「健康経営優良法人、申請してみたい気持ちはある。けれど、何から始めればいいかが分からない」——北海道の中小建設業の社長から、こうしたお話をうかがう機会が増えてきました。
株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、医療と介護の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきた知見をもとに、北海道の中小建設業に向けた健康経営支援を提供しています。健康経営優良法人の認定要件と、現場で実際に効く取り組みの両方から、申請を実務に乗せていくのが私たちの役割です。
本記事では、申請に必要な5つのステップを、制度の最新資料と現場で見てきた現実の両面から整理します。読み終えたあとに、社長が「来週からこう動こう」と判断できる材料をお渡しすることが目標です。
この記事の要点
- 健康経営優良法人は、経審の加点と若手の採用力強化につながる可能性がある
- 申請は5つのステップに分けて整理すると、やることが見えてくる
- まずは健康診断の受診率の確認という1枚の書類から始められる
制度の前提: 健康経営優良法人認定制度は経済産業省と日本健康会議が運営。経審の労働福祉項目への反映は国土交通省が制度設計(出典は記事末尾)。
この記事でご一緒に考えたいこと
- なぜ今、建設業で健康経営優良法人なのか
- 申請の5ステップを、何月に何をするかで眺める
- 建設業が躓きやすい3つのポイントとその超え方
- 明日からできる、最初の1枚の書類確認
なぜ今、建設業で健康経営優良法人なのか
経済産業省と日本健康会議が運営する「健康経営優良法人認定制度」は、2017年から始まり、認定企業は年々増えています(出典:経済産業省「ACTION!健康経営」ポータル)。建設業界では、国土交通省が経営事項審査(経審)の評点項目に健康経営の取組を反映する方向で制度設計を進めており、申請を検討する企業が増えていると言われています(出典:国土交通省「建設業の経営事項審査」公表資料)。
具体的な加点点数や評価方法は年度の制度改正により見直されるため、本記事では数字の断定は避けます。最新の点数は、必ず国土交通省の公表資料でご確認ください。
建設業の社長から「公共工事の入札で、健康経営加点があるのとないのでは差がついてきた」というお話を、最近よく耳にするようになりました。経審の点数は、明日明後日で大きく動かせるものではないので、「やっておいて損はなさそうだ」という相談が増えているのかもしれません。
建設業に固有の意味——私が現場で感じていること
私が23年の臨床現場で見てきた限り、建設業の従業員の方は腰痛・関節痛・睡眠不足を抱えながら働き続けている方が多い印象があります。健康経営の枠組みは、こうした「我慢して働く文化」を、経営者と従業員が一緒に見直すきっかけになるのではないかと感じています。
認定を取ることそのものより、「取りに行く過程で社内の健康課題が見える化される」ことに、本当の価値があるのではないでしょうか。これは医療現場で、評価ツールを導入する時に何度も経験してきたことです。点数化することで、見えていなかった現実が言語化される瞬間があります。
ステップ1:自社の現状把握——まず1枚の書類から
申請の前に、まず自社で「すでにやっていること」を棚卸しすることから始まります。多くの会社では、すでに法令で義務になっている取り組みだけでも、申請に使える材料がそろっているケースがあります。
確認したい4つの書類があります。
- 定期健康診断の受診率(労働安全衛生法で義務)
- ストレスチェックの実施状況(従業員50人以上の事業場で義務)
- 産業医・産業保健スタッフとの連携状況
- 健康診断後の事後措置(要再検査者へのフォローの記録)
このうち、「健康診断の受診率」は、明日にでも総務担当者に確認できるはずです。受診率が9割を超えているなら、すでに大きな前進があります。8割を下回っているなら、まずそこを上げる動きが、申請準備と若手の安心感の両方につながる可能性があります。
ステップ2:認定要件の確認——中小規模法人部門で考える
健康経営優良法人には大規模法人部門と中小規模法人部門があります。建設業の中小企業の多くは中小規模法人部門での申請が現実的です(部門区分の詳細は経済産業省の最新の認定要件をご確認ください)。
主な評価項目は以下のような領域に分かれています。
- 経営理念・方針における健康経営の位置づけ
- 組織体制(推進担当者の設置)
- 制度・施策の実行(健康診断後のフォロー、長時間労働対策など)
- 評価・改善(取り組みの見直しサイクル)
- 法令遵守・リスクマネジメント
項目を眺めると、専門用語が多くて身構えてしまうかもしれません。けれど中身はシンプルで、「健康に関する方針があるか/責任者がいるか/実行しているか/振り返っているか/法令を守っているか」を順番に書類で示すことです。
ステップ3:建設業が躓きやすい3つのポイント
申請のお話を社長の方とすると、決まって出てくる3つの悩みがあります。
