男性の育児休業の取得率は50.9%。2025年の調査で、初めて半分を超えました。
この取得率を公表する義務があるのは、従業員300人超の会社だけです。中小企業に義務はありません。
ところが、18〜25歳の学生の61.0%は、男性育休の実績がない会社には就職したくないと答えています。
義務の線は300人。見られている線は、人数とは関係がありません。
代表の三宮は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場に立ってきました。見続けてきたのは「人が働き続けられる条件」です。株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、その知見をもとに中小企業の採用・定着を支援しています。健康経営と採用設計の両面から手を打つのが、私たちのやり方です。
この記事の要点
- 従業員5〜29人の事業所でも、配偶者が出産した男性の42.9%が育休を取っている。公表義務はなくても、若者の7割は取得状況を見て会社を選ぶ
- 取った男性の半数近くは1か月未満で戻る。制度の節目は「14日」。両親とも14日以上取ると、最大28日間は手取り10割相当の給付になる
- 申出の日に14日分の段取りを渡す、引継ぎを1枚にする、実績を数えて求人票に書く。この3つが入社3年目の離職を防ぎ、面接で語れる材料になる
「公表義務がない」と「見られていない」は、別の話です
男性育休をめぐる3つの数字
出典:厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」付属統計表第12表/厚生労働省イクメンプロジェクト「若年層における育児休業等取得に対する意識調査(速報値)」
取得率の公表が義務なのは、2025年4月から従業員300人超の会社です。実際に公表している事業所は26.2%で、5〜29人では24.2%にとどまります。
一方で、就職活動をする若者の69.7%は、企業の育休の取得状況が会社選びに影響すると答えています。就職したい気持ちが高まる情報の1位は「男性の育休取得率」で、33.4%でした。
取得率が高い会社のイメージは「安定している」41.5%が1位です。言い換えると、若者は育休の数字を、福利厚生ではなく会社の体力として読んでいます。
公表の有無と実績の有無は、別の話です。義務がなくても、面接で「男性で育休を取った人はいますか」と聞かれれば、答えは出ます。
育児休業の規定がある事業所は、5〜29人で81.3%です。産後パパ育休の規定があるのは66.2%でした。3社に1社は、出生直後の休みの規定がないまま、採用の場に立っています。
何日なら回るか。制度の節目は14日です
申出が来てから段取りを考える会社は、その日に固まります。日数は本人が決めるものです。会社が先に決めておくのは、何日なら回るかの段取りです。
男性の育児休業の取得期間(令和6年度に復職した男性=100)
出典:厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」事業所調査 結果概要 表12(3か月以上は各区分の合計。不明0.1%を除く。四捨五入のため各区分の合計は100に揃わない)
取った男性の48.9%は、1か月未満で戻っています。山は2週間〜1か月未満と、1〜3か月未満の2つです。
ここに、2025年4月から制度の節目ができました。出生後休業支援給付です。両親がともに14日以上の育児休業を取ると、最大28日間、給付率が13%上乗せされます。
通常の育児休業給付67%と合わせて80%です。休業中は社会保険料が免除され、給付は非課税のため、手取り10割相当になります。
男性が育休を取らなかった理由の1位は「収入を減らしたくなかった」で39.9%でした。2位は「取得しづらい雰囲気」22.5%、3位は「自分にしかできない仕事があった」22.0%です。
14日分の段取りを全員に用意しておくと、1位の理由は制度がほぼ消します。残る2つは、会社が消す側です。
産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に4週間まで、2回に分けて取れます。申出の期限は原則2週間前までです。
これは私の見立てですが、中小企業の男性育休は「長く取らせる」より「14日分の段取りを全員に」が先だと考えています。そのほうが、定着への効き方が確かだからです。14日は上限ではなく、会社が段取りを用意しておく最低ラインです。本人がもっと長く希望すれば、そちらが優先です。
作業療法では、仕事も家事も育児も同じ「作業」と呼び、同じ重さで扱います。急性期の病棟で退院に向けて評価するとき、私が見ていたのは本人の回復だけではありません。家に帰ったあと、誰がどの作業を担えるかでした。
