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採用×法改正

就活セクハラ|
10月1日義務化、学生の3割が経験・企業の相談は0.7%

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

就職活動中にセクハラを受けたと答えた学生は、約3割でした。

一方、過去3年間にその相談があったと答えた企業は、0.7%です。どちらも厚生労働省の同じ調査の数字です。

代表の三宮は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場に立ってきました。見続けてきたのは「人が働き続けられる条件」です。株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、その知見をもとに中小企業の採用・定着を支援しています。健康経営と採用設計の両面から手を打つのが私たちのやり方です。本稿では2026年10月1日から義務になる求職者等セクハラ対策を扱います。法令の解説ではなく、応募者が消える経路として整理します。

この記事の要点

制度の前提: 対象は企業規模を問わずすべての事業主です。適用除外や猶予はありません(出典は記事末尾)。

相談が来ていないことは、起きていないことではありません

厚生労働省の令和5年度委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査」です。企業調査の有効回答7,780件。学生側は2020〜2022年度卒業の1,000名です。

学生の経験と、企業に届いた相談

30.1%
インターンシップ中に経験
31.9%
就職活動中に経験
0.7%
相談があった企業

出典:厚生労働省 令和5年度委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)」

同じ調査で、パワハラの相談があった企業は64.2%、セクハラは39.5%。就活等セクハラだけが0.7%です。桁が2つ違います。

学生が言えないからです。

何もしなかった理由の最多は「何をしても解決にならないと思ったから」48.6%。次が「就職活動において不利益が生じると思ったから」18.9%。

採用の場では、相手はまだ社員ではありません。声を上げる先も、上げたあとの守られ方も、本人からは見えていない。

私が23年の臨床経験で培った視点では、訴えの少なさと状態の良さは別物です。急性期医療の現場では、痛みを口にしない患者さんほど動く範囲が小さくなる場面を何度も見ました。記録に残るのは、言葉にされたものだけです。

学生が挙げた企業規模は「99人以下」が最も多い

同じ調査は、被害を受けた学生に志望先の規模をたずねています(複数回答)。

被害を答えた学生が挙げた志望先の従業員規模(インターンシップ中・n=228・複数回答)

99人以下
37.7%
最多
100〜299人
27.2%
27.2%
1000人以上
21.5%
21.5%
300〜999人
17.5%
17.5%

出典:同上(複数回答のため合計は100%を超える/「分からない」11.0%は非掲載)。就職活動中(n=235)でも「99人以下」が35.3%で最多

これは発生率ではありません。複数回答のため、合計は100%を超えます。それでも「大企業の話」で片づく数字ではない。私はそう読んでいます。

就職活動中に受けた場面の上位はこうです。リクルーターと会ったとき32.8%。内々定を受けた後26.0%。SNSや就活マッチングアプリでのやりとり23.8%。志望先企業の従業員との酒席の場20.4%。

行為者も同じ方向です。インターンシップ中は「インターン先で知り合った従業員」47.4%が最多。就職活動中はOB・OG訪問で知り合った従業員38.3%、リクルーター等37.0%。

人事部の会議室ではありません。一対一になった場所です。

中小企業なら、高校生の職場見学、合同説明会のあとの個別対応、知人の紹介で会う面談、現場見学の送り迎え。どれも一対一になりやすい場面です。

採用担当が社長ひとりの会社ほど、その時間は長くなります。行為者の責任は当然として、それだけでは終わりません。会社の目が届かない時間の長さという、構造の問題も同時にあります。

ここまでの整理

10月1日から義務になる11項目を、どの順で動かすか

ここからが実務です。根拠は改正男女雇用機会均等法。令和8年(2026年)10月1日から、求職者等へのセクハラ防止措置が義務になります。

「求職者等」は、求人に応募する人だけではありません。厚生労働省のリーフレットは、採用に資する活動に参加する人も含むと示しています。実習を受ける人も対象です。

対象の場面は採用面接、就職説明会、社員への訪問、インターンシップなど。SNS等オンラインも含まれます。

措置は11項目。中小企業が動かす順に並べ直します。

区分義務の内容(要約)最初の一手
1. ルールを決める ③求職活動等のルールを明確化し、労働者と求職者等に周知 面談の時間帯・場所・同席者・連絡手段を1枚に決める
2. 方針を出す ①行ってはならない旨の方針を周知、②厳正対処の方針と内容を周知 朝礼と社内文書で1回、書面で残す
3. 窓口を開く ④窓口を定め求職者等に周知、⑤担当者が適切に対応できるように 既存窓口の対象に求職者等を足し、募集要項に書く
4. 起きたときを決める ⑥事実確認、⑦被害者への配慮、⑧行為者への措置、⑨再発防止 受けた人と判断する人を先に決めておく
5. 守る ⑩プライバシー保護を周知、⑪協力を理由に不利益な取扱いをしない旨を周知 就業規則と募集要項の両方に1行ずつ入れる

