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健康診断×健康経営

健康診断 未受診|
社員を追いかける前に、社長自身が受けていますか

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

健康診断を受けなかった社員に、罰金の定めはありません。

50万円以下の罰金が定められているのは、受けさせなかった会社のほうです。

順番が逆に見えるかもしれません。ですが労働安全衛生法は、そう組み立てられています。だから「本人が嫌がるので」は、会社の説明になりません。

代表の三宮は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場に立ってきました。見続けてきたのは「人が働き続けられる条件」です。株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、その知見をもとに中小企業の健康経営・人材定着支援を提供しています。本稿では健診の未受診を、本人の意識の問題ではなく、会社の段取りと認定要件の問題として整理します。

この記事の要点

制度の前提: 定期健康診断は1年以内ごとに1回(労働安全衛生規則第44条)。健康経営優良法人2027の申請受付は2026年8月17日に開始(出典は記事末尾)。

罰金が定められているのは、受けなかった社員ではなく会社

義務は二重にかかっています。ただし罰則は、片側にしかありません。

誰の義務か根拠内容罰則
事業者安衛法 第66条第1項労働者に対し、医師による健康診断を行わなければならない第120条により50万円以下の罰金
事業者安衛則 第44条常時使用する労働者に、1年以内ごとに1回、定期に実施同上
労働者安衛法 第66条第5項事業者が行う健康診断を受けなければならない罰則規定なし
事業者安衛則 第52条常時50人以上の事業場は、実施後に電子で所轄労基署長へ報告—

安衛法は労働安全衛生法、安衛則はその施行規則の略です。

罰則がないことと、受けなくてよいことは違います。

第66条第5項には、ただし書きが付いています。会社が指定した医師の健診を希望しない場合の定めです。他の医師による相当する健診を受け、その結果を証明する書面を会社に提出すれば、この限りでない、と定められています。

つまり「会社指定の病院には行きたくない」は、未受診の理由になりません。人間ドックの結果を出してもらう道が、法律の側にあります。

ただし条件が付きます。条文の「相当する健康診断」とは、法定の検査項目を満たしたものです。人間ドックはコースにより聴力や尿検査が欠けることがあります。項目に不足があれば、実施義務は果たされていません。

未受診者の中には、受けたくない人ではなく、指定日に動けなかった人がいます。段取りだけで解ける層です。

建設業の有所見率は65.1%。受けるほど、何かが見つかる

受けたがらない理由の中心にあるのは、面倒くささではありません。見つかることへの警戒です。

定期健康診断実施結果(令和6年・有所見率)

65.1%
建設業の有所見率
59.4%
全国の総数
31.2%
血中脂質検査(全国・項目別で最多)

出典:厚生労働省「定期健康診断実施結果(令和6年)」

建設業は、全国の総数を5.7ポイント上回ります。有所見率とは、検査値などに所見が出た人の割合です。言い換えると、10人受ければ6〜7人に何かが見つかる計算です。

引っかかったら現場から外されるのでは、と考える人にとって、受けないことは自分を守る行動です。

これは私の見立てですが、未受診は無関心の裏返しではありません。仕事を失うことへの警戒が、受診を遠ざけています。

急性期医療の現場に23年立ってきました。「もう仕事を続けられない」という場面に、何度も居合わせています。

見えてきたのは、順番でした。本人が辞めると決めるより先に、動けなくなって出勤できなくなる。身体が先に決めてしまう例が、繰り返しありました。

本人が困ってから動く。その構えでは間に合いません。動ける段階でしか、選べる道は残らないからです。

健診は、その「動ける段階」を確かめられる、年に1度の定期点検です。1人分の未受診は、1人分の選択肢を落とすことに近いと考えています。

ここまでの整理

未受診を「本人の意識」でひとくくりにすると動きません。指定日に行けなかった人/結果を恐れている人/手つかずのままの人。前の2つは、段取りと伝え方で減らせます。

認定要件で最初に問われるのは、社長自身の受診

健康経営優良法人2027の中小規模法人部門では、健診は3か所に顔を出します。位置づけが違うので分けます。

要件の場所内容扱い
1.経営理念・方針健康宣言の社内外への発信及び経営者自身の健診受診必須
5.法令遵守・リスクマネジメント(自主申告)定期健診を実施していること 等必須
3.制度・施策実行(1)健康課題の把握①定期健診受診率(実質100%)①〜③のうち2項目以上を満たすための選択項目

