ユースエール認定は、申請しない会社にこそ使い道があります。
私はこの認定基準を、国が数字で書いた「若手が辞めない会社」の定義だと読んでいます。線は、新卒者などの3年離職率が20%以下。従業員5〜29人の事業所の全国実績は、高卒54.6%でした。
代表の三宮は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場に立ってきました。見続けてきたのは「人が働き続けられる条件」です。株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、その知見をもとに中小企業の採用・定着を支援しています。健康経営と採用設計の両面から手を打つのが私たちのやり方です。本稿ではこの認定基準を、申請書の要件ではなく自社の定着の診断表として読み直します。
この記事の要点
- ユースエール認定は常時雇用300人以下の中小企業が対象。5つの数字で若手の定着を測る
- 線は新卒者などの3年離職率20%以下。5〜29人規模の全国実績は高卒54.6%・大卒52.0%
- 有給は「取得率70%以上または年10日以上」。30〜99人規模の平均取得日数11.3日なら日数の側で届く
制度の前提: 根拠は若者雇用促進法。認定は厚生労働大臣、申請先は都道府県労働局です(出典は記事末尾)。
「20%以下」は、どの会社と比べた線なのか
まず、線の位置を確かめます。ユースエール認定は、若者の採用・育成に積極的で雇用管理が優良な中小企業を厚生労働大臣が認定する制度です。対象は常時雇用する労働者300人以下の事業主です。
中核にあるのが認定基準3。直近3事業年度に新卒者などとして正社員に就職した人の離職率が、20%以下であること。厚生労働省が令和7年10月に公表した学卒者の離職状況と並べます。
事業所規模別・新規高卒就職者の3年以内離職率(令和4年3月卒)
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」。全体は高卒37.9%・大卒33.8%、大卒の5〜29人は52.0%。最下段の認定の線は、自社の新卒者等を対象とする別算定のため参考として併記
ひとつ、正確にしておきます。この統計と認定基準は、同じ土俵の数字ではありません。統計は全国の卒業者を追った離職率、認定基準は自社の新卒者などの離職率です。
それでも差は無視できません。小規模な事業所の実績は、線の倍以上にあります。
小さな会社には緩和もあります。直近3事業年度の採用者数が3人または4人なら、離職者1人以下で基準を満たします。3人採って1人辞めても、計算上の33%で弾かれません。
基準は「制度を作ったか」ではなく「去年の数字」を見る
認定基準3は、離職率を含めて5つの要件でできています。
| 認定基準3の要件 | 求められる水準 | 自社のどの記録から出るか |
|---|---|---|
| 新卒者などの離職率 | 直近3事業年度で20%以下(採用3〜4人なら離職1人以下) | 採用者名簿と退職者名簿 |
| 月平均所定外労働時間 | 前事業年度20時間以下、かつ月60時間超の正社員がゼロ | 勤怠記録 |
| 年次有給休暇 | 取得率70%以上、または平均取得日数10日以上 | 年次有給休暇管理簿 |
| 育児休業 | 直近3事業年度で男性取得者1人以上、または女性75%以上 | 育休の取得記録 |
| 人材育成 | 「人材育成方針」と「教育訓練計画」を策定している | 書類そのもの |
出典:厚生労働省 事業主向けリーフレット「ユースエール認定制度」(認定基準3)
5つのうち、書類を作れば満たせるのは一番下の1つだけ。残りの4つは、去年までに現場で起きたことの記録から出ます。就業規則を整えても、前年度の勤怠記録は変わりません。
ただし、思っているより届いている項目もあります。年次有給休暇です。
有給休暇の認定基準と、企業規模30〜99人の全国実績
出典:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」(令和6年1年間)。30〜99人は付与17.4日・取得11.3日
認定基準は「取得率70%以上、または平均取得日数10日以上」です。この「または」が効きます。
取得率で見ると、平均は64.9%。線の手前です。ところが取得日数なら平均11.3日で、基準の10日を超えます。どちらのものさしを使うかで、同じ会社の合否が分かれます。
育児休業も同じです。男女ともに取得対象者がいない場合は、制度が定められていれば要件を満たします。くるみん認定企業は、認定年度を含む3年度間この要件が不問です。
