場で「人と組織が機能し続ける条件」を見続けてきた知見をもとに、北海道の中小建設業に向けた健康経営支援を提供しています。健康経営優良法人の取得と、入札・経審加点・採用力強化への接続を、制度面と現場面の両方からご提案するのが私たちの役割です。本記事では、3つの論点に絞って、社長が来週から動ける材料をお届けします。
この記事でご一緒に考えたいこと
- 健康経営優良法人は「ゴール」ではなく、何かと組み合わさって効く「道具」です
- 建設業ならではの取得ルート(加入健保→健康企業宣言→認定→法人認定)の全体像
- 「加点」が実際にどのくらいの重みなのか、エリアの確認
- 自分でやるか、伴走支援を入れるかの判断軸
- 明日から始められる、最初の一歩
「健康経営優良法人」を取れば入札に勝てる、ではない
多くの社長が最初に勘違いされやすいのが、この点ではないかと感じています。健康経営優良法人は経済産業省が運営する認定制度で、その名のとおり「健康経営に取り組んでいる会社」だと国が認めるものです。けれど、認定を取ったからといって、入札で自動的に勝てるわけではありません。
北海道で確認できる例として、江別市は建設工事入札参加資格の格付基準で「健康経営優良法人の認定を受けている者」に**3点**を加点しています(出典:江別市「建設工事に係る競争入札参加資格格付基準の見直しについて」令和5年度格付から適用)。苫小牧市は「地域貢献活動」の評価項目の中に「健康経営の取組の推進」を含めており、活動1件あたり**5点**を付与(上限15点)しています(出典:苫小牧市工事競争入札参加資格格付要領 第5条)。岩見沢市は健康経営優良法人を含む企業認証制度の市内導入を検討中の段階です(出典:岩見沢市企業認証制度資料)。配点や対象は自治体ごと年度ごとに見直されるため、最新の評価基準は必ず各自治体の公表資料でご確認ください。
総合評価方式で計算される入札評価では、経審の点数、地域貢献、技術提案、過去実績など他の評価項目との合計で勝負が決まります。健康経営加点はあくまで「最後の一押し」の役割です。
言い換えると、「これがあれば勝てる」ではなく「他社と並んだ時に、これがあるかないかで分かれる」というのが、加点の実態に近いと思います。
ただ、ここで諦めるべきではないとも感じています。理由は2つあって、まず「最後の一押し」が必要になる局面は、元請け化を目指す中小建設業にとって意外と頻繁に発生します。次に、認定を取得する過程で社内に整う「健康への取り組みの仕組み」は、入札評価とは別に、若手の定着や中堅の離脱防止にも効くからです。入札加点だけを目的にすると、取得後にもったいない使い方になってしまうと思います。
建設業ならではの取得ルート——全体の段階を把握する
もうひとつ、社長が最初につまずきやすいのが、「結局、何から手をつければいいのか」という問いです。健康経営優良法人の申請ページを開いても、いきなり経済産業省の基準が並んでいて、規模の大きい会社向けに感じられることが多いのではないでしょうか。
建設業の場合、加入している健康保険により利用できる「健康企業宣言」プログラムが異なります。協会けんぽ・各都道府県の健康保険組合・全国建設工事業国民健康保険組合(建設国保)等が、それぞれ独自の健康企業宣言制度を運営しているケースがあります。自社の加入先の窓口に確認するのが確実です。一般的な流れは以下のとおりです。
- ステップ1:自社が加入する健康保険(協会けんぽ・健保組合・建設国保等)の窓口を確認
- ステップ2:チェックシートで自社の健康状態を整理する(多くは無料)
- ステップ3:健康企業宣言の申込書を提出
- ステップ4:宣言した取り組みを社内で実施する(半年〜1年程度)
- ステップ5:実施結果レポートを提出し、基準を満たせば「健康優良企業」の認定証が交付される
- ステップ6:認定取得後、経済産業省の「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」を申請
具体的なステップ・基準点・帳票は、加入する健康保険によって異なります。自社の窓口で最新の手順をご確認ください。
ただ、ステップ4の「社内で実施する」の中身がもっとも難しく、ここで止まってしまう会社が多いとも聞きます。書類は整えられても、現場の職人さんが実際に変わるかどうかは、別の問題だからです。
私の23年の臨床現場の経験から言えるのは、健康に関する仕組みは、「社長が一度宣言して終わり」では現場には届かないということです。月に一度の声かけ、健康診断結果の使い方、ベテランの体調変化への向き合い方——こうした日々の運用を一緒に作っていく時間が、結局のところ取得の本質的な作業になるのではないかと感じています。
「自分でやる」と「伴走支援を入れる」の判断軸
ここで多くの社長が悩まれるのが、「自分で全部やるか、外部に頼むか」の判断ではないでしょうか。これは正解が一つではなく、会社の状況によって変わるところだと思います。
私なりに整理すると、判断軸は次の3つに集約されそうです。
1つ目:総務担当者の余力
社内に総務や労務の専任担当者がいて、月20〜30時間を健康経営の運用に充てられるなら、書類整備中心の支援(中小企業診断士や社労士)で十分動くと思います。一方、社長兼総務という会社の場合、運用まで踏み込む伴走支援が現実的になりそうです。
2つ目:認定を「採用・定着」と接続したいか
