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採用×定着

退職面談
辞めた理由の最多は「その他の個人的理由」。本当の理由は届いていない

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

直近で辞めた社員の退職理由を、社長は一言で言えますか。

「一身上の都合」。退職届にそう書かれていたら、話はそこで止まります。聞けば引き止めに見える。聞かなければ、次の採用に返す材料が残らない。

代表の三宮は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場に立ってきました。見続けてきたのは「人が働き続けられる条件」です。株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、その知見をもとに中小企業の採用・定着を支援しています。健康経営と採用設計の両面から手を打つのが、私たちのやり方です。

本稿では、退職面談で何を聞き、その答えをどこに返すかを整理します。使うのは厚生労働省の一次資料です。

この記事の要点

前提となる数字: 令和6年の離職率は14.2%、離職者数は約719万人でした。退職面談の実施を求める法令上の義務はありません(出典は記事末尾)。

国の調査でも、辞めた理由の最多は「その他の個人的理由」でした

会社に届く退職理由が曖昧なのは、自社だけの問題ではありません。

厚生労働省の「令和6年 雇用動向調査」を見ます。転職した人に、前の職場を辞めた理由を尋ねた調査です。会社ではなく、辞めた本人が答えています。

転職入職者が前職を辞めた理由(令和6年・男女別)

理由男性女性
その他の個人的理由20.2%24.3%
定年・契約期間の満了14.1%10.7%
給料等収入が少なかった10.1%8.3%
職場の人間関係が好ましくなかった9.0%11.7%
労働時間、休日等の労働条件が悪かった8.6%12.8%
会社の将来が不安だった7.4%5.1%

出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」表5。ほかに「その他の理由(出向等を含む)」男13.5%・女7.8%、「会社都合」男5.2%・女5.3%などがあります

最多は「その他の個人的理由」。男性20.2%、女性24.3%です。ほかのどの項目より大きい数字でした。

次に多いのは、男性が「定年・契約期間の満了」14.1%、女性が「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.8%。会社が手を打てる項目は、その下に並びます。

若手ほど、理由は残っていません

年齢で分けると差がはっきりします。

「その他の個人的理由」と答えた割合(令和6年)

男性(全年齢)
20.2%
20.2%
女性(全年齢)
24.3%
24.3%
男性 20〜24歳
28.0%
28.0%
女性 20〜24歳
35.3%
35.3%

出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」表5。19歳以下では男性39.3%、女性32.4%

20〜24歳の「その他の個人的理由」は、男性28.0%、女性35.3%。19歳以下になると男性39.3%まで上がります。

若い人ほど、辞めた理由が用意された項目に収まっていません。国の調査に答える場面でもそうなら、会社に伝える場面ではなおさらだろうと考えています。

前年からの上げ幅が最も大きかったのは、男性が「会社の将来が不安だった」で2.2ポイント。女性は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」で1.7ポイントでした。

「個人的理由」の中に、健康の理由は隠れます

この調査の選択肢には、「結婚」「出産・育児」「介護・看護」があります。健康や病気を指す項目はありません。

体調を理由にした離職は、この調査では独立した数字として残りません。

では、体調を理由に辞める人はどれくらいいるのか。厚生労働省の「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」に数字があります。両立支援とは、言い換えると、治療を受けながら働き続けられるように会社が仕組みを整えることです。

病気を抱えた労働者の退職に関する調査結果

38%
病気休職制度を新規に利用した人のうち、復職せず退職した割合
18%
メンタル不調で、休職を申請せず退職する者がいるとした企業
15%
身体疾患で、休職を申請せず退職する者がいるとした企業

出典:厚生労働省「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン(令和6年3月版)」。原調査は平成25年 労働政策研究・研修機構「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」

連続1か月以上の療養が必要な社員について、「病気休職を申請せず退職する者がいる」と答えた企業があります。メンタルヘルス不調で18%、その他の身体疾患で15%でした。

そして、病気休職制度を新しく使った人のうち38%が、復職せずに辞めていました。

制度を使わずに辞める人がいます。使っても戻らない人がいます。

退職届に病名を書く義務はありません。だから会社の手元に残るのは、「一身上の都合」の6文字になります。

同じガイドラインには、糖尿病の患者の約8%が通院を中断しているという数字も載っています。中断の理由で最も多いのは「仕事(学業)のため、忙しいから」でした。通院をやめる人が、退職の話を先に切り出すとは限りません。

急性期医療の現場で23年、働き続けるかどうかの分かれ目にいる方を担当してきました。「もう続けられない」と職場を離れる人が、続けたくないわけではない。そう感じた場面が何度もあります。

私が担当してきた範囲では、前に立つのは職場に迷惑をかけるという恐れでした。もう一度倒れたら、という恐れでした。続けたい気持ちは、その後ろに回ります。

これは私の見立てですが、会社の受け入れ方が柔軟であれば、働くことを選ぶ人は増えます。辞めるかどうかは、本人の意欲だけで決まるものではないと考えています。

ここまでで覚えてほしい1行。「一身上の都合」は退職の理由ではなく、理由を聞く場がなかったという記録です。

退職面談を、次の採用のために使う3つの手順

順番があります。場を分ける、聞く、返す。この3つです。

手順やること使うもの
1. 場を分ける引き止めの面談と、理由を聞く面談を別の日にする。聞き手も直属の上司以外に変える退職届、面談の日程表
2. 聞く「いつ、何が起きて、最初に迷ったか」を時系列で聞く。質問は5問まで質問票(下記5問)
3. 返す出てきた理由を、求人票の記載・面接で伝える内容・入社後3か月の面談に反映する求人票、面接シート