子どもが生まれて最初の2週間は、家の作業の配分が一度に変わる時期です。そこに夫がいたかどうかは、その後の働き方にも残るように感じています。
ここまでで覚えてほしい1行。義務の線は300人、制度の節目は14日、見られている線は実績の有無です。
来週から動かす3つの手順
男性育休を採用・定着の材料に変える3つの手順
| 手順 | やること | 注意点 |
|---|---|---|
| ① 申出の日に渡す | 本人または配偶者の妊娠・出産の申出があったら、制度・申出先・給付・社会保険料の4点を個別に説明する(面談か書面)。取得の意向を確認し、「14日分の段取り」を添える | 出産予定日の1か月前までに行う。14日は会社が用意する最低ライン。取得を控えさせる形の説明は、法の措置と認められない |
| ② 引継ぎを1枚にする | 休む人の仕事を「止める・任せる・戻ってからやる」の3つに分け、代わる人と期間を1枚に書く。業務を代わる人の仕事の見直しに関する規定を作る | 規定の整備は、両立支援等助成金(出生時両立支援コース)の要件の1つ。要件と金額は年度で変わるため、都道府県労働局で確認する |
| ③ 数えて書く | 配偶者が出産した男性の数と、育休を取った数を毎年数える。求人票・面接・自社サイトに「◯人中◯人・平均◯日」と書く | 公表義務がなくても「両立支援のひろば」で任意に公表できる。健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)の評価項目⑥「仕事と育児または介護の両立支援」にも対応する |
出典:厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」、厚生労働省「2025(令和7)年度 両立支援等助成金のご案内」、健康経営優良法人2027 中小規模法人部門 認定要件をもとにDIALOG作成
土台は、法が求める雇用環境の整備です。研修・相談窓口・取得事例の提供・方針の周知のいずれかが義務ですが、いずれも行っていない事業所は36.9%ありました。
ここからは仮定です。入社3年目の社員に子どもが生まれるとします。申出をした日に会社から説明がなければ、本人は「うちでは取れない」と悟ります。収入を守るために休まず、家の作業は妻が一人で抱えます。
配偶者の復職が近づいたころ、本人は転職サイトを開きます。退職面談で会社が聞くのは「家庭の事情です」の一言です。
私が23年の臨床現場で見てきた限り、「続けられない」と辞める人が口にするのは、続けたくないという言葉ではありません。職場に迷惑をかける恐れが、続けたい気持ちより前に立ちます。受け入れ態勢が柔軟なら、続ける人は増えるように感じています。
育休を終えて復職予定だった男性のうち、実際に復職した人は98.1%です。会社が失うのは、取らせなかった人のほうです。
求人票の書き方は求人票、休日の条件は年間休日、辞める理由の聞き方は退職面談の記事で扱いました。
数字は、取らせた会社にしか残りません
公表義務のない会社が取得率を書ける道は、1つです。1人目に取らせて、数えることです。
もし1つだけ持ち帰るなら
就業規則に産後パパ育休の規定があるか、今日確認してください。あれば「14日分の段取り」を1枚にする。なければ、規定づくりが最初の一歩です。
よくある質問
男性社員が数人しかいない会社でも、取得率は意味がありますか?
取得率の分母は「配偶者が出産した男性の数」です。該当者がいない年は数字が出ません。その場合は「直近3年で2人中2人が取得・平均14日」のように人数で書くほうが伝わります。公表義務がなくても、厚生労働省の「両立支援のひろば」で任意に公表できます。
妻が専業主婦でも、夫が14日取る意味はありますか?
出生後休業支援給付は、配偶者が専業主婦(夫)の場合やひとり親家庭では、本人のみの育児休業で対象になります。給付額には上限があるため、個別の条件はハローワークにご確認ください。
現場仕事の建設業でも、男性育休は取れていますか?
令和7年度の雇用均等基本調査では、建設業の男性の育児休業取得率は45.0%でした。従業員5〜29人の事業所で産後パパ育休の規定があるのは66.2%です。
最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ
男性育休は、制度の話に見えて、採用と定着の話です。14日分の段取りを用意して、1人目に取らせ、数えて書く。この積み重ねが、「この会社なら家族が増えても働ける」と思える理由になります。育休の実績を採用と定着の材料に変える組み立てを、一緒に設計してみませんか。