有給の規模別のねじれは有給休暇|制度を一番入れているのは中小企業で扱っています。
これは私の見立てですが、5つの数字が並ぶ順番には意味があります。離職率が結果で、残りの4つは原因側です。休めない、残業が長い、育てる筋道がない。その先に、3年で辞める人がいます。
ここまでで覚えてほしい1行。認定基準5つのうち4つは、去年の勤怠記録と休暇記録から出る数字です。今日決めたことが反映されるのは、来年の申請です。
認定を取らなくても、この数字は応募者に聞かれたら答える義務がある
若者雇用促進法には、青少年雇用情報の提供という仕組みがあります。新卒者を募集する企業は、応募者等から求めがあれば、次の3類型それぞれ1つ以上を提供する義務を負います。企業規模は問いません。
| 類型 | 含まれる項目(抜粋) |
|---|---|
| (ア)募集・採用に関する状況 | 直近3事業年度の新卒採用者数・離職者数、男女別人数、平均勤続年数 |
| (イ)職業能力の開発・向上に関する取組 | 研修の有無と内容、自己啓発支援、メンター制度、キャリアコンサルティング制度、社内検定等 |
| (ウ)企業における職場定着に関する取組 | 前事業年度の月平均所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得者数(男女別)、管理職に占める女性割合 |
出典:厚生労働省「職場情報の提供制度」ほか
見比べてください。認定基準4(青少年雇用情報の公表)が求める項目と、ほぼ同じです。
認定を取る会社は、この数字を先に出します。取らない会社は、面接で聞かれてから出します。出す時期が違うだけです。
では、(ウ)の数字が弱いと何が起きるか。有給の平均取得日数が5日の会社を考えます。体調の変化に気づいても、休んで受診する日を作れません。健診で引っかかった通知は、机の引き出しに入ります。
半年後に症状が出て、まとまった休みが必要になります。復帰の段取りを相談する相手がいないまま、退職届が出ます。その1人が抜けた翌年、平均勤続年数と離職者数が動きます。次の応募者には、その数字を渡すことになります。
面接で「有給はどれくらい取れていますか」と聞かれた時、11日と答えられるか、5日と答えるしかないか。内定承諾が返ってくるかは、このあたりで決まっていると私は見ています。
リハビリ室で、退院間近の患者さんに「仕事は戻れそうですか」と聞いてきました。答えは二つに割れます。戻る先の段取りを具体的に話せる人と、「たぶん、なんとか」で止まる人です。後者は、たいてい自分の状態を職場に伝えられていませんでした。伝える先がない職場は、休職より前に人を失い、その分だけ勤続年数と有給の数字を落とします。
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認定を取りに行く場合の窓口
申請先は、事業主の住所を管轄する都道府県労働局です。認定後も毎事業年度終了後1か月以内に、適合状況の書類を提出します。取って終わりではありません。手続きそのものは労働局にご相談ください。私たちがお役に立てるのは、その前段にある数字のほうです。
よくある質問
Q. ユースエール認定は、小さな会社でも申請できますか?
A. 対象は常時雇用する労働者300人以下の事業主で、規模の下限はありません。直近3事業年度の採用者数が3人または4人なら、離職者1人以下で基準を満たします。
Q. 認定を取ると、助成金がもらえますか?
A. 認定そのものへの給付金はありません。示されているのは、ハローワークでの重点PR、認定企業限定の就職面接会、認定マークの使用、日本政策金融公庫の融資利率引き下げ、公共調達の加点、自治体の優遇措置の6つです。
Q. 育児休業の要件が一番厳しそうです。取得者がいない場合はどうなりますか?
A. 男女ともに取得対象者がいない場合は、育休制度が定められていれば要件を満たします。くるみん認定を受けている企業は、認定年度を含む3年度間この要件が不問です。
Q. 申請の相談は、どこにすればよいですか?
A. 申請先は事業主の住所を管轄する都道府県労働局です。確認書類については、労働局またはハローワークへお問い合わせください。
まとめ — 申請しない会社の使い方
もし1つだけ持ち帰るなら、これです。認定基準の5つを、自社の数字で埋めてください。
採用者名簿、勤怠記録、年次有給休暇管理簿、育休の記録。この4つから出ます。半日あれば埋まります。
線を越えていれば、申請を検討する価値があります。越えていなければ、どの項目が足りないかが数字で出ます。応募者に聞かれたら答えることになる数字と、同じものです。
申請するかどうかは、そのあとで決めれば間に合います。