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健康経営×定着

ストレスチェックの集団分析
社員と一緒に直した会社は1割未満でした

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

ストレスチェックの集団分析は、点数の悪い部署を見つけるための表ではありません。

結果が届くと、まず部署ごとの数字を見比べたくなります。そして一番悪い部署の責任者を呼ぶ。この順番で読むと、改善はそこで止まりやすいように感じています。

厚生労働省の令和6年の調査では、集団分析を実施した事業所のうち、結果を活用したのは76.8%でした。ところが、その中で「従業員参加型の職場環境改善」をしたのは9.4%です。50〜99人の事業所に限ると4.1%でした。

結果は使っている。けれど、働いている本人たちと一緒には直していない。これが今の平均的な姿です。

代表の三宮は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場に立ってきました。見続けてきたのは「人が働き続けられる条件」です。株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、その知見をもとに中小企業の採用・定着を支援しています。健康経営と採用設計の両面から手を打つのが、私たちのやり方です。

この記事の要点

結果を「活用した」会社でも、社員と直したのは1割未満です

活用の中身を見ると、会社側で決めやすい対策が上位に並びます。

ストレスチェックと集団分析の実施状況(令和6年)

75.4%
実施した事業所のうち、集団分析をした
76.8%
分析した事業所のうち、結果を活用した
9.4%
活用した事業所のうち、社員参加型で改善した

出典:厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」結果の概要 第3表・第4表

集団分析の結果の活用内容(複数回答・活用した事業所=100)

残業削減・休暇取得
48.5%
48.5%
相談窓口の設置
41.2%
41.2%
上司・同僚に支援を求めやすい環境
36.7%
36.7%
業務配分の見直し
34.8%
34.8%
社員参加型の職場環境改善
9.4%
9.4%

出典:厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」結果の概要 第4表

どれも大切な対策です。ただ、会社が決めて上から配る形だと、現場の「何が困っているか」とずれることがあります。

しかも、結果を「特に活用していない」事業所も19.5%ありました。受けた社員から見れば、答えたのに何も変わらない状態です。

これは定着の話につながります。同じ調査で、メンタルヘルスの不調で1か月以上休んだ人か、辞めた人がいた事業所は12.8%でした。別の調査では、転職した人に前の会社を辞めた理由を聞いています。「職場の人間関係が好ましくなかった」は、男性9.0%、女性11.7%でした。

結果表は「止まっている支援」を探す地図です

見るべきは、部署の順位より「支援」の欄です。

厚生労働省の実施マニュアルにある「仕事のストレス判定図」は、2つの図でできています。仕事の量と、自分で仕事を進められる度合いの図。そして、上司の支援と同僚の支援の図です。言い換えると、仕事の重さだけでなく、困ったときに頼れる人がいるかを数字にした表です。

たとえると、雪道の運転に近い話です。道が悪い区間を責めても、雪は減りません。どこで除雪が止まっているかを見つけるほうが、早く走れるようになります。

読むときの約束ごとが1つあります。分析の単位が10人を下回ると、個人が特定されるおそれがあるため、原則として分析しません。小さな会社は、10人以上のまとまりで見る工夫が要ります。

この点は、2027年4月から規則にも明記されます。集団分析は「特定の個人を識別できない方法で」行うと定められました。さらに2028年4月からは、50人未満の事業場でもストレスチェックそのものが義務になります。

ここまでで覚えてほしい1行。集団分析は、悪い部署を探す表ではなく、頼れる人が足りない場所を探す地図です。

これは私の見立てですが、責任者を呼び出す読み方には落とし穴があります。高ストレスの部署の長に「改善しなさい」と伝えると、犯人探しが始まりやすいと考えています。責任者は数字を守ろうとし、部下は次から本音で答えなくなるかもしれません。

作業療法では、本人の力だけを鍛えるのではなく、道具や段取り、周りの人の手の貸し方も一緒に整えます。環境が変わると、同じ人でもできることが増えるからです。23年現場にいた人間として言わせてもらうと、職場もこれに近いように感じています。

社員参加の改善は、30分の話し合い1回から始められます

社員と一緒に直すことには、公的な裏付けもあります。厚生労働省の実施マニュアルには、ある事業場の事例が載っています。社員参加型の検討会を開いた職場のほとんどで、翌年に上司の支援などの得点が改善していました。

