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試用期間×定着

試用期間|
「見極めている」つもりで、"辞めない人"を見落としていないか

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

急性期のリハビリでは、患者さんを「できる人・できない人」で分けることはしません。見るのは「どんな条件があれば、その動作が続くか」です。同じ人でも、支えがあれば続き、無ければ崩れるからです。

採用の試用期間も、これによく似ています。多くの会社は、試用期間を「本採用に値するかどうかの合否」で見ています。ですがその見極めは、スキルと勤怠に偏りがちです。そして、辞めずに続く人を見分ける観点は、そこからこぼれ落ちています。

本当に欲しいのは、3か月後に丸をつけることではないはずです。採用にかけたお金と時間が、入社後に定着へつながること。そのために、試用期間で「何を見るか」を組み替える必要があります。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見てきた知見をもとに、中小企業の健康経営・人材定着支援を提供しています。blog-112(従業員エンゲージメント)やblog-108(上司の傾聴)で扱った定着の話を、本稿は「入社直後の見極め」という一点に絞ります。

この記事の要点

背景の前提: 本採用を見送れるかどうかの法的な可否は、個別事情や就業規則の定めにより、社会保険労務士・弁護士の領域です。本稿は法的可否ではなく「続く人の見極め」を扱います(出典は記事末尾)。

新規学卒者の3年以内離職率(令和4年3月卒)

33.8%
大学卒(3年以内)
37.9%
高校卒(3年以内)
54.1%
従業員5人未満の事業所(大卒)

出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」。事業所規模が小さいほど離職率が高い。

試用期間の「見極め」が、スキルと勤怠に偏る理由

試用期間で本採用を判断するとき、多くの会社が見るのはスキルと勤怠です。任せた仕事をこなせるか、遅刻や欠勤がないか。数字や事実で確認しやすいからです。

ここに落とし穴があります。スキルと勤怠は「今できているか」を映しますが、「これから続くか」はほとんど映しません。試用期間の3か月をそつなくこなす人が、半年後に辞意を固めることは起こり得ます。

言い換えると、合否の物差しと、定着の物差しは別ものです。合否だけで見ていると、続く人を見分ける情報が、そもそも集まりません。

早期離職の多くは、スキル不足ではなく「ミスマッチ」

ではなぜ、人は早い段階で辞めるのか。労働政策研究・研修機構が若年者に行った調査では、初めての職場を辞めた主な理由として、次のようなものが挙がっています。

若年者が初職を辞めた主な理由(上位の例)
仕事が自分に合わなかった
人間関係がよくなかった
労働時間・休日・休暇の条件が合わなかった

並べてみると、どれも「能力が足りなかった」ではありません。仕事・人・条件と、本人との間のズレ、つまりミスマッチです。スキルと勤怠の合否では、このズレは見えません。

しかも、この見極めは中小企業ほど効きます。厚生労働省の集計では、事業所規模が小さいほど3年以内離職率が高く、大卒では5人未満の事業所が54.1%にのぼります。採用にかけたコストの一人あたりの重みも、規模が小さいほど大きくなります。

ここまでの整理

試用期間で落とすべきは「スキルが足りない人」ではありません。見極めるべきは、仕事・人・条件と本人との間にズレがないか。ズレは、放っておくと早期離職として表に出ます。

試用期間中に見るべき「続くサイン」4つ

合否の物差しに、定着の物差しを足します。設備投資も新しい制度も要りません。試用期間中の面談や日々のやりとりで、次の4点を見るだけです。

合否で見がちな点「続くサイン」として見るべき点
スキル・勤怠仕事の要求と、本人の今の力にズレがないか(無理な背伸びが続いていないか)
困ったとき、相談できる相手が職場にいるか
疲れ・睡眠・痛みなど、心身の消耗サインが出ていないか
自分の役割と、周りからの期待が、言葉で本人に伝わっているか

この4点は、急性期の現場で「回復が続くか」を見るときの観点とよく重なります。人が力を出し続けられるかは、本人の頑張りよりも、こうした周りの条件に左右されていました。

そして最後の土台が、健康です。心身が消耗していると、どんな見極めも打ち手も届きにくくなります。健康経営は、この土台を実務として整える入り口になります。

もし1つだけ持ち帰るなら

次の試用期間の面談で、合否のチェックに一問だけ足してください。「今、いちばん困っていることは何ですか」。その答えにこそ、続くか辞めるかのサインが表れます。

よくある質問

Q. 試用期間は何か月が一般的ですか?

A. 多くの会社では3か月から6か月です。長さを一律に定めた法律はありませんが、長すぎる試用期間は働く人に不利益となりうるため避けるのが無難です。期間や条件は就業規則に明記しておくのが実務上の基本です。

Q. 試用期間の満了で本採用を見送ることはできますか?

A. 可否は個別の事情や就業規則の定めによります。法的な判断は社会保険労務士や弁護士にご相談ください。本記事は法的な可否ではなく、「辞めずに続く人をどう見極めるか」という定着の視点を扱っています。

Q. 試用期間で何を見れば早期離職を防げますか?

A. スキルや勤怠の合否だけでなく、仕事の要求と本人の力のズレ、相談できる相手の有無、心身の消耗サイン、役割が本人に伝わっているか、の4点です。早期離職の理由の多くはスキル不足ではなくミスマッチだからです。

Q. なぜ中小企業ほど試用期間の見極めが重要なのですか?

A. 厚生労働省の集計では、事業所規模が小さいほど3年以内離職率が高い傾向があります。採用にかけたコストの一人あたりの重みも大きいため、試用期間での見極めが経営に効きます。

Q. 健康経営と試用期間の見極めは関係がありますか?

A. 関係します。続くかどうかは、働き続けられる心身の状態に支えられています。試用期間中に消耗のサインを見て早めに手を打つことは、定着の土台づくりでもあります。

最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ

人材課題を抱える中小企業の経営者様へ。試用期間を「合否の期間」から「続く人を見極め、続くように支える期間」へ組み替えてみてください。DIALOGは急性期医療23年の知見をもとに、貴社の定着づくりにこの視点を落とし込むご提案をします。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

詳しいプロフィールを見る

合否をつけることではなく、採った人が続く会社になることを目的に伴走します

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DIALOGは、人材の定着と健康経営に課題を抱える中小企業を対象に、健康経営優良法人の取得支援をご提案しています(建設業向けには「ぱとす」による伴走支援も行っています)。試用期間での見極めや、健康という土台の整え方など、本記事のような視点も踏まえてご相談に応じます。貴社の業種・現状に合わせてご相談ください。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、厚生労働省・労働政策研究・研修機構が公開する一次資料を踏まえた解説です。統計の数値や制度の詳細・最新情報は各機関の公表資料でご確認ください。試用期間中の本採用の可否など労働法上の判断は、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。