経審の点数が、自社の従業員の朝礼の風景で決まる時代になりました。多くの社長が、まだそれに気づいていません。
北海道の中小建設業で、6月の今、経審の点数表を眺めて「あと数点でランクが変わる」と気づいている社長の机に、この記事を置きたいと思って書いています。
株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきた知見をもとに、北海道の中小建設業に向けた健康経営支援を提供しています。経審のW点・社会性等評価のうち、健康経営優良法人の認定が効く部分を、来週から動かせる手順に落とし込むのが、私たちの提供価値です。
本記事では、経審の改正で健康経営優良法人が社会性等評価(W点)にどう組み込まれたかと、北海道の中小建設業の社長が公共工事の入札で利益を取りに行くために来週から動かしたい3手を、国土交通省・経済産業省の一次情報と、23年の臨床現場で見てきた事実の両面から整理します。
この記事の要点
- 2023年1月施行の経審改正で、健康経営優良法人がW点・社会性等評価の加点項目に位置づけられた(国土交通省)
- W点はP点(総合評定値)の約15%の重み。ランク境界に近い会社ほど1点の効きが大きい
- 6月の今動けば、次年度の経審にきれいに乗る逆算スケジュールが組める
制度の前提: 経審の所管は国土交通省、健康経営優良法人の所管は経済産業省。両制度の接続は経審の告示改正で実現しました(出典は記事末尾)。
この記事で扱う論点
- 経審のW点とは何か——P点に対する重みと、社会性等評価の中身
- 2023年改正で、健康経営優良法人がW点のどこに入ったか
- 来週から動かしたい3手——点数の確認・境界の確認・差分の確認
- 23年の臨床現場で見てきた「点数の手前にあるもの」
経審のW点とは何か——P点に対する重み
経営事項審査、いわゆる経審は、公共工事の入札に参加する建設業者を発注者が評価するための制度です。所管は国土交通省。総合評定値P点は、5つの評点を加重平均して出されます(出典:国土交通省「経営事項審査の概要」)。
5つの中身を、平易に並べ直すとこうなります。X1は完成工事高、つまり売上の規模。X2は自己資本と平均利益、会社の体力。Yは経営状況、決算書から見える健全度。Zは技術力、技術者の数と工事実績。そしてWが社会性等評価です。
P点の計算式の中で、W点はおおむね15%の重みを占めます。残りの85%は、売上・体力・決算・技術力という、年単位でしか動かない数字です。Wだけが「社内の取り組み」で短期に動かせる枠で、ここが社長の打ち手の最前線になります。
2023年改正で、健康経営優良法人がW点のどこに入ったか
2023年1月施行の経審改正で、社会性等評価(W点)の労働福祉の状況の枠に、健康経営優良法人の認定が加点項目として組み込まれました(出典:国土交通省「経営事項審査の改正について」)。
労働福祉の枠の中身は、退職一時金・企業年金・法定外労災・建退共・若年技術者の育成、そしてここに健康経営優良法人が並んでいます。言い換えると、社員の働き続けられる条件をどれだけ整えているかを、発注者は経審の点数として読みに来ているということです。
これは私の見立てですが、改正の本質は「健康経営は労務管理の延長」と国が示した点にあります。福利厚生の飾りではなく、入札の点数表に乗る経営項目に格上げされた。社長が現場で語る言葉が変わるきっかけになる改正です。
建設業に固有の意味——23年の臨床現場で見てきた点数の手前
急性期病院で23年、突然倒れて運ばれてきた働き盛りの方を数多く担当してきて、私はひとつのことに気づきました。発症の前夜、本人は「今日は大丈夫」と感じていたケースが圧倒的に多いのです。
リハビリ室で、80歳の元大工さんが「手が思うように動かないのが一番悔しい」と言ったことが、今も耳に残っています。経審の点数表の手前には、こうした個人の身体と、その積み重ねでできた会社の現場があります。
健康経営優良法人の認定要件は、健康診断受診率・ストレスチェック・運動機会の提供・受動喫煙対策などです(経済産業省・健康経営優良法人ポータル)。並べると堅く見えますが、中身は「朝、社員が無理なく仕事を始められる条件」が揃っているかの確認に近い。
23年の臨床現場で見てきた限り、これらの条件が薄い会社ほど、ベテラン層から先に体が崩れていきます。経審のW点を上げる作業は、結果的に会社の中核人材を守る作業と重なります。
手1:直近の経審結果通知を出し、W点とP点を確認する
最初の一手は、直近の経審結果通知書を机に出すことです。ここで止まる会社が、想像以上に多くあります。
確認するのは2つだけ。総合評定値P点と、その内訳のW点。P点は自治体の入札参加資格のランク判定に直結します。W点は、その中で社長が短期に動かせる唯一の枠です。
結果通知書は、毎年の経審申請に対して都道府県知事から発行されます。手元になければ、申請を依頼している行政書士または経営事項審査の担当窓口に1枚請求してください。1日でそろう書類です。
手2:自治体の入札ランク表で、境界からの距離を測る
2つ目は、自社が入札で参加している自治体のランク表を取り寄せ、自社のP点が境界からどれだけ離れているかを測ることです。
北海道発注の工事、市町村発注の工事、それぞれにランク表があります(北海道庁・各市町村建設業課)。同じP点でも、自治体ごとにランク境界の刻みは異なります。境界の上にギリギリ乗っている会社と、境界から20点離れている会社では、認定1つの効きがまるで違います。