大がかりな研修から始める必要はありません。結果を受け取ったら、次の3つを回します。最後の確認は3か月後です。

社員と一緒に1つ直す3つの手順

手順やること注意点
① 共有する会社全体か10人以上のまとまりの結果だけを、朝礼や会議で5分で伝える部署の順位は出さない。個人の結果には触れない
② 話し合う30分で「今うまくいっていること」と「1つ変えたいこと」を出してもらう厚生労働省のヒント集(メンタルヘルスアクションチェックリスト)を叩き台にする
③ 確かめる1つに絞って担当と期限を決め、3か月後に同じメンバーで変化を確認する決めたことと結果を1枚に残す

出典:厚生労働省「ストレスチェックの『集団分析』を適切に実施しましょう!」、こころの耳「職場改善のためのヒント集(メンタルヘルスアクションチェックリスト)」をもとにDIALOG作成

ここからは仮定です。入社1年目の社員がいる部署で、「同僚の支援」の数字が下がっていたとします。手を打たなければ、その社員は困りごとを抱えたまま、誰にも聞けずに半年を過ごすかもしれません。会社がそれを知るのは、退職の申し出を受けた日です。

話し合いで「新人が質問できる時間を毎日10分決める」と1つ決めておけば、退職面談で初めて理由を聞く前に、手を打てます。

この1枚の記録は、採用の場でも使えます。面接で「毎年、社員と一緒に職場を1つずつ見直しています」と言えるようになります。入社後の働きやすさを、言葉だけでなく事実で示せます。

健康経営優良法人2027の中小規模法人部門でも、取り組みの「評価・改善」は必須の項目です。集団分析から1つ直して確かめる流れは、そのまま申請の材料にもなります。

辞めた理由の聞き方はラインケアと退職面談、50人未満の会社の準備はストレスチェック義務化の記事で扱いました。

数字を返すことが、次の回答を正直にします

集団分析の価値は、点数そのものより、結果が社員に返ってくることにあります。答えたら職場が1つ変わった。その経験が、翌年の回答を本音に近づけます。

もし1つだけ持ち帰るなら

今年の集団分析の結果から、「上司の支援」と「同僚の支援」の2つの欄だけを、去年と並べてみてください。下がっている場所が、最初の30分を使う場所です。

よくある質問

社員が10人未満の会社でも、集団分析はできますか?

10人を下回る集団は、原則として分析しません。ただ厚生労働省は、全57項目の合計点の平均や「仕事のストレス判定図」など、個人が特定されない方法なら実施できるとしています。

集団分析は義務ですか?

努力義務です(労働安全衛生規則第52条の14)。2027年4月からは「特定の個人を識別できない方法で」行うことが規則に明記されます。

健康経営優良法人の申請に関係しますか?

2027年度の中小規模法人部門には「50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施」という評価項目があります。法令に沿った実施が条件で、Webのセルフチェックは認められません。

最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ

ストレスチェックは、受けさせた時点ではまだ半分です。結果を社員に返し、一緒に1つ直して、3か月後に確かめる。その積み重ねが、「この会社は声を聞いてくれる」と思える理由になります。集団分析の結果を、定着と採用の材料に変える組み立てを、一緒に設計してみませんか。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は中小企業の採用・定着、健康経営、介護予防の支援に取り組んでいます。

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人が採れない、入社しても辞めてしまう会社へ。DIALOGは、人が採れない・辞めてしまう課題を抱える中小企業の採用・定着を支援しています。手段としてご提案しているのが、健康経営優良法人の取得支援です(建設業向けには「ぱとす」による伴走支援も行っています)。ご相談では、ストレスチェックや健診の結果をどう職場に返すか、面接でどう伝えるかを、本記事のような視点も踏まえて一緒に確認します。作業療法士23年の臨床知見をもとに、貴社の業種・現状に合わせて一貫して伴走します。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、公的機関の公開資料を踏まえた解説です。集団分析と活用の割合は令和6年労働安全衛生調査(常用労働者10人以上の民営事業所が対象)の結果です。横棒グラフは活用内容の一部を抜き出したもので、棒の長さは割合をそのまま表しています。表「社員と一緒に1つ直す3つの手順」はDIALOGによる整理です。「部署の順位から読むと改善が止まりやすい」「責任者の呼び出しは犯人探しにつながりやすい」「結果を返すことが翌年の回答を本音に近づける」は筆者の見立て・所感であり、調査が示したものではありません。実施マニュアルの事例は1つの事業場の取り組みで、同じ結果を保証するものではありません。入社1年目の社員が困りごとを抱えたまま退職を申し出る経過は、説明のための仮定であり、実在の事例ではありません。臨床現場に関する記述は、著者の所感を述べたもので、特定の個人を指すものではありません。ストレスチェックの実施体制や個人情報の取り扱いなど個別の判断は、実施者(医師・保健師等)や産業保健総合支援センター等にご確認ください。本記事は、離職率の改善や認定取得を保証するものではありません。