社員1人あたりの「食事の費用」に、大企業の約5倍をかけている会社があります。従業員30〜99人の会社です。
厚生労働省の令和3年就労条件総合調査では、会社が負担する食事の費用は、30〜99人の会社で1人1か月849円でした。1,000人以上の会社は174円です。小さな会社ほど、社員の食事にお金を使っています。
その食事補助のルールが、2026年4月に変わりました。税金をかけずに出せる上限が、月3,500円から7,500円に上がったのです。
代表の三宮は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場に立ってきました。見続けてきたのは「人が働き続けられる条件」です。株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、その知見をもとに中小企業の採用・定着を支援しています。健康経営と採用設計の両面から手を打つのが、私たちのやり方です。
この記事の要点
- 2026年4月から、食事補助の非課税枠は月3,500円から7,500円へ。「食事そのものを出す」「本人が半分以上払う」の2条件は変わらない
- 主食・主菜・副菜がそろう食事を1日2回以上、ほぼ毎日とれている20代は約3割。全体の52.8%を大きく下回る
- 昼食補助は、健康経営優良法人の評価項目⑫「食生活の改善」と、求人票・面接・入社1か月面談をつなぐ材料になる
食事補助の非課税枠は、月7,500円まで広がりました
会社が税金をかけずに出せる食事補助は、2026年4月から月7,500円までになりました。
食事の現物支給に係る非課税限度額(2026年4月1日以後)
出典:国税庁「食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて」(令和8年4月)
国税庁は2026年3月31日に通達を改正しました。4月1日以後に支給する食事から、新しい上限が適用されています。
非課税になる条件は2つです。1つ目は、本人が食事の価額の半分以上を負担していること。2つ目は、食事の価額から本人負担を引いた額が、月7,500円以下であることです。金額は消費税を除いて判定します。
言い換えると、「会社が出すのは半分まで、しかも月7,500円まで」です。
たとえると、税抜750円の弁当を月20回とる社員に、半額を補助する形です。会社負担は月7,500円で、ちょうど上限に収まります。改正前なら、上限を4,000円上回っていた計算です。
ただし、どちらかの条件を外れると、会社が負担した額が給与として課税されます。出し方にも注意が要ります。
食事の出し方と、所得税の扱い
| 出し方 | 所得税の扱い |
|---|---|
| 仕出し弁当・社員食堂など、食事そのものを出す | 2つの条件を満たせば非課税 |
| 食事代を現金で渡す(食事手当など) | 原則として全額が給与として課税 |
| 残業や宿日直のときに出す食事 | 無料で出しても課税しなくてよい |
| 深夜勤務で夜食を出せず、代わりに現金で渡す | 1回650円以下(税抜)なら非課税 |
出典:国税庁 タックスアンサー No.2594「食事を支給したとき」をもとにDIALOG作成
社会保険料の扱いは、所得税とは別の基準で決まります。導入する前に、社会保険労務士か年金事務所へ確認してください。
ここまでで覚えてほしい1行。食事補助は「現金」ではなく「食事」で出す。会社負担は半分まで、月7,500円まで。
福利厚生全体の使い道は、福利厚生の記事で整理しました。
20代は、バランスのとれた食事が最もとれていない年代です
主食・主菜・副菜がそろう食事を1日2回以上、ほぼ毎日とれている20代は、男女とも約3割でした。
主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上の日が、ほぼ毎日の人(令和6年)
出典:厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査結果の概要」第4章 図7(20代の値は「毎日」と「週に6日」の合計)
主食はごはんやパン、主菜は肉や魚、副菜は野菜のおかずです。国は「健康日本21(第三次)」で、この割合を50%にする目標を掲げています。全体では届いていますが、20代は遠く及びません。