出典:ACTION!健康経営「健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)認定要件」

ここは誤解が起きやすい箇所です。受診率が満点でなければ認定は取れない、と理解されがちですが、違います。

受診率(実質100%)は、①〜③のうち2項目以上を満たすための選択肢の1つです。②受診勧奨、③50人未満の事業場でのストレスチェック実施と横並びです。

一方で、社長自身の健診受診は必須です。健康宣言の社内外への発信とセットで、1つの必須項目になっています。

社員の受診率を追いかけている社長が、自分の健診を後回しにしている。その状態だと、入口で止まります。

健康経営優良法人2027の申請受付は、2026年8月17日に始まりました。今年度の申請を考えているなら、社長の受診票がどこにあるかを先に確かめます。

未受診を減らす、今週からの4手

やることは4つです。段取りの組み替えです。

手順やること時期担当
1名簿と受診記録を突き合わせ、未受診を氏名で出す今週総務
2未受診の理由を3つに分ける(日程/結果への不安/手つかず)今週総務・現場責任者
3日程が合わない層に、他院受診と結果提出を案内する(法定項目の過不足を先に確認)今月総務
4社長自身の受診日を先に確定し、「会社の予定」として社内に告知する今月社長

要になるのは手順2です。

人数だけを眺めていると、全員が同じ理由に見えます。氏名と理由に分けた瞬間、打ち手が3種類に割れます。

日程が合わない層には、案内1枚で動く人がいます。結果への不安を抱えている層には、結果の扱いを先に伝えます。誰が見るのか、現場の配置にどう反映されるのか。ここを黙ったまま受診を求めると、警戒は解けません。

健診後のフォロー設計は要再検査者を追跡する3つの仕組み、申請の入口は健康宣言と申請の期限で整理しています。

もし1つだけ持ち帰るなら

今週、健診の受診記録を1枚出してください。未受診を人数ではなく氏名で並べます。名前が並んだ時点で、来月の打ち手が決まります。

よくある質問

Q. 社員が健康診断を受けません。会社が罰せられることはありますか?

A. 労働安全衛生法第66条第1項は事業者に実施義務を定め、第120条は違反を50万円以下の罰金としています。労働者の受診義務は第66条第5項にありますが、第120条の対象条項には含まれていません。

Q. 会社が指定した病院には行きたくない、と言われました。未受診として扱うしかないのですか?

A. 第66条第5項のただし書きに定めがあります。他の医師による相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を提出したときは、この限りでない、という内容です。ここでいう「相当する」とは、法定の検査項目を満たすことです。人間ドックは項目が欠けることがあるため、受理前にご確認ください。

Q. 受診を拒む社員を懲戒することはできますか?

A. 懲戒の可否は、就業規則の定めと個別の事情によって判断が分かれます。労働安全衛生法には、受診しなかったこと自体への罰則はありません。社会保険労務士または弁護士にご確認ください。

Q. 健康経営優良法人の申請には、定期健診の受診率100%が必要ですか?

A. 定期健診受診率(実質100%)は、健康課題の把握の①〜③のうち2項目以上を満たすための選択項目です。必須は、健康宣言の発信及び経営者自身の健診受診と、法令遵守での定期健診の実施です。

Q. 定期健康診断は、どのくらいの頻度で実施する義務がありますか?

A. 労働安全衛生規則第44条により、1年以内ごとに1回、定期に実施する定めです。常時50人以上の事業場は、実施後に電子で所轄労働基準監督署長へ報告します(同規則第52条)。

最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ

未受診は、社員の意識の問題として語られがちです。ですが法律の側では、義務も罰金も事業者に置かれていました。

認定制度の側でも、向きは同じでした。社員の受診率より先に、経営者自身の受診が必須項目に立っています。

認定が取れた会社では、公共工事の入札評価と求人票の見え方が変わります。未受診の一覧は、その入口の1枚です。

未受診を氏名で把握し、理由で分け、来月の打ち手に変える。DIALOGは作業療法士23年の臨床知見をもとに、貴社に最適な健診運用の設計と健康経営優良法人の取得支援をご提案します。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

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未受診を人数ではなく氏名で把握し、来月の打ち手に変える

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DIALOGは、人の定着に課題を抱える中小建設業をはじめとした企業を対象に、健康経営優良法人の取得支援をご提案しています(建設業向けには「ぱとす」による伴走支援も行っています)。無料相談では、認定要件に対して貴社が今どこまで届いているかを一緒に見ます。健診の運用がどの要件に効いているか、あと何が足りないか。そのうえで、認定が取れた1年後に貴社の入札評価と求人票がどう変わるかまでお見せします。作業療法士23年の臨床知見をもとに、貴社の業種・現状に合わせて一貫して伴走します。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、法令および健康経営優良法人認定制度の公開資料を踏まえた解説です。個別の労務対応(受診命令の出し方、就業規則の定め、懲戒処分の可否など)の判断については、社会保険労務士または弁護士にご確認ください。健康診断の実施義務そのものに関する行政上の照会先は、所轄の労働基準監督署・都道府県労働局です。健康経営優良法人の認定要件および申請スケジュールは年度ごとに見直されるため、最新情報は認定事務局の公表資料をご参照ください。本記事は認定取得を保証するものではなく、医学的な診断・治療に関する助言を行うものでもありません。