高齢の職人を守る設備投資は、お金をかけるほど手元のお金が減る——多くの社長がそう考えます。けれど今年も、その費用の一部を国が肩代わりする制度が動き出しました。しかも申請には期限があります。
株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきた知見をもとに、北海道の中小建設業に向けた健康経営支援を提供しています。高齢職人の安全対策では、補助金という制度の側面と、現場で実際に効く身体への配慮の両方から、社長が今月から動ける材料をお届けします。
本記事のテーマは、令和8年度のエイジフレンドリー補助金です。言い換えると、60歳以上の職人がいる会社が、転倒・腰痛対策の費用負担を抑えて進めるための国の制度です。受付はすでに始まっています。
この記事の要点
- エイジフレンドリー補助金は、60歳以上の職人がいる中小企業の安全対策費用を補助する制度
- 転倒防止の段差解消、腰痛予防の運動指導、専門家のリスク調査などに使える
- 令和8年度は5月20日受付開始。リスク調査を含む申請は8月31日まで(厚労省・記事末尾に出典)
制度の前提: エイジフレンドリー補助金は厚生労働省が実施。背景には2020年策定の「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」がある(出典は記事末尾)。
この記事で扱うこと
- なぜ今、高齢職人の安全対策に補助金を使うのか
- 令和8年度の制度の中身と、見落としやすい締め切り
- 補助金を実務に乗せるために、社長が今週できる3つの動き
- 「直す前に、まず聞く」——臨床23年から見える順番
なぜ今、高齢職人の安全対策にお金を使うのか
理由は、はっきりしています。今は、安全対策の費用を国に一部肩代わりしてもらえる時期だからです。
厚生労働省のエイジフレンドリー補助金は、60歳以上の高年齢労働者を雇用する中小企業事業者を対象に、高齢の従業員に特有の労働災害を防ぐ設備改善や、専門家による指導の経費の一部を補助する制度です(出典:厚生労働省「エイジフレンドリー補助金」)。背景には、2020年に厚労省が定めた「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」があります。
建設業は、長く働いてきたベテランが現場を支えてきた業種です。だからこそ、その人たちの身体を守る投資は、会社の屋台骨を守る投資と同じ意味を持ちます。「いつかやろう」と思っていた段差の解消や手すりの設置に、今年は国の補助という追い風が吹いています。
令和8年度の中身——3つのコースと、見落としやすい締め切り
令和8年度のエイジフレンドリー補助金は、3つのコースで構成されています(出典:厚生労働省)。
- 専門家総合対策コース——専門家による職場のリスク調査と、その結果に基づく対策
- 熱中症対策コース——暑熱環境での作業に関わる対策
- コラボヘルスコース——健康保険組合などと連携した健康づくりの取り組み
建設業の現場で特に関わりが深いのは、転倒と腰痛への対策です。通路の段差をなくす、滑りにくい床にする、転んだときのけがを軽くする装備を入れる。こうした設備の改善に加えて、全ての労働者を対象にした転倒・腰痛予防の運動指導も対象に含まれています(出典:中央労働災害防止協会)。
ここで見落としやすいのが締め切りです。令和8年度は5月20日に交付申請の受付が始まりました。そして専門家によるリスク調査を含む申請には、8月31日までという期限が設けられています(出典:厚生労働省)。
夏は建設現場が最も動く季節です。気づいたら締め切りが過ぎていた、ということが起きやすい時期でもあります。
ここまでで覚えてほしい1行
補助金は「思い立ってすぐ」では間に合いません。受付は5月、リスク調査を含む申請は8月末まで。動くなら、現場が忙しくなる前の今です。
※補助率・上限額・対象範囲は年度ごとに見直されます。具体的な金額と最新日程は、必ず厚生労働省の公募要領でご確認ください。
社長が今週できる、補助金を実務に乗せる3つの動き
補助金を使うかどうかを決める前に、社内でできる準備があります。3つに分けて整理します。
1つ目は、60歳以上の職人が何人いるかを数えること。この制度は高齢の従業員がいることが前提です。まず人数を把握することが、対象になるかどうかの入口になります。名簿を1枚見るだけで済むはずです。