急性期病院で、作業療法士は食事の場面に立ち会います。姿勢、箸の運び、食べ終わるまでの時間。食事には、その人の一日の調子がよく表れると感じてきました。
23年の臨床で、患者さんが自分の不調を「自分の体質」と考えている場面を何度も見てきました。けれど実際には、置かれた環境が生む行動の積み重ねであることが少なくありません。
これは私の見立てですが、若手の昼食も同じではないでしょうか。現場の近くに店がない。休憩は短い。菓子パンで済ませるのは、意志が弱いからではなく、環境がそうさせている面があります。
だからこそ、会社が昼食の中身に手を出す意味があります。
健康経営優良法人2027の中小規模法人部門では、評価項目⑪〜⑰のうち4項目以上への適合が求められます(小規模法人特例は2項目以上)。⑫が「食生活の改善に向けた取り組み」です。昼食補助を⑫に数えるなら、目的を食生活の改善として社内に案内し、実施の記録を残しておきます。
2027年度の申請は、2026年10月16日(金)17時で締め切られます。これから始める昼食補助は、次回以降の申請に向けた記録になります。運動の取り組みは運動習慣、保健指導は特定保健指導の記事で扱いました。
昼食補助を、求人票・面接・入社1か月面談につなげる3つの手順
ここからは、採用と定着に話をつなげます。
たとえば、20歳で入社した社員がいたと仮定します。現場の昼は、おにぎりと甘い飲み物で済ませる日が続きます。午後にだるさを感じても、本人は「体力がないのは自分のせい」と考えます。誰にも話さないまま、入社半年の面談で「体がもたない」とだけ伝え、退職を申し出ます。これは説明のための仮定で、実在の事例ではありません。
昼食補助は、この経路の途中に3つの出口をつくります。
昼食補助を、採用・定着の材料にする3つの手順
| 手順 | やること | つながる場面 |
|---|---|---|
| ① 出し方を決める | 食事そのものを出し、本人が半分以上払う。会社負担は月7,500円以内に収める | 給与計算・社内規程 |
| ② 中身を選ぶ | 主食・主菜・副菜がそろう弁当を選ぶ。目的を「食生活の改善」と社内に案内する | 評価項目⑫の記録 |
| ③ 伝える | 求人票の福利厚生欄に中身と負担割合を書き、面接と入社1か月面談で話題にする | 応募・内定承諾・入社1か月 |
出典:DIALOGによる整理
手順①は、手取りの話でもあります。現金の食事手当には、所得税がかかります。条件を満たした昼食補助には、かかりません。同じ会社負担でも、社員の手元に残る価値が変わります。
手順③では、求人票に「福利厚生充実」と書くより、「昼食の弁当代は会社が半額を負担」と書く方が伝わると考えています。求人票の書き直し方は、求人票の記事にまとめました。
入社1か月面談では、「お昼はどうしていますか」と1問だけ聞いてみてください。答えから、休憩のとり方や生活の様子が見えてきます。体の話を切り出しにくい若手にとって、昼食は話しやすい入口です。
もし1つだけ持ち帰るなら
今出している食事手当や弁当代が、現金か食事そのものか、会社負担は月いくらか。まずはそこを確かめてみていただけたら。そこが、昼食補助を設計し直す出発点です。
よくある質問
食事手当を、毎月現金で渡しています。非課税にできますか?
現金で渡す食事代は、原則として全額が給与として課税されます。非課税にするには、弁当や食堂など食事そのものを出し、2つの条件を満たす形に変える必要があります。
現場が点在していて、弁当の配達が難しい場合はどうすればよいですか?
配達や食堂以外の方法を使う場合、食事そのものの支給として扱えるかは方法によって異なります。導入前に、税理士か所轄の税務署へ確認してください。
昼食補助だけで、評価項目⑫の取り組みに数えられますか?
食生活の改善を目的にした取り組みとして、内容と実施記録を説明できるようにしておきます。最終的な判断は、認定事務局の基準に従います。
最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ
昼食の中身は、本人の生活習慣です。会社の仕事は、食事そのものを出す仕組みをつくり、中身を選び、求人票と面接で伝えること。この順番が、若手の最初の数か月を支え、健康経営優良法人の評価項目⑫にも応えます。貴社の現場の配置や勤務時間に合わせて、この視点を落とし込むご提案をします。