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女性の健康課題×健康経営

女性の健康課題|
「うちは制度がない」は誤解。労働基準法にはもう書かれている

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

女性の健康課題への対応と聞くと、新しい制度を作る話だと受け止める経営者は少なくないかもしれません。

入口は制度づくりではありません。労働基準法には、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときの定めがあります。就業規則に書いていない会社にも義務は生じます。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場に立ってきました。「人が働き続けられる条件」を見てきた知見をもとに、中小企業の採用・定着を、健康経営と採用設計の両面から支援しています。本稿では女性の健康課題を、配慮すべきか否かという議論ではなく、離職コストと認定要件の問題として整理します。

この記事の要点

制度の前提: 生理休暇は労働基準法第68条の定めです。健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)の認定要件にも「⑨女性の健康保持・増進に向けた取り組み」があります(出典は記事末尾)。

まず、金額の話から

経済産業省は令和6年2月、女性特有の健康課題による経済損失の試算を公表しました。社会全体で約3.4兆円です。

女性特有の健康課題による社会全体の経済損失(年間・試算)

3.4兆円
月経随伴症状・更年期症状・婦人科がん・不妊治療の合計
1.9兆円
うち更年期症状。月経随伴症状0.6兆円・婦人科がん0.6兆円・不妊治療0.3兆円
約1兆円
更年期症状のうち離職による損失。追加採用の費用は別に約1,500億円

出典:経済産業省「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」(令和6年2月)

試算の作り方が重要です。症状があるのに対策を取っていない層の人数に、欠勤・パフォーマンス低下・離職率をかけています。

人手不足の会社には、追加採用の欄が一番痛いのではないでしょうか。辞めた分を採り直す費用は、離職の損失とは別に立ちます。

「うちには制度がない」は、実は誤解

女性の健康課題への対応を福利厚生の新設だと考えると、足が止まります。ですが、すでに全事業場に及ぶ義務があります。

論点労働基準法および厚生労働省が示している内容
根拠第68条。生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したとき、就業させてはならない
就業規則会社が独自に設ける休暇ではないため、規定の有無を問わず適用される。休暇日数そのものの上限は置けない(有給とする日数の上限は可)
賃金・単位有給でも無給でも差し支えない。半日または時間単位での請求も可能
証明診断書のような厳格な証明は求めず、同僚の証言程度で差し支えない
罰則第120条に、違反した者を三十万円以下の罰金に処するとの定めがある

社長が決めるのは「制度を作るかどうか」ではありません。すでにある義務を、どう申請できる形にするかです。

見落とされやすいのは日数と証明です。就業規則に「年3日まで」と休暇日数そのものの上限を書いていれば、その部分は法の趣旨に反します。診断書の提出を条件にすることも同じです。

ただし区別が要ります。「有給とするのは年◯日まで」と有給扱いの日数に上限を置くことは認められています。休暇の上限と、賃金の扱いの上限は別の話です。

制度があっても、使われていない

厚生労働省の資料は、利用の実態も示しています。令和2年度の調査で、生理休暇を請求した人の割合は0.9%。請求者がいた事業所は3.3%でした。

同じ資料には、「生理休暇が職場の制度にある」と答えた割合が規模別で並びます。9人以下で25.2%、10〜99人で41.0%、1,000人以上で74.7%です。

法律上の義務は、会社の規模で変わりません。それでも小さい会社ほど、「ある」と伝わっていません。

同じ資料では「症状が強いが我慢している」が66.4%。使いにくい理由も並びます。「男性上司に申請しにくい」61.8%、「利用者が少なく申請しにくい」50.5%、「休んで迷惑をかけたくない」36.2%です。

ここまでの整理

義務はすでにあります。使われていない原因は制度の不在ではなく、申請経路の設計でした。就業規則を書き足す前に、誰に・どの方法で伝えるかを決めるのが先です。

会社側が止まっている理由も、同じ資料に出ている

経済産業省の資料には、企業側の声も載っています。対策で困っていることを聞いた設問です。

企業が挙げた課題割合(複数回答・N=207)
何をすればいいかわからない27.5%
他の従業員への業務負担が生じる20.8%
当事者から症状を聞く手段がない18.8%
セクシュアルハラスメントにならないか不安がある17.9%

従業員側は「申請しにくい」、会社側は「聞き出せない」。同じ場所で両方が止まっています。症状を聞き出す方向に進むと、行き止まります。

聞かなくても使える経路を先に作るほうが、双方の負担は軽くなります。

急性期の臨床現場で見てきた限り、「もう続けられない」と離職を選ぶ方は、続けたくないわけではありませんでした。職場に迷惑をかける恐れが、続けたい気持ちより前に立つ。そういう場面を見てきたように感じています。

