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採用・定着

男性育休|公表義務は300人超。
でも学生の6割は実績がない会社を避ける

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

男性の育児休業の取得率は50.9%。2025年の調査で、初めて半分を超えました。

この取得率を公表する義務があるのは、従業員300人超の会社だけです。中小企業に義務はありません。

ところが、18〜25歳の学生の61.0%は、男性育休の実績がない会社には就職したくないと答えています。

義務の線は300人。見られている線は、人数とは関係がありません。

代表の三宮は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場に立ってきました。見続けてきたのは「人が働き続けられる条件」です。株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、その知見をもとに中小企業の採用・定着を支援しています。健康経営と採用設計の両面から手を打つのが、私たちのやり方です。

この記事の要点

「公表義務がない」と「見られていない」は、別の話です

男性育休をめぐる3つの数字

50.9%
男性の育児休業取得率(令和7年度調査)
42.9%
従業員5〜29人の事業所の男性取得率
61.0%
男性育休の実績がない会社に就職したくない若者

出典:厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」付属統計表第12表/厚生労働省イクメンプロジェクト「若年層における育児休業等取得に対する意識調査(速報値)」

取得率の公表が義務なのは、2025年4月から従業員300人超の会社です。実際に公表している事業所は26.2%で、5〜29人では24.2%にとどまります。

一方で、就職活動をする若者の69.7%は、企業の育休の取得状況が会社選びに影響すると答えています。就職したい気持ちが高まる情報の1位は「男性の育休取得率」で、33.4%でした。

取得率が高い会社のイメージは「安定している」41.5%が1位です。言い換えると、若者は育休の数字を、福利厚生ではなく会社の体力として読んでいます。

公表の有無と実績の有無は、別の話です。義務がなくても、面接で「男性で育休を取った人はいますか」と聞かれれば、答えは出ます。

育児休業の規定がある事業所は、5〜29人で81.3%です。産後パパ育休の規定があるのは66.2%でした。3社に1社は、出生直後の休みの規定がないまま、採用の場に立っています。

何日なら回るか。制度の節目は14日です

申出が来てから段取りを考える会社は、その日に固まります。日数は本人が決めるものです。会社が先に決めておくのは、何日なら回るかの段取りです。

男性の育児休業の取得期間(令和6年度に復職した男性=100)

5日未満
6.8%
6.8%
5日〜2週間未満
14.1%
14.1%
2週間〜1か月未満
28.0%
28.0%
1か月〜3か月未満
30.3%
30.3%
3か月以上
20.9%
20.9%

出典:厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」事業所調査 結果概要 表12(3か月以上は各区分の合計。不明0.1%を除く。四捨五入のため各区分の合計は100に揃わない)

取った男性の48.9%は、1か月未満で戻っています。山は2週間〜1か月未満と、1〜3か月未満の2つです。

ここに、2025年4月から制度の節目ができました。出生後休業支援給付です。両親がともに14日以上の育児休業を取ると、最大28日間、給付率が13%上乗せされます。

通常の育児休業給付67%と合わせて80%です。休業中は社会保険料が免除され、給付は非課税のため、手取り10割相当になります。

男性が育休を取らなかった理由の1位は「収入を減らしたくなかった」で39.9%でした。2位は「取得しづらい雰囲気」22.5%、3位は「自分にしかできない仕事があった」22.0%です。

14日分の段取りを全員に用意しておくと、1位の理由は制度がほぼ消します。残る2つは、会社が消す側です。

産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に4週間まで、2回に分けて取れます。申出の期限は原則2週間前までです。

これは私の見立てですが、中小企業の男性育休は「長く取らせる」より「14日分の段取りを全員に」が先だと考えています。そのほうが、定着への効き方が確かだからです。14日は上限ではなく、会社が段取りを用意しておく最低ラインです。本人がもっと長く希望すれば、そちらが優先です。

作業療法では、仕事も家事も育児も同じ「作業」と呼び、同じ重さで扱います。急性期の病棟で退院に向けて評価するとき、私が見ていたのは本人の回復だけではありません。家に帰ったあと、誰がどの作業を担えるかでした。

子どもが生まれて最初の2週間は、家の作業の配分が一度に変わる時期です。そこに夫がいたかどうかは、その後の働き方にも残るように感じています。

ここまでで覚えてほしい1行。義務の線は300人、制度の節目は14日、見られている線は実績の有無です。

来週から動かす3つの手順

男性育休を採用・定着の材料に変える3つの手順

手順やること注意点
① 申出の日に渡す本人または配偶者の妊娠・出産の申出があったら、制度・申出先・給付・社会保険料の4点を個別に説明する(面談か書面)。取得の意向を確認し、「14日分の段取り」を添える出産予定日の1か月前までに行う。14日は会社が用意する最低ライン。取得を控えさせる形の説明は、法の措置と認められない
② 引継ぎを1枚にする休む人の仕事を「止める・任せる・戻ってからやる」の3つに分け、代わる人と期間を1枚に書く。業務を代わる人の仕事の見直しに関する規定を作る規定の整備は、両立支援等助成金(出生時両立支援コース)の要件の1つ。要件と金額は年度で変わるため、都道府県労働局で確認する
③ 数えて書く配偶者が出産した男性の数と、育休を取った数を毎年数える。求人票・面接・自社サイトに「◯人中◯人・平均◯日」と書く公表義務がなくても「両立支援のひろば」で任意に公表できる。健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)の評価項目⑥「仕事と育児または介護の両立支援」にも対応する