境界に近いほど、健康経営優良法人の認定で得られるW点の上乗せが、上のランクに会社を押し上げる可能性が高まります。ここを数字で確かめないまま「認定を取るかどうか」を悩むのは、地図を見ずに山を登るのと同じです。
具体的な配点と境界判定は、毎年度の告示と自治体の運用で見直されます。最新数値は所管窓口で確認してください。
手3:認定要件と現状の差分を、1枚にまとめる
3つ目は、健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定要件と、自社の現状の差分を1枚の表にまとめることです。
認定要件は、経営理念・健康課題の把握・健康増進や過重労働防止に向けた具体的な対策など、評価項目ごとに整理されています(経済産業省・健康経営優良法人ポータル)。各項目について、自社が今すでに満たしているか、半年で満たせるか、1年仕事が要るかを、3色の付箋で分けるだけでも全体像が見えます。
申請受付は例年8月下旬から10月中旬、認定発表は翌年3月。経審に反映するのは認定取得後の申請から。6月の今動けば、来年3月の認定→来年度経審→入札ランク反映、と逆算が成り立ちます。
来週から動かしたい3手(要約)
- 点数を出す:直近の経審結果通知書からP点とW点を抜き出す
- 境界を測る:主要発注者のランク表で、境界からの距離を確かめる
- 差分を見える化:健康経営優良法人の認定要件と自社現状を1枚の表に
※ 経審の配点・健康経営優良法人の認定要件はいずれも年度ごとに見直されます。最新版は国土交通省・経済産業省の公表資料でご確認ください。
境界に近い会社ほど、急いだ方がいい理由
形だけのものに見えますか。違います。ランクが1段上がると、入札に参加できる工事の規模が変わります。指名競争入札の声がかかる会社のリストも変わります。受注1件あたりの利益率も、上のランクの工事の方が高い場合があります。
これは私の見立てですが、北海道の中小建設業の中には、X1(売上規模)の伸ばし方では同業他社との差がつきにくくなってきた会社があります。Wで点を取りに行くのは、売上競争とは別の軸で勝ちに行く動きです。社員を守る取り組みが、そのまま入札の点数表に乗る——この構造を活かすか見送るかで、3年後の決算は変わります。
もし1つだけ持ち帰るなら
経審W点の加点は「制度遵守の話」ではなく「ランク境界に近い会社の利益を押し上げる打ち手」。来週、結果通知書とランク表の2枚を机に並べるところから、健康経営の経営判断は始まります。
よくある質問
Q. 経審のW点で、健康経営優良法人は何点もらえるんですか?
A. 国土交通省「経営事項審査の改正」(2023年1月施行分)により、社会性等評価(W点)の「労働福祉の状況」の枠内で、健康経営優良法人の認定(中小規模法人部門)が加点項目として位置づけられています。具体的な配点は告示で定められており、W点はおおむねP点の15%程度の重みを持ちます(出典:国土交通省・経審の改正説明資料)。配点の最新値は、毎年度の告示と各発注者の運用で確認してください。
Q. 認定を取れば、必ず入札ランクが上がりますか?
A. ランクが必ず上がるとは限りません。総合評定値P点はX1・X2・Y・Z・Wを加重平均したものです(国土交通省)。W点の加点1点分が、御社の現在のP点とランク境界のどこにあるかで効き方が変わります。境界に近い会社ほど、認定1つで上のランクに乗りやすくなります。まず自社のP点とランク境界の距離を確かめるのが最初の一手です。
Q. 健康経営優良法人の認定までは、どのくらいの期間がかかりますか?
A. 中小規模法人部門の場合、申請受付は例年8月下旬から10月中旬、認定発表は翌年3月、認定の有効期間は1年です(経済産業省・健康経営優良法人ポータル)。経審のW点に反映させるには、認定取得後の経審申請から効きます。逆算すると、6月の今から動けば次年度の経審にきれいに乗ります。
Q. 売上が小さい会社でも、経審で健康経営を取りに行く価値はありますか?
A. 売上規模が小さい会社ほど、X1の伸びが緩やかな時期があり、W点1点分の効きが相対的に大きくなる場面があります。公共工事の発注者側でも、自治体独自の総合評価方式で健康経営の認定を評価項目に組み込む例が増えています(国土交通省・各自治体の総合評価方式実施要領)。1次下請けからの脱却・元請けへの転換を見据える社長には、ランク上げ・指名機会の両方で意味があります。
Q. うちの会社で、来週から何を始めればいいですか?
A. 3つあります。第一に、直近の経審結果通知を取り出し、W点とP点を確認すること。第二に、自治体の入札ランク表を取り寄せ、自社が境界からどれだけ離れているかを見ること。第三に、健康経営優良法人の認定要件と自社の現状の差分を1枚にまとめること。この3枚があれば、認定を取りに行くか様子を見るかの判断が、感覚ではなく数字で立ちます。
最後に — 中小建設業の社長へ
経審の点数は、決算書だけで決まる時代ではなくなりました。社員の朝の状態、健康診断の運用、ストレスチェックの読み方——これまで「労務の話」とされてきた領域が、入札のランクと利益に直結しています。
23年現場にいた人間として言わせてもらうと、社員を守る取り組みが、点数表の上で会社の利益として返ってくる構造は、建設業にとって珍しく報われやすい改正です。使わない手はありません。
DIALOGは、作業療法士23年の臨床知見と、経審・健康経営優良法人の最新制度の理解の両方を持って、御社のP点・W点の現状把握から、認定要件の差分整理、申請までを一貫して伴走します。書類整備で終わらせず、半年後・1年後のランク反映まで一緒に見届けます。