受け入れ態勢が柔軟であれば、働き続けることを選ぶ方は増えます。辞めるか続けるかは、本人の意欲だけで決まりません。

10月16日を、締切として使う

健康経営優良法人2027の申請受付が、2026年8月17日に始まりました。中小規模法人部門の締切は10月16日の17時です(経済産業省北海道経済産業局)。

認定要件には「性差・年齢に配慮した職場づくり」という中項目があります。中身は⑨女性の健康保持・増進に向けた取り組みと、⑩高年齢従業員への取り組みです。

⑨は選択項目で、④から⑩までの7項目のうち2項目以上を満たす構成です。すでに⑥仕事と育児または介護の両立支援に取り組む会社なら、⑨は2項目目の候補になります。

何を足すかも、資料に投資額の低い順で並びます。

段階(資料に示されている施策例)中小企業での置き方
理解促進/管理職等への研修・社内での情報提供保険者や自治体の無料セミナーを管理職の会議に組み込む
働き方の調整/休暇を取りやすい環境整備・勤務時間の柔軟化申請先を総務の担当者に固定し、チャットで完結させる
積極投資/相談窓口の設置・受診費用の補助外部の医療相談サービスを、まず窓口として導入する

厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」にも、申請をチャットで送るだけにした例など、経路を短くした取組事例が載っています。

高年齢従業員への取り組み(⑩)は70歳就業確保と再雇用制度、休暇が取られない構造は有給休暇の取得率、認定の入口は健康宣言と申請の期限で扱いました。

もし1つだけ持ち帰るなら

今週、自社の就業規則で生理休暇の条文を確認してください。休暇日数そのものに上限を書いていないか、診断書の提出を条件にしていないかの2点です。どちらも法の趣旨と食い違います。

よくある質問

Q. 生理休暇は、就業規則に書いていなくても取得できますか?

A. できます。労働基準法第68条は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したとき、就業させてはならないと定めています。就業規則の規定の有無を問わず適用され、雇用形態による区別もありません。第120条には、違反した者を三十万円以下の罰金に処するとの定めがあります。

Q. 生理休暇は有給にしなければなりませんか?

A. 厚生労働省が解釈例規をもとに示すQ&Aでは、賃金は有給でも無給でも差し支えないとされます。ただし休暇の日数そのものを就業規則で限定することは許されていません。限定できるのは有給とする日数までです。

Q. 取得の際に、医師の診断書を提出させてもよいですか?

A. 厚生労働省の資料は、手続を複雑にすると制度自体が使われなくなるおそれがあるとしています。原則として特別の証明がなくても休暇を与えること、求める場合でも同僚の証言程度で差し支えないことが示されています。請求は半日や時間単位でも可能です。

Q. 健康経営優良法人2027で、女性の健康の項目は必須ですか?

A. 必須ではありません。⑨女性の健康保持・増進に向けた取り組みは、「性差・年齢に配慮した職場づくり」に置かれた選択項目です。④から⑩までの7項目のうち2項目以上を満たす構成です。要件は年度ごとに見直されます。

Q. 男性の健康課題は対象外なのですか?

A. 対象外ではありません。経済産業省の試算では、男性特有の健康課題による経済損失は約1.3兆円と示されています。ただし男性の更年期障害は、病態が複雑でまだ十分に解明されていないとの注記があります。

最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ

女性の健康課題は、気配りの問題として語られやすい領域です。ですが経済産業省と厚生労働省が示していたのは、離職と再採用の費用、そして法律上すでに生じている義務でした。DIALOGは急性期医療23年の知見をもとに、貴社の採用・定着の設計をご提案します。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

詳しいプロフィールを見る

辞めずに働き続けられる条件を、制度と現場の両面から設計します

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DIALOGは、人が採れない・辞めてしまう課題を抱える中小企業の採用・定着を支援しています。手段としてご提案しているのが、健康経営優良法人の取得支援です(建設業向けには「ぱとす」による伴走支援も行っています)。就業規則の条文の見方、申請経路の置き方、認定要件の選択項目の組み立てなど、本記事のような視点も踏まえてご相談に応じます。作業療法士23年の臨床知見をもとに、貴社の業種・現状に合わせて一貫して伴走します。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、経済産業省・厚生労働省が公開する一次資料を踏まえた解説です。本記事は医学的な診断・治療に関する助言を行うものではありません。症状に関するご相談は医療機関にご確認ください。就業規則の個別の記載や、生理休暇の運用が法令に適合しているかの判断は、社会保険労務士または所轄の労働基準監督署にご確認ください。健康経営優良法人の認定要件・申請スケジュールは年度ごとに見直されるため、最新情報は各機関の公表資料をご参照ください。本記事は認定取得を保証するものではありません。