1つ目は、現場が分散していて、健康診断の集約管理が難しいこと。遠方の現場に長期で出ている職人さんの受診をどう管理するかは、書類だけでは解決しないテーマです。事業所単位ではなく「会社全体の受診率」をどう数字で示すかを、年度の早い段階で総務と確認しておくと、申請時期に慌てずに済むのではないでしょうか。
2つ目は、下請企業との連携をどう書けばよいか分からないこと。元請として下請企業の健康管理にどこまで関与するかは、契約上のグレーゾーンが多い領域です。安全衛生協議会や元請主導の健康診断機会の提供など、すでに行っている取り組みを丁寧に書類化することから始められます。
3つ目は、ベテラン職人ほど自分の不調を口にしないこと。これは医療現場でも同じでした。「迷惑をかけたくない」気持ちが、本人の口を重くします。社長が制度として「健康診断の結果を一緒に見る場」を設けることが、本人の口を開きやすくする一歩になるのではないかと感じています。
ステップ4〜5:ACTION宣言から経審加点までの流れ
申請の流れを大まかに整理すると、以下のようになります。年度ごとに日程は変わりますので、最新スケジュールは経済産業省「ACTION!健康経営」ポータルで必ずご確認ください。
申請から経審加点までのステップ
- 健康企業宣言——協会けんぽ・健康保険組合の宣言制度に登録(4〜6月目安)
- 申請書類の作成——自社の取り組みを評価項目に沿って整理(8〜10月目安)
- 申請受付——経済産業省ポータルから提出(10月前後・年度により変動)
- 認定発表——翌年3月頃
- 経審の更新時に加点反映——認定取得後の経審更新タイミング
※具体的な日程・要件は毎年見直されます。最新情報は各省庁の公式ポータルで必ずご確認ください。
この流れで重要なのは、「思い立ってすぐ取れるものではない」という時間軸です。今年度の申請に間に合わせたいなら、夏の前から準備を始める想定で動くのが現実的になりそうです。
「健康経営」と聞いて固くなる前に
「健康経営」という言葉は、多くの社長にとって、どこか他人事に聞こえるかもしれません。立派な制度を導入する話、認定を取る話、お金がかかる話——そう思って身構える方も多いと思います。
けれど本質は、もっとシンプルなところにあるのではないかと感じています。今いる人を、長く、健康に、続けてもらうこと。そのために社長ができる小さな動きを、続けることです。認定はその副産物として後からついてくるものではないでしょうか。
明日からできる小さな一歩としては、「自社の健康診断の受診率を確認する」だけで十分なスタートになると感じています。1枚の書類を見るだけで、申請準備の半分が動き出します。
よくある質問
Q. 健康経営優良法人の申請に費用はかかりますか?
A. 申請料そのものは年度・部門により設定されています。最新の金額は経済産業省の「ACTION!健康経営」ポータルでご確認ください。社内で書類を整える人件費以外に、外部コンサルへの依頼費用が別途かかるかどうかは、自社で進めるか伴走を頼むかで変わってきます。
Q. 経審の健康経営加点は具体的に何点ですか?
A. 経営事項審査のW点(その他の審査項目)の中で、労働福祉の状況の評点項目として位置づけられています。配点は年度の制度改正により見直されるため、最新値は国土交通省の「建設業の経営事項審査」公表資料でご確認ください。私たちも数字を断定でお伝えするのは避けています。
Q. 従業員50人未満の小さな会社でも申請できますか?
A. 中小規模法人部門は従業員規模に応じて区分されており、小規模な企業も申請対象に含まれています。むしろ小規模な企業の方が、経営者と現場の距離が近く、健康経営の取り組みを浸透させやすい面もあるのではないかと感じています。
Q. 産業医がいないと申請できませんか?
A. 従業員50人未満の事業場は産業医の選任義務はなく、地域産業保健センターの無料サービスを活用する選択肢があります。健康経営の評価では、産業医の有無そのものよりも、健康診断の事後措置をどう運用しているかが見られていると感じています。
Q. うちの会社で、何から始めればいいですか?
A. まず自社の健康診断の受診率を確認することから始めるのが、無理のないスタートだと感じています。受診率と事後措置の状況がわかれば、すでに認定要件の中の大きな部分が見えてきます。制度全体を理解しようとせず、手元の1枚の書類から始めるのがいいのではないでしょうか。
最後に — 中小建設業の社長へ
健康経営優良法人の申請は、書類仕事の側面が目立ちます。けれど本質は、「現場で働く人をどう守りながら経営を伸ばすか」を社内で言語化する作業です。書類を整える過程で、自社の健康管理の現状が経営者にとって初めて可視化されることに、本当の価値があります。
DIALOGは、作業療法士23年の臨床経験で培った「人が働き続けられる条件を見抜く目」と、健康経営優良法人の最新要件・経営事項審査の動向の理解の両方を持って、申請に向けた社内体制づくりを伴走します。書類代行ではなく、認定取得後も自走できる仕組みづくりが私たちの提供価値です。
まずは、健康診断の受診率を1枚、確認するところから動いてみてください。そこから先のステップは、私たちと一緒に詰めていきましょう。