2つ目は、その職人が現場のどこに不安を感じているかを聞くこと。「最近、どの動きがつらいか」を本人に尋ねてみてください。段差なのか、重い物の上げ下ろしなのか、足元の暗さなのか。直すべき場所は、本人の言葉の中にあることが多いと感じています。
3つ目は、申請の窓口を早めに確認すること。この補助金の申請は、エイジフレンドリー補助金事務センター(日本労働安全衛生コンサルタント会)が受け付けています(出典:同会)。要領や様式は年度ごとに更新されるため、最新版を早めに手元に置いておくと、夏に慌てずに済みます。
これは私の見立てですが——「直す前に、まず聞く」
補助金の話をすると、つい「何を買うか」「どこを工事するか」から考えたくなります。しかし23年現場にいた人間として言わせてもらうと、順番が逆になりやすいと感じています。
急性期医療の現場で患者さんの身体機能が落ちていく過程を見てきた限り、最初に変化するのは、その人が毎日繰り返している動作に対応した部位の柔軟性や可動性です。全身が一律に固くなるのではありません。使い方の偏りに沿って、局所から始まります。
つまり、同じ60歳でも、つらい場所は人によって違います。判断力や視力の保たれ方にも、大きな個人差があります。年齢で一律に「ここを直せば安心」とは決められないのです。
だからこそ、設備を選ぶ前に、本人がどの動作でつらさを感じているかを聞く。専門家によるリスク調査が補助の対象に入っているのは、この「個別に見る」工程に価値があるからだと、私は受け止めています。買い物リストを先に作るのではなく、現場と身体を先に観ることが、お金を活かす近道になります。
もう一点、臨床で繰り返し見てきたことがあります。人が仕事を続けられなくなる転換点は、本人が「もう辞めよう」と決断するより前に、動けなくなって出勤できなくなるという事実が先に来る場合が多いのです。だから「本人が困ったら考える」では遅い。動ける段階で手を打つことが、選択肢を残す方法になります。補助金という追い風がある今は、その「動ける段階」での一手を踏み出しやすい時期だと感じています。
よくある質問
Q. エイジフレンドリー補助金は、どんな会社が対象ですか?
A. 60歳以上の高年齢労働者を雇用する中小企業事業者が対象です。高齢の従業員に特有の労働災害を防ぐための設備改善や、専門家による指導の経費の一部が補助されます。詳しい対象要件は厚生労働省の公募要領でご確認ください。
Q. 具体的にどんな対策に使えますか?
A. 通路の段差解消や滑り止めなどの転倒防止対策、全ての労働者を対象にした転倒・腰痛予防の運動指導、専門家による職場のリスク調査などが対象に含まれます。対象範囲は年度ごとに見直されるため、最新の公募要領でご確認ください。
Q. いつまでに申請すればいいですか?
A. 令和8年度は5月20日に交付申請の受付が始まりました。専門家によるリスク調査を含む申請には8月31日までという期限が設けられています。年度により日程は変わるため、必ず厚生労働省の最新案内をご確認ください。
Q. 補助率や上限額はいくらですか?
A. 補助率や上限額は年度ごとに見直されます。専門家によるリスク調査には手厚い補助が設定されている年度もあります。金額の断定は避けますので、最新の数字は厚生労働省の公募要領で必ずご確認ください。
Q. うちの会社では、何から始めればいいですか?
A. まず自社に60歳以上の職人が何人いて、その方々が現場のどこに不安を感じているかを聞き取ることから始めるのが、無理のないスタートだと感じています。その聞き取りが、補助金で何を直すかを決める出発点になります。
最後に — もし1つだけ持ち帰るなら
もし1つだけ持ち帰るとしたら、「直す前に、まず聞く」という順番です。補助金は手段であって、目的ではありません。目的は、長く現場を支えてきた職人が、これからも安心して働ける状態をつくることです。
DIALOGは、作業療法士23年の臨床経験で培った「人が働き続けられる条件を見抜く目」と、エイジフレンドリー補助金をはじめとする制度の理解の両方を持って、貴社に最適な高齢職人の安全対策をご提案します。補助金で何を直すべきかの優先順位づけから、申請に向けた社内の段取りまで、一貫して伴走します。