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ストレスチェック義務化

ストレスチェック義務化が50人未満にも拡大
中小建設業が今やる準備

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

「ストレスチェックって、うちみたいな小さい会社には関係ない話だと思っていた」——北海道の中小建設業の社長から、こうした受け止めをうかがうことがあります。けれど、その前提が変わろうとしています。

従業員50人未満の事業場でも、ストレスチェックの実施が義務になります。これまでは「やってもやらなくてもよい」努力義務でした。改正後は、人数の少ない会社も対象に含まれます。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、医療と介護の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきた知見をもとに、北海道の中小建設業に向けた健康経営支援を提供しています。ストレスチェックの義務化という今回の変化について、制度の事実と現場で効く準備の両方から、社長が来週から動ける材料をお届けします。

この記事の要点

制度の前提: ストレスチェック制度は労働安全衛生法に基づき厚生労働省が所管。50人未満への義務化拡大は2025年公布の改正法によるもの(出典は記事末尾)。

この記事で扱うこと

ストレスチェック義務化は、なぜ50人未満まで広がるのか

ストレスチェック制度は、2015年に労働安全衛生法に基づいて始まりました。働く人が自分のストレスの状態に気づき、職場の環境改善につなげるための仕組みです。言い換えると、心の不調を早めに見つけるための、年1回の健康診断のような制度です。

制度の開始以来、実施が義務だったのは従業員50人以上の事業場でした。50人未満は「当分の間の努力義務」、つまり任意の扱いでした。今回の改正で、この線引きがなくなります。

2025年に公布された改正労働安全衛生法により、従業員50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務づけられます(出典:厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」)。施行までには準備期間が設けられ、労働政策審議会の安全衛生分科会では2028年4月の施行方針が示されています。正式な施行日は今後の政令で定まるため、最新情報は厚生労働省の公表資料でご確認ください。

建設業の現場では、心の不調は身体の不調ほど表に出てきません。私が23年の臨床現場で見てきた限り、働く人は自分の不調を「自分だけの問題」「年齢のせい」と受け止めていることが多くあります。けれど実際には、その不調の多くは、その人が置かれている環境に由来していると感じています。ストレスチェックは、その「気づいていない不調」を本人と会社が見つける、年1回の機会になります。

建設業の小さな会社が見落としやすい3つの論点

義務化と聞いて身構える前に、まず建設業に固有の論点を3つ整理します。

1つ目は、対象は「会社」ではなく「事業場」単位だということ。ストレスチェックの義務は、本社・支店・現場事務所といった事業場ごとに人数を数えて判断します。会社全体では50人を超えていても、事業場単位で見れば50人未満になるケースは少なくありません。逆に、複数の事業場を持つ会社は、どの単位で何人いるかを早めに確認しておく必要があります。

2つ目は、専門職が社内にいなくても実施できること。ストレスチェックの実施者は、医師・保健師のほか、研修を受けた看護師・精神保健福祉士・公認心理師などが担えます。小規模な会社では、外部の専門機関に委託するのが一般的です。社内に産業保健スタッフがいないことは、義務を果たせない理由にはなりません。

3つ目は、産業医がいない問題への備えがあること。従業員50人未満の事業場には、産業医の選任義務がありません。高ストレスと判定された人への医師の面接指導は、地域産業保健センターの無料サービスを活用できます。地域産業保健センターとは、小規模事業場の産業保健を無料で支える、国の窓口のことです。

ここまでのまとめ

施行までに、社長が進めておける3つの準備

施行までには数年の準備期間が見込まれています。今は、慌てて契約を結ぶ時期ではなく、制度を理解して段取りを組む時期だと考えています。社長が進めておける準備を、3つに整理します。

準備1:事業場ごとの従業員数を数える。まず、自社にいくつの事業場があり、それぞれ何人が働いているかを書き出します。この1枚があれば、どの事業場が対象になるかが見えてきます。準備の出発点は、この棚卸しです。

準備2:厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルを読む。厚生労働省は、小規模事業場向けのストレスチェック実施マニュアルを公表しています(出典:厚生労働省「労働者数50人未満の小規模事業者の方」)。プライバシーへの配慮や現実的な進め方がまとまっています。施行までに目を通しておけば、準備の全体像がつかめます。

準備3:外部委託先の情報を集めておく。実施を外部に委託する場合、機関によって内容や費用に幅があります。今すぐ契約する必要はありませんが、複数の機関から情報を集め、見積もりを比べておくと、施行時期に慌てずに済みます。地域の産業保健総合支援センターも、無料で相談に応じています。