社内向けの対策を持つ会社は、3から始められます。窓口の新設は要りません。いまある窓口の対象に求職者等を足すだけです。

ただし違いが1つ。周知先に求職者等が入ります。応募者が知らない窓口は、無いのと同じ。募集要項に窓口名と連絡先を書くまでが一組です。

そして1は、他のハラスメント対策には無い項目です。会社が知らないところで一対一にならない段取りを、先に決める。予算も人員も要りません。

応募者は、理由を言わずに消えます

インターンシップ中に被害を受けた学生の18.4%が、その企業への就職活動をやめています。心身への影響の最多は「就職活動に対する意欲が減退した」。インターンシップ中34.6%、就職活動中40.0%。

辞退の連絡は来ません。来ても理由は書かれません。

会社側で起きるのは、別の現象です。説明会の予約が埋まらない。日程調整が止まる。内々定の返事が来ない。数字の上では「今年は反応が悪かった」で終わります。

相談は0.7%しか届かない。経験は3割ある。この差が、応募数と内定承諾率の側に乗ります。

定着にもつながります。求職者等に示した線は、入社後にそのまま社内の線になります。採用の場のルールが配属先で緩めば、1年目の社員は同じことを別の場所で見ます。

健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)の認定要件には、評価項目⑮「心の健康保持・増進に関する取り組み」があります。これは私の見立てですが、10月1日の対応は認定準備と同じ机で組むと手数が減ります。

面接で健康のことをどこまで聞けるかは厚生労働省の14事項で整理しました。面接の設計と内々定後の離脱防止も別記事にあります。伴走支援は「ぱとす」でご案内しています。

もし1つだけ持ち帰るなら

面談のルールを、A4で1枚にしてください。時間帯、場所、同席者、連絡手段。この4つです。

誰かを疑う話ではありません。一対一になる条件を会社が決めているか、という話です。10月1日まで、あと2週間あまり。

よくある質問

Q. 従業員が少ない会社でも、10月1日からの義務の対象ですか?

A. 対象です。厚生労働省のリーフレットは、令和8年10月1日から事業主が「必ず講じなければなりません」と示しています。企業規模による適用除外や猶予は設けられていません。

Q. 「求職者等」には、どこまでの人が含まれますか?

A. 求人に応募する人のほか、採用に資する活動に参加する人、実習を受ける人です。場面は採用面接、就職説明会、社員への訪問、インターンシップなど。SNS等オンラインも対象です。

Q. 社内の相談窓口があれば足りますか?

A. 窓口があるだけでは足りません。措置では、窓口を定めたうえで「求職者等に周知する」ことが求められます。応募者が知らない窓口は使われません。募集要項に窓口を書くまでが一組です。

Q. 何から手をつけるのが現実的ですか?

A. 求職活動等に関するルールの明確化からです。リーフレットでは面談時間及び場所の指定、実施体制、SNSの種類の指定が例示されています。時間帯・場所・同席者・連絡手段の4つを1枚に。規程の文言は社会保険労務士にご確認ください。

最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ

就活セクハラは、悪い会社の話として語られがちです。ですが数字が示すのは、会社の目が届かない場面が残りやすい、という構造でした。

構造なら、先に決めれば変えられます。方針を出し、面談のルールを決め、窓口を応募者に伝える。10月1日はその締切です。

DIALOGは作業療法士23年の臨床知見をもとに、貴社の採用・定着を支援します。健康経営優良法人の取得支援まで、一貫して伴走します。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

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理由を言わずに消えていた応募者を、止める

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DIALOGは、人が採れない・辞めてしまう課題を抱える中小企業の採用・定着を支援しています。手段としてご提案しているのが、健康経営優良法人の取得支援です(建設業向けには「ぱとす」による伴走支援も行っています)。無料相談では、御社の採用の流れを応募から入社まで一本の線で見ます。どの場面が一対一になっていて、どこで応募者が理由を言わずに離れているか。本記事のような視点も踏まえて、ご相談に応じます。規程の文言は社会保険労務士、採れる・辞めないの導線はDIALOG。作業療法士23年の臨床知見をもとに、貴社の業種・現状に合わせて一貫して伴走します。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、公的機関の公開資料を踏まえた解説です。本文中の施行日・対象範囲・講ずべき措置の内容は、厚生労働省が公表しているリーフレットおよび指針の記載に基づく一般的な説明であり、個別の事案に対する法的判断ではありません。実態調査の数値は厚生労働省の令和5年度委託事業の報告書(概要版)に基づくもので、学生側の調査はインターネット調査による1,000名分のサンプルであり、母集団全体の発生率を示すものではありません。就業規則・ハラスメント防止規程・募集要項の作成および変更、個別の労務判断については、社会保険労務士または弁護士にご確認ください。ハラスメントに関する個別のご相談は、お近くの都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)でも受け付けています。健康経営優良法人の認定要件は年度ごとに見直されます。申請にあたっては、必ず「ACTION!健康経営」ポータルサイトの最新の公表資料をご確認ください。本記事は採用の成果、認定取得、法令適合を保証するものではありません。