1つ目。引き止めと聞き取りを同じ場でやると、答えは当たり障りのないものになります。日を分け、直属の上司ではない人が聞く。それだけで出てくる言葉が変わります。

2つ目。聞く内容は5問までに絞ります。

4つ目を入れる理由は、前の章のとおりです。体調の話は、聞かれなければ出てきません。

ただし4つ目は、答えるかどうかを本人が決める質問です。病名は聞きません。聞いた内容は次の採用設計にだけ使うこと、評価にも再雇用にも影響しないことを、質問の前に伝えてください。

3つ目が本題です。聞いた内容を、採用の側に返します。

たとえば「通院で出勤時間をずらしたかったが、言い出せなかった」という答えが出たとします。返す先は3つあります。

求人票には、通院や体調不良のときに誰へどう申し出るかを書く。面接では、その運用を口頭で伝える。入社後3か月の面談で、同じ質問を先に聞く。

面接で応募者の既往歴や通院歴を尋ねるのではありません。会社の側の運用を伝えるだけです。入社後3か月の面談でも、4つ目の質問の扱いは退職面談と同じにします。

ここまでやって、退職面談は費用ではなく投資になります。

本人の同意のもとで健診の結果を一緒に見る場があれば、4つ目の質問は退職時ではなく在職中にできます。健診の運用は健康診断 未受診、辞める前の兆しの読み方は従業員エンゲージメント、自社の離職率の数え方は離職率に書きました。

よくある質問

退職面談は法律で義務づけられていますか?

義務ではありません。退職時の面談を求める規定は労働基準法にも労働安全衛生法にもありません。実施するかどうか、誰がどの時期に行うかは、会社が自分で決める運用です。

退職する人に理由を聞いても、本当のことを話してもらえますか?

引き止めの場と分けるだけで答えは変わります。評価にも再雇用にも影響しないこと、目的は次に入る人のための改善であることを、最初に言葉にして伝えてください。聞き手を直属の上司以外にするのも有効です。

国の調査で「その他の個人的理由」が最多とは、どういう意味ですか?

厚生労働省の令和6年雇用動向調査では、転職した人が前職を辞めた理由の最多が「その他の個人的理由」でした。男性20.2%、女性24.3%です。選択肢に健康や病気を指す項目はないため、体調を理由にした離職は独立した数字として残りません。

体調のことを聞くと、プライバシーの問題になりませんか?

健康情報は慎重な扱いが必要です。厚生労働省の両立支援ガイドラインは、健康診断で把握した場合を除き、本人からの申出を出発点としています。退職面談では病名を聞かず、時間の調整が必要だった時期があったかを尋ねてください。

最後に — 退職届の6文字を、次の求人票の1行に変える

国の調査でも、辞めた理由の最多は「その他の個人的理由」です。男性20.2%、女性24.3%。20代前半では、さらに大きくなります。

会社が受け取る「一身上の都合」も、同じ形をしています。

もし1つだけ持ち帰るなら、次に退職者が出たとき、引き止めの面談とは別の日を1回とってください。

その1回で聞けた言葉が、次の求人票に書く1行になります。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は中小企業の採用・定着、健康経営、介護予防の支援に取り組んでいます。

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退職届の6文字を、次の採用の1行に変える

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毎年のように若手を採り、毎年のように辞められている会社へ。無料相談でお持ち帰りいただくのは1つです。貴社の退職者から聞いた理由を、求人票のどの行と、面接のどの場面に返すか。その対応表を、その場で一緒に作ります。DIALOGは、人が採れない・辞めてしまう課題を抱える中小企業の採用・定着を支援しています。手段としてご提案しているのが、健康経営優良法人の取得支援です(建設業向けには「ぱとす」による伴走支援も行っています)。作業療法士23年の臨床知見をもとに、貴社の業種・現状に合わせて一貫して伴走します。なお、退職手続きや就業規則の解釈は社会保険労務士の領域です。その部分は、お近くの都道府県社会保険労務士会にご相談ください。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、公的機関の公開資料を踏まえた解説です。雇用動向調査は主要16大産業の常用労働者5人以上の事業所を対象とした標本調査であり、辞めた理由の割合は転職入職者のうち前職雇用者で調査時在籍者について集計したものです(自営業からの転職入職者を含みません)。業種を問わない全国集計であるため、個別企業の傾向を示すものではありません。治療と仕事の両立支援のためのガイドラインに引用された退職・休職に関する数値は、平成25年に実施された調査に基づくものであり、最新の状況とは異なる場合があります。臨床経験に基づく記述は、急性期医療の現場における患者の観察に限定した所感であり、特定の個人・企業を指すものではありません。退職手続き、就業規則の解釈、解雇・退職勧奨の適否、休職制度の設計については、社会保険労務士または弁護士にご確認ください。健康情報の取得と取扱いは、労働安全衛生法および個人情報の保護に関する法律の定めに従ってください。本記事は、特定の疾病の予防・改善効果、採用の成果、離職率の改善、法令適合を保証するものではありません。