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熱中症対策・労働安全衛生

熱中症対策義務化2年目
建設業が今週確認したい3つの実務

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

「義務化されたのは知っている。でも、何をどこまで整えれば足りるのか、正直分からない」。5月の北海道で、建設業の社長から、そう聞きます。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、北海道の中小建設業を支援する会社です。代表は作業療法士として23年、医療と介護の現場を見てきました。「人の身体が壊れる前のサイン」を読み取る目で、熱中症対策と健康経営の両面から伴走します。

改正労働安全衛生規則と建設業の死傷災害データから、社長が今週動ける材料を整理します。

この記事の要点

制度の前提: 改正労働安全衛生規則は2025年6月1日施行(厚労省 基発0520第6号)。違反は労働安全衛生法第120条で、6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金。

建設業の死傷災害は、2年連続で業種別最多

厚生労働省の発表があります。2024年の職場での熱中症による死傷者は、1,257人。前年比 約14%増です。業種別では建設業が228人で最多でした。死亡者は全産業で31人、うち建設業10人。こちらも業種別の最多です。

義務化が始まった2025年シーズンは、さらに重い数字でした。死傷者は1,681人で、2005年の統計開始以来の最多。建設業は278人、死亡15人のうち建設業5人で、また最多です。

ルールが変わっただけでは、現場の数字は落ち着いていません。気候そのものが変わっていると捉えて、運用を組み直す必要があります。

事業者に課された3つの義務——平易に言い換えると

改正労働安全衛生規則は、2025年6月1日に施行されました。労働安全衛生規則とは、労働安全衛生法という法律の細かいルールをまとめた省令のことです。

事業者に求められるのは、次の3点です。

  1. 体制整備:自覚症状のある作業者、または異変に気づいた人が、すぐ報告できるルートを決めておく
  2. 手順作成:症状が出た時の「作業中止・身体の冷却・医師への連絡」までの手順を、現場ごとに紙で決めておく
  3. 周知:1と2を、関係する作業員全員に伝えておく

言い換えると、「異変を、誰が・誰に・どう伝えるか」と「伝わったら、誰が・何をするか」を紙1枚で現場に共有することです。

対象になるのは、暑さ指数WBGT28度以上、または気温31度以上の場所で行う作業です。1時間以上、または1日4時間を超えて行うと見込まれる作業が、これにあたります。WBGTとは、気温・湿度・輻射熱から計算する「暑さの指標」のことです。建設業の夏の屋外現場の多くは、ここに当てはまる可能性があります。

違反は労働安全衛生法第120条にかかります。6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金です。災害が起きれば、別途、民事の安全配慮義務違反のリスクもあります。書類1枚の話ではなく、経営の話です。

今週、社長が確認したい3つの実務

6月に入ると、現場は走りながら整える状態になります。5月のうちに動かしたい3つを、優先度の高い順に並べます。

1つ目は、対象作業の棚卸し。請けている現場のうち、どの工種が条件に当てはまるかを、工程表で1枚に並べます。屋根工事、舗装、解体、外構は、地面からの照り返しで体感が跳ね上がる作業です。「該当する/しない」を分けるだけで、その後の手続きが軽くなります。

2つ目は、報告ルートと処置手順を1枚の紙に。朝礼で読み合わせができる分量にまとめます。書く項目は3つ。「気分が悪くなったら、誰に伝えるか」。「伝えられた職長は、何分で何をするか」。「医師の診察が要る時、どこへ運ぶか」。現場ごとに具体名で書き、緊急連絡先と最寄り医療機関まで1枚に収めます。

3つ目は、協力会社への周知と元請統括。建設業では元請けが統括安全衛生責任者として、現場全体の安全を管理する立場です。下請けの作業員が熱中症を出した場合、元請けの体制も問われます。安全衛生協議会で報告ルートを協力会社と共有し、署名を残します。後から「周知済み」の証拠として効きます。

身体のサインは、本人が言葉にする前に出る

23年の臨床現場で見てきた限り、身体の異変は本人が気づくより先に動作に出ます。階段の昇り方、立ち上がる時の重心、休憩中の座り方。本人は「いつも通り」と思っていても、周りから見ると違うのです。

建設現場では、ベテランほど不調を口にしません。だからこそ「本人が言ったら報告」ではなく「周りが気づいたら報告」のルートを、制度にしておく意味があります。朝礼で職長が「今日は誰の様子を、誰が見ておく」と一言加える。これだけで、現場の空気は変わります。

5月のうちに動かしたいチェックリスト

  1. 対象作業の特定——条件に当たる工種を、工程表で一覧化する
  2. 報告ルートの明文化——「気づいた人→職長→現場代理人」を現場ごとに紙にする
  3. 処置手順の明文化——作業中止・身体冷却・搬送先までを1枚に
  4. 協力会社への周知——安全衛生協議会で共有し、署名を残す
  5. WBGT測定の準備——測定器を手配する、または気温で判定する基準を社内で決める

※具体的な要件と運用は、所轄の労働基準監督署や各都道府県労働局の最新資料でご確認ください。

よくある質問

Q. どの作業が義務化の対象ですか?

A. WBGT28度以上、または気温31度以上の場所での作業が対象です。1時間以上、または1日4時間超を見込むものが該当します(厚労省 基発0520第6号)。

Q. 違反するとどうなりますか?

A. 6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金です(労働安全衛生法第120条)。災害が起きれば、民事の安全配慮義務違反のリスクも別途生じます。

Q. WBGTの測定器は買わないとダメですか?

A. 条文はWBGTか気温いずれかでの判定を認めています。測定器がなければ気温で判定できます。ただし現場は照り返しで体感が変わるため、WBGTでの実測が実態に合います。

Q. 下請けの作業員が熱中症になった場合、元請けの責任は?

A. 元請けは統括安全衛生責任者として現場全体を管理する立場です。下請けの熱中症でも、元請けの統括体制が問われます。協力会社を含めた現場全体で整える必要があります。

Q. うちの会社では、まず何から始めればいいですか?

A. 報告ルートと処置手順を紙1枚にまとめ、朝礼で読み合わせるところから始めます。書類があるだけでは足りません。全員に伝わっていることが義務の中身です。

最後に

書類を整えるのは出発点であって、ゴールではありません。本質は、今いる人が夏を健康に乗り切り、来年も同じ顔ぶれで現場に立てる状態をつくることです。

DIALOGは、作業療法士23年の臨床の目と改正労安衛則の理解を併せ持ちます。朝礼で動く運用設計まで、一貫して伴走します。まずは今週、対象作業の棚卸しを紙1枚にしてみてください。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、医療・介護の現場で人の生活と仕事を見てきた経験をもとに、北海道の健康経営・介護予防・ウェルネス支援に取り組んでいます。

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DIALOGでは、北海道の中小建設業を対象に、改正労働安全衛生規則に対応した熱中症対策の整備から、現場運用・健康経営優良法人の認定取得までを一貫して伴走しています。現場の状況を伺ったうえで、貴社に最適な対策の進め方をご提案します。「うちの現場は何が足りていないか」という入口のご相談から承ります。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年)の臨床経験と、各省庁の最新公開情報を踏まえた解説です。改正労働安全衛生規則の運用、WBGT測定の具体的方法、罰則の適用範囲は、所轄の労働基準監督署・各都道府県労働局の最新公表資料を必ずご確認ください。本記事は熱中症の発症防止を保証するものではありません。具体的な労務・安全衛生・建設業法上の解釈については、社会保険労務士・産業医・建設業労働災害防止協会等の専門家との併用をおすすめします。