出典:厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」、厚生労働省「2025(令和7)年度 両立支援等助成金のご案内」、健康経営優良法人2027 中小規模法人部門 認定要件をもとにDIALOG作成

土台は、法が求める雇用環境の整備です。研修・相談窓口・取得事例の提供・方針の周知のいずれかが義務ですが、いずれも行っていない事業所は36.9%ありました。

ここからは仮定です。入社3年目の社員に子どもが生まれるとします。申出をした日に会社から説明がなければ、本人は「うちでは取れない」と悟ります。収入を守るために休まず、家の作業は妻が一人で抱えます。

配偶者の復職が近づいたころ、本人は転職サイトを開きます。退職面談で会社が聞くのは「家庭の事情です」の一言です。

私が23年の臨床現場で見てきた限り、「続けられない」と辞める人が口にするのは、続けたくないという言葉ではありません。職場に迷惑をかける恐れが、続けたい気持ちより前に立ちます。受け入れ態勢が柔軟なら、続ける人は増えるように感じています。

育休を終えて復職予定だった男性のうち、実際に復職した人は98.1%です。会社が失うのは、取らせなかった人のほうです。

求人票の書き方は求人票、休日の条件は年間休日、辞める理由の聞き方は退職面談の記事で扱いました。

数字は、取らせた会社にしか残りません

公表義務のない会社が取得率を書ける道は、1つです。1人目に取らせて、数えることです。

もし1つだけ持ち帰るなら

就業規則に産後パパ育休の規定があるか、今日確認してください。あれば「14日分の段取り」を1枚にする。なければ、規定づくりが最初の一歩です。

よくある質問

男性社員が数人しかいない会社でも、取得率は意味がありますか?

取得率の分母は「配偶者が出産した男性の数」です。該当者がいない年は数字が出ません。その場合は「直近3年で2人中2人が取得・平均14日」のように人数で書くほうが伝わります。公表義務がなくても、厚生労働省の「両立支援のひろば」で任意に公表できます。

妻が専業主婦でも、夫が14日取る意味はありますか?

出生後休業支援給付は、配偶者が専業主婦(夫)の場合やひとり親家庭では、本人のみの育児休業で対象になります。給付額には上限があるため、個別の条件はハローワークにご確認ください。

現場仕事の建設業でも、男性育休は取れていますか?

令和7年度の雇用均等基本調査では、建設業の男性の育児休業取得率は45.0%でした。従業員5〜29人の事業所で産後パパ育休の規定があるのは66.2%です。

最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ

男性育休は、制度の話に見えて、採用と定着の話です。14日分の段取りを用意して、1人目に取らせ、数えて書く。この積み重ねが、「この会社なら家族が増えても働ける」と思える理由になります。育休の実績を採用と定着の材料に変える組み立てを、一緒に設計してみませんか。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は中小企業の採用・定着、健康経営、介護予防の支援に取り組んでいます。

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男性育休の実績を、採れて辞めない会社の材料に

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人が採れない、入社しても辞めてしまう会社へ。DIALOGは、人が採れない・辞めてしまう課題を抱える中小企業の採用・定着を支援しています。手段としてご提案しているのが、健康経営優良法人の取得支援です(建設業向けには「ぱとす」による伴走支援も行っています)。ご相談では、育休や健診などの制度を社員にどう届け、求人票や面接でどう伝えるかを、本記事のような視点も踏まえて一緒に確認します。作業療法士23年の臨床知見をもとに、貴社の業種・現状に合わせて一貫して伴走します。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、公的機関の公開資料を踏まえた解説です。取得率は、令和5年10月1日〜令和6年9月30日に配偶者が出産した男性のうち、令和7年10月1日までに育児休業を開始した者(申出をしている者を含む)の割合で、常用労働者5人以上の事業所を対象とした調査の結果です。取得期間の横棒グラフは、令和6年度に育児休業を終えて復職した男性の内訳で、「3か月以上」は各区分の合計で、不明0.1%を除いています。四捨五入のため各区分の合計は100に揃いません。「取得期間の分布」と「取得率」は対象者が異なります。若年層の意識調査は、18〜25歳の学生を対象としたWEB調査の速報値です。育児休業を利用しなかった理由は令和4年度の委託調査の結果で、回答者数が限られるため傾向としてお読みください。「若者は育休の数字を会社の体力として読んでいる」「14日分の段取りを全員に、のほうが定着への効き方が確か」「夫がいたかどうかはその後の働き方に残る」「会社が失うのは取らせなかった人のほう」は筆者の見立て・所感であり、調査が示したものではありません。入社3年目の社員が転職に至る経過は、説明のための仮定であり、実在の事例ではありません。臨床現場に関する記述は、著者の所感を述べたもので、特定の個人を指すものではありません。表「3つの手順」はDIALOGによる整理です。給付金・助成金の要件と金額は年度ごとに見直されるため、最新の条件はハローワーク・都道府県労働局でご確認ください。就業規則の規定の作成・変更は、社会保険労務士等にご相談ください。本記事は、離職率の改善や採用成果、認定取得を保証するものではありません。