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採用・定着

特定保健指導|実施率は協会けんぽ19.0%、健保組合35.4%。
受けやすい環境は会社が決めます

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

先月の健診結果で、特定保健指導の案内が届いた社員は何人いますか。

全国では、特定健診を受けた40〜74歳の16.6%が、特定保健指導の対象です(2023年度)。健診を受けた40歳以上の社員が20人なら、単純計算で約3人。現場の中堅や、これから任せたいリーダーの年代です。

対象になった人のうち、指導を終えたのは27.6%。7割強は終えていません。

代表の三宮は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場に立ってきました。見続けてきたのは「人が働き続けられる条件」です。株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、その知見をもとに中小企業の採用・定着を支援しています。健康経営と採用設計の両面から手を打つのが、私たちのやり方です。

この記事の要点

実施率は27.6%。協会けんぽは19.0%、健保組合は35.4%

特定保健指導の実施率(2023年度)

27.6%
全体(対象者約519万人のうち、終了者約143万人)
19.0%
全国健康保険協会(協会けんぽ)。前年度は17.5%
35.4%
健康保険組合(全体)。前年度は34.0%

出典:厚生労働省「2023年度特定健康診査・特定保健指導の実施状況について」表6・表8

特定保健指導とは、特定健診(いわゆるメタボ健診)の結果、生活習慣の改善が必要と判断された40〜74歳に行う保健指導です。リスクの高さに応じて、積極的支援と動機付け支援に分かれます。

実施するのは、協会けんぽや健康保険組合といった保険者です。高齢者の医療の確保に関する法律で、保険者に実施が義務づけられています。

会社に義務があるのは、別の制度です。労働安全衛生法第66条の7は、事業者に努力義務を課しています。健診の結果をもとに、必要な社員へ医師か保健師による保健指導を行うことです。この2つを混同すると、「それは保険者の仕事だ」で話が止まります。

協会けんぽ北海道支部では、保健師や管理栄養士による特定保健指導を無料で行っています。2024年度からの第4期では、腹囲2cmと体重2kgの減少が成果として評価されます。

年齢別の特定保健指導の実施率(2023年度・全体・40〜64歳を抜粋)

40〜44歳
25.0%
25.0%
45〜49歳
27.3%
27.3%
50〜54歳
28.2%
28.2%
55〜59歳
29.0%
29.0%
60〜64歳
27.3%
27.3%

出典:厚生労働省「2023年度特定健康診査・特定保健指導の実施状況について」表7(棒の長さは35%を100とした比率)

一番低いのは40〜44歳の25.0%です。仕事でも家庭でも手が離せない年代と重なるのかもしれません。これも私の見立てです。

協会けんぽの加入者は、中小企業の社員が中心です。受けるかどうかは本人の事情だけでなく、勤務の組み方や上司の声かけにも左右されるのではないか。これは私の見立てで、調査が示した結果ではありません。

会社の8つの取り組みは、評価項目⑪で見られます

健康経営優良法人2027の中小規模法人部門は、評価項目⑪〜⑰のうち4項目以上への適合が求められます。⑪が「保健指導の実施または特定保健指導実施機会の提供」です。

申請書のQ23では、保険者による特定保健指導を促すために、事業主側が行っている取り組みを8つの選択肢から選びます。下の表には主なものを載せました。Q24の産業医や保健師による保健指導と、どちらか一方を実施していれば適合です。

特定保健指導の対象者がいない会社も、ルールの整備と明文化があれば取り組みとみなされます。保険者が主体の取り組みも、自社が関与して従業員に周知していれば実績に書けます。

申請期限は2026年10月16日(金)17時です。記載できるのは、2025年4月1日から申請日までに実施した内容に限られます。

ここまでで覚えてほしい1行。特定保健指導は保険者の仕事。受けやすい環境をつくるのは会社の仕事で、それが評価項目⑪になる。

40代の入口と出口に変える3つの手順

今回の申請に書けるのは、すでに実施した分だけです。ここから先は、来年度以降に向けた整備として読んでください。

特定保健指導の案内を、採用と定着の材料に変える3つの手順

手順やること(Q23の選択肢)注意点
① 数える先月の健診結果から、案内が届いた人数を数える。健診結果の返却時に案内を同封し(1)、連絡窓口の担当者を決める(2)個人の健診結果の扱いは、本人の同意と社内の取り扱いルールが先。人数だけを集計し、中身は見ない。該当者が数人なら年齢別には分けない
② 受けやすくする受ける時間を就業時間に含める、または有給の特別休暇にする(4)。社内の一室を貸す(5)、事業場からオンラインで受けられるようにする(7)、健診と同じ日に初回面談を入れる(8)。管理職には業務上の配慮を伝える(3)現場が分散する会社は、オンラインと健診同日の初回面談から始めるのが現実的。時間の扱いは就業規則に関わるため、社会保険労務士に相談
③ 書いて伝えるルールを文書にする。中途採用の求人票や面接で「健診後の保健指導は勤務時間内に受けられます」と書き、言う。入社後の面談で、案内が届いたかを任意で聞く面談で聞くときは、目的を伝え、答えなくても不利益にしない。求人票には、実際に運用しているものだけを、年齢を限らず全員向けの文言で書く。対象者がいない会社も、ルールの明文化で取り組みになる