認定取得だけが目的なら、書類支援だけで足ります。しかし「若手が3年で辞める現状を変えたい」「ベテランに長く健康に働いてもらいたい」という経営課題と接続したい場合は、現場の運用設計を含む伴走支援が向いていると思います。これは、認定を取った後にもったいない使い方をしないためにも、最初に考えておきたい論点ではないでしょうか。
3つ目:時間的な余裕
元請け化や入札参画の目標が「来年度から」と決まっているなら、逆算で動く必要があります。認定取得には全体で1年程度を見ておくのが現実的です。経済産業省の健康経営優良法人は、毎年の申請更新が必要な制度でもあるので、1度取って終わりではない仕組みであることも頭に入れておきたいところです。
最初の一歩——明日からできる3つの確認
具体的に動き始めるとして、最初に何をすればよいか。私が今、社長と一緒に整理している順序は次の3つです。
確認1:自社の発注元自治体の入札評価項目を確認する
まず、自社が応札する自治体の入札評価項目で、「健康経営」がどのくらいの加点になっているか(または評価項目に含まれているか)を確認します。北海道では江別市・苫小牧市など複数の自治体で評価項目化が進んでいる一方、未導入の自治体も多くあります。導入有無と配点は年度ごとに見直されるため、最新の評価基準は各自治体の公表資料で確認するのが確実です。
確認2:建設国保のチェックシートで現状把握する
建設国保に加入しているなら、支部に問い合わせれば「健康企業宣言」のチェックシートが入手できます。これは無料で、自社の現状を整理するだけでも気づきが多いと聞きます。実施結果レポートで80点以上を取るための「あと何点足りないか」も、ここで見えてきます。
確認3:自社のどこに健康課題があるかを、棚卸しする
書類仕事の前に、現場の実態を一度棚卸しすることをお勧めします。たとえば、過去3年で何人辞めて、その時何歳だったか。健康診断結果で「要再検査」が出ている人は何人いて、その後どうなったか。長時間労働が常態化している部署はあるか——こうした事実の整理が、結果的に書類仕事の質を決めると感じています。
私の臨床経験から言うと、健康の問題は、書類が整っても現場が変わらなければ意味がありません。逆に、現場の実態をまず把握しておけば、書類はあとから自然についてきます。順番を逆にしないことが、結果として早く・安く認定取得に繋がる経路ではないでしょうか。
よくある質問
Q. 健康経営優良法人の取得まで、どれくらいの期間がかかりますか?
A. 建設業の場合、加入する健康保険(協会けんぽ・健保組合・建設国保等)が運営する「健康企業宣言」プログラムを経由するルートを取ることが多く、宣言から認定までに概ね半年から1年、その後に経済産業省の健康経営優良法人を申請する流れになります。全体で1年程度を見ておくと現実的です。
Q. 認定を取ると、すぐに入札で勝てるようになりますか?
A. 認定そのものは「最後の一押し」の役割で、単独で入札を取らせてくれるものではないと感じています。経審点・地域貢献・技術提案などの他要素と組み合わさってはじめて差別化が効く性質のものです。他社と並んだ時に「これがあるかないか」で勝負が分かれる、というイメージです。
Q. 中小企業診断士や社労士に頼むのと、健康経営支援会社に頼むのとでは何が違いますか?
A. 中小企業診断士や社労士は、書類整備や制度設計の専門家として強い支援者です。健康経営支援会社は、認定取得をゴールにせず、現場の健康課題と採用・定着まで含めて1年単位で伴走することが多いと感じています。「認定を取りたいだけ」なら前者、「取得を経営課題の解決と接続したい」なら後者という選び方が現実的に思います。
Q. 取得した後は、毎年更新が必要ですか?
A. 経済産業省の健康経営優良法人認定は、毎年の申請更新が必要な制度です。一度取って終わりではなく、継続して取り組み続けることが前提になります。これは「形だけの認定」を防ぐ仕組みでもあり、運用設計を最初に決めておくことが結果的に楽になります。
Q. うちの会社で、何から始めればいいですか?
A. まず、自社の発注元自治体の入札評価項目で「健康経営」が加点対象になっているかを確認してみてください。次に、建設国保に加入していれば、その支部で健康企業宣言の窓口があるはずです。チェックシートでの現状把握は無料でできます。書類仕事の前に、「自社のどこに健康課題があるか」を一度棚卸しする時間を取るのが、私の感覚では一番効きます。
最後に — 中小建設業の社長へ
健康経営優良法人の取得は、入札加点や採用力強化のための「道具」として機能して初めて、経営に効きます。書類仕事の側面が目立ちますが、本質は「現場で働く人をどう守りながら経営を伸ばすか」を社内で言語化する作業です。書類を整える過程で、自社の人と組織の現状が経営者にとって初めて可視化されることに、本当の価値があります。
DIALOGは、作業療法士23年の臨床経験で培った「人と組織が機能し続ける条件を見抜く目」と、健康経営優良法人・建設国保健康企業宣言・入札加点制度の最新動向の理解を組み合わせ、認定取得から経営効果の創出までを一貫して伴走します。書類代行ではなく、認定取得後も自走できる仕組みづくりが私たちの提供価値です。
「元請け化に向けて健康経営を活用したい」「自社の自治体で加点対象になっているか確認したい」というご相談から、お受けします。現場で起きていることを伺ったうえで、貴社に最適な取得ロードマップをご提案します。