「心の健康診断」を、形だけで終わらせないために

ストレスチェックは、義務だから実施する書類仕事になりがちです。けれど本来の価値は、別のところにあると感じています。

建設業の現場では、ベテランほど自分の不調を口にしません。「迷惑をかけたくない」という気持ちが、本人の口を重くします。これは医療・介護の現場でも繰り返し見てきたことです。心の不調は、本人が訴えるのを待っていると、手遅れになりやすいのです。

ストレスチェックは、本人が言葉にしないサインを、年1回、仕組みとして拾い上げる機会です。たとえると、毎年の身体の健康診断と同じで、症状が出る前に変化に気づくための定期点検のようなものです。義務化を「やらされる手間」と捉えるか、「人が辞める前に気づける仕組み」と捉えるかで、同じ制度でも会社に残るものが変わってきます。

よくある質問

Q. ストレスチェックの義務化は50人未満の会社にいつから適用されますか?

A. 2025年に公布された改正労働安全衛生法により、これまで努力義務だった従業員50人未満の事業場にも実施が義務づけられます。施行は公布から数年後を予定し、労働政策審議会では2028年4月の施行方針が示されています。最新の施行日は厚生労働省の公表資料でご確認ください。

Q. 従業員10人ほどの建設会社でもストレスチェックは必要ですか?

A. 改正後は事業場の人数で線引きされず、小規模な事業場も義務の対象に含まれます。厚生労働省は小規模事業場向けの実施マニュアルを公表しており、外部委託や地域産業保健センターの活用を前提にした、現実的な進め方が示されています。

Q. ストレスチェックは誰が実施できますか?

A. 実施者は、医師・保健師のほか、所定の研修を受けた看護師・精神保健福祉士・歯科医師・公認心理師が担えます。小規模な会社では、外部の専門機関に委託する形が一般的です。社内に専門職がいなくても実施できる仕組みになっています。

Q. 費用や産業医がいない問題はどう解決すればよいですか?

A. 従業員50人未満の事業場には産業医の選任義務がなく、高ストレス者の医師面接などは地域産業保健センターの無料サービスを活用できます。チェック自体の実施費用は外部委託の内容により幅があるため、複数の機関に見積もりを取って比較するのが現実的です。

Q. 施行までに、まず何から始めればよいですか?

A. まず自社の従業員数を事業場ごとに数え、対象となる規模かを確認することから始めるのが無理のないスタートです。あわせて厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルに目を通せば、施行までの準備の全体像が見えてきます。慌てて契約せず、制度を理解する時間が今はあります。

最後に — 中小建設業の社長へ

ストレスチェックの義務化拡大は、書類が1つ増える話に見えるかもしれません。けれど本質は、現場で働く人の心の変化に、会社として気づく仕組みを持つことです。

DIALOGは、作業療法士23年の臨床経験で培った「人が働き続けられる条件を見抜く目」と、労働安全衛生法・ストレスチェック制度の最新動向の理解の両方を持って、施行に向けた社内体制づくりを伴走します。書類を整えるだけでなく、結果を現場の改善につなげる仕組みづくりが、私たちの提供価値です。23年の知見をもとに、貴社に最適な準備の進め方をご提案します。

まずは、自社の事業場ごとの従業員数を1枚に書き出すところから動いてみてください。そこから先のステップは、私たちと一緒に詰めていきましょう。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、医療・介護の現場で人の生活と仕事を見てきた経験をもとに、北海道の健康経営・介護予防・ウェルネス支援に取り組んでいます。

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DIALOGでは、北海道の中小建設業を対象に、ストレスチェック義務化に向けた事業場の整理から、外部委託の検討・実施後の職場改善までを一貫して伴走しています。現場の状況を伺ったうえで、貴社に最適な準備ステップをご提案します。「うちは何から手をつければよいか」という入口のご相談から承ります。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年)の臨床経験と、厚生労働省の最新公開情報を踏まえた解説です。ストレスチェック制度の対象範囲、施行日、実施方法等は今後の政令・省令・指針により定まり、見直される場合があります。実際の対応にあたっては、厚生労働省・都道府県労働局の最新公表資料を必ずご確認ください。具体的な労務・安全衛生上の解釈については、社会保険労務士・産業医・産業保健総合支援センター等の専門家との併用をおすすめします。