出典:健康経営優良法人認定事務局「健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)申請のポイント」Q23・Q24(p.18)をもとにDIALOG作成

手順③が、採用の入口です。40代の中途採用で求職者が見るのは、給与と休日だけではありません。入社後に自分と家族の健康をどう扱ってくれる会社か。そこが、求人票の1行と面接の一言から読み取られます。これは私の見立てです。

次に、定着の出口です。ここからは仮定の話です。入社2年目の42歳の中途社員に、特定保健指導の案内が届いたとします。現場が空けられず、「今回は見送ります」と上司に伝えます。

上司は忙しい中で気を回したつもりです。本人は「この会社は、健康の話は後回しなのだな」と受け取るかもしれません。翌年の健診でも同じ結果が出れば、また案内が届きます。

手順②を済ませた会社は、この場面が変わります。「就業時間内で、現場を外れる日は調整するので受けてほしい」と言えるからです。入社1年目の面談で、任意で案内の有無を聞き、受けやすい条件を会社が先に整えておく。本人に受診を迫るためではありません。目的を伝え、答えなくても不利益にしない前提です。

私が急性期医療の現場で脳卒中や心筋梗塞のあとの方を見てきた限り、発症の数年前に変えられる余地の大きさを感じています。ただし、これは臨床の所感です。この制度の指導が発症を防ぐと示した調査を、今回は確認していません。

脳卒中・心筋梗塞の予防は脳卒中・心筋梗塞の予防、健診の事後措置は健康診断の事後措置、長時間労働の予防は勤務間インターバルの記事で扱いました。

案内1枚の扱いで、会社の姿勢が伝わります

特定保健指導は保険者の制度です。それでも、案内を渡す日、受ける時間を決める日、上司が声をかける日は、すべて会社の中にあります。

もし1つだけ持ち帰るなら

先月の健診結果を見て、案内が届いた人数を1つ数えてみてください。その人数が、手順①の答えです。

よくある質問

特定保健指導の費用は会社が負担しますか?

協会けんぽ北海道支部は、保健師や管理栄養士による特定保健指導を無料で案内しています。健康保険組合に加入している場合は、組合ごとに案内が異なります。加入先の保険者に確認してください。

40歳以上の社員がいません。Q23は書けませんか?

対象者がいない会社も、ルールの整備と明文化を行っていれば、取り組みとみなされます。「対象者に案内を渡す」「就業時間内で受けられるようにする」といった方針を文書にしておきます。Q24の保健指導でも適合できます。

申請の期限まで、あと数日です。間に合いますか?

申請期限は2026年10月16日(金)17時です。記載できるのは、2025年4月1日から申請日までに実施した内容に限られ、申請日以降の予定は書けません。保険者が主体の取り組みも、自社が関与し従業員に周知していれば記載できます。まず自社の実績を確認してください。

最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ

特定保健指導の中身は、保険者が行う無料の保健指導です。会社の仕事は、案内を渡し、受ける時間を決め、求人票と面接で伝えること。この順番が、40代の中途採用と中堅の定着を支え、健康経営優良法人の評価項目⑪にも応えます。貴社の勤務の組み方に合わせた受けやすさの設計を、一緒に考えてみませんか。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は中小企業の採用・定着、健康経営、介護予防の支援に取り組んでいます。

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案内1枚を、採用・定着の材料に

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人が採れない、入社しても辞めてしまう会社へ。DIALOGは、人が採れない・辞めてしまう課題を抱える中小企業の採用・定着を支援しています。手段としてご提案しているのが、健康経営優良法人の取得支援です(建設業向けには「ぱとす」による伴走支援も行っています)。ご相談では、健診後の保健指導など健康の条件を社員にどう届け、求人票や面接でどう伝えるかを、本記事のような視点も踏まえて一緒に確認します。作業療法士23年の臨床知見をもとに、貴社の業種・現状に合わせて一貫して伴走します。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、公的機関の公開資料を踏まえた解説です。実施率は2023年度の全国集計で、北海道や個別の会社の値ではありません。実施率は「終了者数÷対象者数」、対象者割合は「特定健診受診者に占める対象者の割合」です。「健診を受けた40歳以上が20人なら約3人」は、全国の割合を当てはめた単純な試算です。「40〜44歳が低いのは手が離せない年代と重なるのかもしれない」「受けるかどうかは勤務の組み方や上司の声かけにも左右される」「求職者は健康の扱いを求人票と面接から読み取る」「発症の数年前に変えられる余地」は筆者の見立て・所感であり、調査が示したものではありません。入社2年目の42歳の社員の経過は、説明のための仮定であり、実在の事例ではありません。表「3つの手順」はDIALOGによる整理です。申請の要件、評価項目、期限は年度ごとに見直されるため、最新の条件は認定事務局の公表資料でご確認ください。健診結果など個人の健康情報の取り扱い、就業規則の作成・変更、受診時間の扱いは、社会保険労務士等にご相談ください。本記事は、離職率の改善や採用成果、認定取得、健康状態の改善を保証するものではありません。